第94話 氷川涼子9。掲示板8
[まえがき]
誤字報告等まことにありがとうございます。助かります。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
週が明けて期末試験の解答が順に返ってきた。
今回も全教科満点と思っていたら、化学で減点されていた。
おかしいと思って先生に聞いてみたところ、採点ミスだった。
いずれにせよ、10段階評価は変わらないから安心しろと言われた。
それくらい、いいけどね。
そして終業式を経てさいたま高校は冬休みに突入した。
終業式当日に担任の吉田先生からもらった成績表は体育も含めて全部10だった。
うちに帰って母さんに成績表を見せたら喜んでくれた。
父さんの帰宅はその日早かったので父さんも喜んでくれた。
それで俺のモチベーションがグググッと上がった。
よし、3学期以降もやるぞー!
学校に通って、いい成績を取るのも親孝行なのだとつくづく思うよ。
これが逆で親に成績のことを心配させるようでは全くの親不孝だものな。
2学期の終わった今日は12月24日。クリスマスイブだったので午後8時過ぎ、母さんが用意していたケーキを家族3人で食べた。
ホールではないし、もちろんろうそくなんか立てなかった。
明日のクリスマス当日は氷川が夕食をおごってくれると言っていたので、紅茶でケーキを食べながら母さんに明日は友達と夕食を食べてくるから夕食は要らないと断っておいた。
なぜか母さんも父さんも訳知り顔のような顔をして笑っていた。
翌日。クリスマス。
Dランクになった氷川と6階層に潜る約束をした日だ。
うちはもちろんクリスマスなど実質的に何も関係ないので純日本風朝食を食べてから支度してサイタマダンジョンセンター近くに転移した。
売店に駆け込んだら、クリスマス特有の飾り付けがしてあったが、ありがたいことに店内の商品はクリスマス仕様に成ってはいなかった。
ダンジョンにクリスマスなど関係ないから当たり前ではある。
俺はいつもの食料品売り場でおむすびと緑茶のペットボトルを仕入れてから武器預かり所に行き、武器を受け取った。
そこで時計を見たら氷川との約束の時間にはだいぶ早かった。
武器を持っている関係でセンターの外には出られないので、ロビーホールの壁際に立って時間つぶしをすることにした。
約束の時間の10分前に改札前にいったら、装備を整えた氷川がちょうどエスカレーターで2階から下りてくるところだった。
「おーい」
「おはようー。一郎」
確かに俺の方が戸籍上年下なので氷川からすれば俺のことを名まえ呼びする抵抗は皆無なのだろうな。
ほんとは俺の方が年上なんだぞー!
近くにいた数人の冒険者が俺と氷川を交互に見ていた。
今さらだしそれはいいとして、お互い準備は出来ているのでさっそく渦の中に入ろう。
氷川の前に立って渦の中に入っていき、階段小屋を抜けて階段を下り2階層に。
2階層で人目の付きそうにないところまで移動してそこから3階層。
3階層から4階層に続く階段近くに転移。
階段前の改札を抜けて、階段を下り4階層へ。
そこでも人目に付きにくいところに移動して5階層から6階層に続く階段近くに転移。
階段前の改札を抜けて階段を下り6階層に。
いつもはここから10階層に転移するのだが、今日の戦場は6階層なのでここからスタートだ。
移動途中に氷川に聞いたところ、Dランクになったが5階層で狩を続け、まだ6階層には挑んでなかったそうだ。
賢明な判断だ。
階段を下りたところで氷川が6階層の空洞をざっと見回して一言。
「見た感じは5階層と大差ないな」
「歩いてみればわかると思うが、少しだけ坑道が広くなっているんだ」
「なるほど。現れるモンスターの数も増えるわけだから親切ではある」
「その分後ろに回り込まれるリスクは高まるがな」
「そうだな」
「先に7階層に下る階段まで行ってみるか?」
「それは地図を見ながら行けるから止めておこう」
「わかった。
それじゃあ、どんどん行くからな」
「了解」
ディテクター×2
階段近くで発動したから外れるかなと思ったけれども、ちゃんとアタリが複数あった。
「アタリがあった。
今日は最初から氷川だからな。
いくぞ」
「了解」
氷川を後に従えて俺は最初のターゲットに向かった。
最初のターゲットは運がいいのか悪いのかは分からないがイノシシが2匹だった。
氷川にとってイノシシは硬いかもしれないが、問題ないレベルだろう。
氷川が例の鋼棒を両手に持ってイノシシに突撃していった。
イノシシも氷川に向かって駆けだした。
イノシシの駆ける重い音が坑道に響く。
初めてだとちょっと怖いかもしれないが、氷川の後ろ姿を見る限り大丈夫そうだ。
氷川は最初のイノシシが鼻を下げて突っ込んできたところに合わせてジャンプし、落下の勢いをつけて鋼棒をイノシシの脳天に叩きつけた。
イノシシの脳天はそれで砕けたようで、イノシシは鼻を坑道の路面に擦り付けるようにして動かなくなった。
2頭目も同じように突っ込んできたところに氷川は鋼棒を突き出した。
鋼棒はイノシシの左目を潰し眼窩を砕いてその先まで貫通したようだ。
そこで氷川はイノシシの頭から素早く鋼棒を引き抜いた。
もちろんイノシシは即死した。
引き抜きが遅れていたら倒れるイノシシに鋼棒を持っていかれたかもしれないのでいい判断だったし、いい動きだった。
「なかなか良かった。
それで、自分的にはどうだった?」
「イノシシは初めてだったから比較のしようはないのだが、硬くて重い感じがした。
でも、何とかなりそうな気もする」
「それで十分だ。核を回収して次行くか。
タマちゃん」
タマちゃんがイノシシ2匹をあっという間に処分して俺に核を渡した。
その核を俺は氷川に渡した。
「長谷川。今日はわたしが全部倒すにしても、核は折半にしないか?」
「気にするな。
今日は氷川の昇格祝いだ」
「ありがとう」
「じゃあどんどん行くぞ」
ディテクター×2!
