第92話 Dランク冒険者16、氷川涼子8


 11月に入った。

 1日ついたちの土曜日は登校日だったが3日の月曜日は祝日だ。


 日、月、2日間10階層に潜って、合わせて8765万5千円稼いだ。

 自分が怖くなるほどの儲けだ。

 累計買い取り額は2億9177万3700円+8765万5千円=3億7942万8700円となった。


 その間、フィオナを一度うちに連れ戻してそれから10階層に戻りディテクター×2を発動したところ、やはり感度不足で使えなかった。

 フィオナを連れて10階層に戻ったらちゃんとディテクター×2は正常に機能した。

 フィオナのおかげということが確定した。

 フィオナは今までかわいいだけのマスコットだったけど、本当の意味でいなければならない存在になった。



 次の土曜は休日だったので土日連休。

 2日間潜って、合わせて8838万4千円稼いだ。

 笑っちゃうほどの儲けだ。

 累計買い取り額は3億7942万8700円+8838万4千円=4億6781万2700円となった。

 とうとう、4億超えてしまった。

 あと6億。

 今年中のSランク昇格が見えてきた!


 それから、氷川と約束していた11月24日の祝日までに3日間潜って1億3044万5千円稼ぎ、累計買い取り額が4億6781万2700円+1億3044万5千円=5億9825万7700円となった。

 ついに5億を超えてもうすぐ6億になってしまった。

 震えが来るほどだ!

 と、思ったが、震えは来なかった。

 俺も擦れたものだ。



 体育祭以降体育の時間、タガを外した俺はバスケットでメチャクチャやってしまい、シュート練習などの練習以外させてもらえず、試合の時は審判をさせられることになってしまった。



 そして、今日は氷川と5階層に潜ることを約束した日だ。

 もちろん俺の右肩にはフィオナが止まり、リュックにはタマちゃんがいる。


「おはよう、一郎」

「おはよう、……涼子」

 他の冒険者がいたので1階の改札前で待っていた氷川に取り決め通り下の名まえで呼んであいさつしたら、氷川はそうでもないようだったが俺はちょっと恥ずかしかった。

 氷川を意識しているわけではないはずだが、俺も結構ナイーブだった。


 渦を通って5階層に向かう間に、俺のディテクターの探査範囲が広がったことを氷川に教えておいた。


「ますます長谷川と差が付くな」

「そう言うなよ。

 発動するたびにいつも複数のアタリがあるから、相当効率よく回れる。

途切れることなくターゲットを狩れるわけだから、休みなく駆けまわることになるがな」

「それは、望むところだ」


「言いたくなければ言わなくていいが、氷川はいつ頃Dランクに上がれそうだ?」

「長谷川のおかげでこのところすごく調子がいい。

 うまくすれば今年中にもDランクに上がれそうだ」

「それは良かったじゃないか。

 そういうことなら今日は今まで以上に張り切っていこう。

 今日も氷川が3匹を相手にしてくれ、俺は2匹以下だ。

 いいな?」

「了解」

 俺がSランクに上がるのが先か氷川がDランクに上がるのが先か?


 ディテクター×2。


 いたいた。


 俺が先導していった最初のターゲットは、いいお客さまの大ネズミ3匹だった。

 視界に入ったところで転移で跳んでいくこともできたのかもしれないが、氷川が数を確認したとこで突っ込んでいった。


 俺も氷川の後を追っていったが、危なげなくごく短時間で大ネズミは氷川によってたおされた。

「今日は前よりもさらに良くなっているな」

「ありがとう。

 自分でも驚くくらい調子が上がってきている」

「身体能力がここにきてワンランク上がったのかもしれないな」

「そういったものは徐々に上がるものかと思っていたのだが、そういうこともあるのか?」

「はっきりとは分からないが、少なくとも氷川の動きがよくなっているのは確かだからな。

 なんであれ、気の持ちようだ。

 気の持ちようで、大概のことはうまくいく。はずだ」

「分かった」

 氷川も分かってくれたようだ。


 午前中の成果は氷川が63個、俺が22個。

 24時間かかって100万円何とか儲けたといっていた氷川が午前中だけで120万程度儲けることができた。


 氷川のレベルアップとディテクター×2のコラボの勝利と言ったところだ。

 その代り、さすがの氷川もかなり疲労したようだ。



 昼食時、坑道の壁に背をあずけて向かい合ってお互いおむすびを食べながら話をした。

「いやー、さすがにばてた。

 しかし、午前中だけで63個というのは恐ろしいほどだな」

「無駄に歩き回ることがなくなった代わりに休憩がなくなったわけだからな。

 ばてたといっても、そのぶん稼げたわけだから気持ちいいだろ?」

「うん。

 確かに心地よい疲れだ」

 そう言って氷川は俺の方を見て笑った。


「氷川。お前、Dランクになっても今まで通りソロを続けていくつもりか?」

「一応そのつもりだ。

 そもそも一緒にチームを作ってくれるような冒険者に当てなどないしな」

 氷川とならいくらでもチームを作る相手は見つかりそうなものだが謙遜しているのだろうか?


「そうか。

 氷川も知っていると思うが、Dランクで最初におとずれる6階層ではモンスターが最大5匹一度に現れる。

 氷川がソロを続けるなら、最低でも6階層の5匹をひとりで相手取らなければならない」

「そうなるな。

 6階層のモンスターはやはり手強いのだろうな」

「上の階層と同じ種類のモンスターでも素早い上に力も強く、打たれ強いからたおしにくいと言われている」


 氷川は少し間をおいてから俺に聞いてきた。

「長谷川でもそう感じるほどなのか?」

「俺は6階層は素通りして10階層のモンスターを相手にしているから実際のところ6階層のモンスターがどの程度のモンスターなのかは分からない」

「お前では全く参考にならないということは良ーく分かった」

「そう言うなよ」


 有難迷惑かもしれないが、一応話だけはしておくか。

「最初に6階層に潜る時は俺が付いていってやろうか?」

「そうしてくれるのなら心強い。

 6階層がひとりでは無理と分かれば、何とかして仲間を見つけてみる」

「そうだな」


 食べ終わった後、片付けをして、しばらく休んでから腰を上げた。

 ふたりともおむすびなので食べる時間自体はやけに短いのは事実だ。

「午後も頑張っていこう」

「了解」


 ディテクター×2!

 いたいた。


 ……。


 午後からの3時間の成果は氷川が54個、俺が18個。

 午前と合わせて氷川が117個、俺が40個。


 俺の買い取り総額は79万2千円だった。

 今日の氷川はそれなりだったのだろう。


 これで俺の累計買い取り額は5億9825万7700円+79万2千円=5億9904万9700円になった。

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