俺たちは次のアタリに向かって駆けだした。
次のアタリは、オオカミ5匹。
氷川にとって今度はちょっときついかもしれないが、一匹ずつ確実に仕留めていけばいけるはずだ。
氷川は一度大きく息をして、5匹のオオカミに向かって駆けだした。
オオカミも氷川に向かって駆けだした。
俺は氷川のバックアップなので氷川から5歩くらい後ろで追っていった。
オオカミはイノシシほど固くはないがスピードもあり連携も取ってくる。
それでも無駄な動きをせずに一撃でたおせれば楽勝なのだが。
氷川は最初に突っ込んできたオオカミの頭部に振りかぶった鋼棒を叩き込んだ。
オオカミはその衝撃で頭から地面に突っ込み動かなくなった。
なかなかいい。
鋼棒はたたき込んだ反動である程度上に戻っていたので、氷川は再度上段から2匹目のオオカミの頭部に鋼棒を叩き込んだ。
後はそれの繰り返しで危なげなく5匹のオオカミを短時間でたおし切った。
「いいじゃないか!」
「自分でも信じられないくらい体が動く」
氷川は一皮むけたな。
これなら大丈夫そうだ。
タマちゃんがオオカミの死骸を処理して渡してくれた核は氷川に渡しておいた。
それから先も危なくげなく氷川はモンスターをたおしていった。
俺が知っている冒険者の数はそれほど多くはないが氷川はトップクラスではないだろうか。
しかし、手前みそではあるが俺ほど隔絶していないと絶対とは言えないので、儲けは少なくなるだろうが、せめてペアで挑んだ方がいいとは思う。
俺が直接言わなくてもダンジョン高校でいろいろ学んだ氷川のことだから、自分で判断できるだろうし、判断するだろう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1.名無し
サイタマダンジョンCランク冒険者用情報スレその2(37)。マナー厳守!
次スレは>>950を踏んだ人
20XX年12月20日 22:20
……
235.名無し
冒険者は三田!
20XX年12月25日 21:15
236.名無し
>>235.何を?
20XX年12月25日 21:16
237.名無し
赤い稲妻とフィギュア男が揃って歩いていくところだ
20XX年12月25日 21:17
238.名無し
>>237.あの二人はよくつるんでるぞー
20XX年12月25日 21:18
239.名無し
>>238.そうなの?
20XX年12月25日 21:18
240.名無し
>>239.そう
20XX年12月25日 21:19
241.名無し
それより赤い稲妻銀色のネックストラップ付けてた
20XX年12月25日 21:20
242.名無し
とうとう行ってしまったか
20XX年12月25日 21:21
243.名無し
さすがにソロで6階層は無理じゃないか?ソロでDランクの階層をうろつくのはあのフィギュア男だけだろ
20XX年12月25日 21:22
244.名無し
アイツだけは別格というか、あいつはバケモノだな
20XX年12月25日 21:22
245.名無し
アイツそのうちSランクになるだろうが、Sランクでもソロなのかな?
20XX年12月25日 21:23
246.名無し
>>245.分かったぞ!Sランクになったら低ランクの冒険者を連れて歩けるだろ?だから今のうちに赤い稲妻に唾つけてるんだ!
20XX年12月25日 21:25
247.名無し
>>246.あり得るな
20XX年12月25日 21:26
248.名無し
>>246.ありえーる
20XX年12月25日 21:26
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます