スンの視点2



翌日からマナト様は凄くストイックでした。


毎日早く起きて修行してます。




 側仕えですので稽古中は道場でタオルや飲み物をご用意してお待ちしているのですが、武器種で悩まれているようです。




 ゾリデ様が大体の武器を教えられるそうで色々使われていますがすべて卒なく使える程度、と自己評価されていました。




………わたしから見るとすべて達人級なんですけどね。強い人同士の感覚は分かりません。




 血族能力はかなり慣れたみたいです、マナト様が自傷すると傷口から血が流れ落ちず、重力に逆らって剣や槍などの武器の形をとるのです!




 血族能力は貴族様方しか使えないので感覚などはわかりませんが習得するまでは苦労されたとのことでした。




武器の種類は最終的に鎌に落ち着いたみたいです。




 個人の能力である存在証明は結局成功しなかったそうです。


ゾリデ様が「吸血鬼として日が浅い。血族能力をここまで扱えるようになる方が異常だ。」とのことでやはり難しいんでしょうか?








 修行が終わってからはなぜか私達に混ざって掃除などの雑務をしていました。


 最初は私達も遠慮してお断りしていましたが何度もお願いされてついには折れてしまいました。




 なぜそんな事をしたがるのか聞いたら「吸血鬼の生活を知りたい、なによりお世話になりっぱなしは気まずい。これくらいで返せたとは思えないけどね」と苦笑いされてました。






……エアクラ様やご本人には言いにくいのですが実は裏ではマナト様がかなり人気になってます。とくに女性吸血鬼からは。




 当然と言えば当然です。高位の吸血鬼なのにみんなに優しく、同じ目線で話してくださる。腰も低く周りの目がなければ敬語を本当はやめてほしいと仰るくらい偏見もない。努力家、今後力を付けるであろう有望株です。なによりイケメンですし…まぁ、マナト様は無自覚でしょうけど。














修行も終わりが近づいてきました。


 マナト様のお部屋で掃除をしていると戻ってきてしまいました。本当はお戻りになられる前に完了していないと行けないのですが…


「マナト様!まだ清掃が終わっておらず申し訳ありません!!」




 怒られなかった、まぁマナト様が怒らないことは分かってたが、だからこそ申し訳なくなるというものだ。




「ううん、いいよ、やり方は俺も分かるから一緒にやろ?」




 微笑みながらそう良い止める間もなくシーツを変え始める。


……やっぱりわざとやってるんじゃないかな?でも凄く自然だし。うぅ…






 使い終わったリネン類を洗濯室に持っていくね!とマナト様が仰るのでそれは流石に!と強めに言うと引き下がってくれた。


 運んでいる時に廊下の端からゾリデ様とエアクラ様がヒソヒソと話していた。






 エアクラ様、ちょっと怖いんだよなぁ。怒ってないときはいい人だって分かってるんだけど…なんか怖い


目をつけられないように通り抜けようと足を少しだけ早めると声をかけられてしまった。




「おお、スン。ちょうど良かった、今度エアクラ殿がマナト殿にプレゼントを渡したいとの事だがサプライズにするらしい。


鎌を渡すそうだが包む布の色で悩んでいるらしいのだ。」




「そうなのよね、本体は青と黒なんだけどね、これこれ!」






 そういって手に持っている物をこちらに見せてくる。


柄だけで人の身長ほどもある大鎌、そこから刃が伸びている。


柄は黒基調の金属、ヒビが入っているかのように青い結晶質の物が全体を覆ってる


 鎌の部分は峰の部分は柄と同じになっているがより青いヒビが多くなっている。刃は完全に青い結晶のみで構成されている。


怪しい魅力を放つ鎌に手を伸ばしてしまう。




「スン!」




ゾリデ様が大声で私を呼びハッと正気を取り戻す。




「危ない、触れていたら恐らく気絶で済んでいたか分からんぞ


エアクラ殿、とんでもないものを作ったものだ…」




「それはそうよ!これ作るために神聖騎士団の拠点1個丸々壊滅させたもの!」




神聖騎士団…?言われてみればその青い武装、騎士団でも高官が持つ特殊な武器の色ですよね…?




「本当に大変だったんだからね!礼装から聖銀剥がすとき何度も火傷したし!技師だってなかなかいなかったんだから!」




 なんというか…あまりにも違う次元の話している気がするんです…




「でもでも、その時食べ過ぎちゃったからちょっと太っちゃったかも…


マナト君に嫌われないかな……??」




乙女の顔をしています。でも食べ過ぎちゃったって……そういうことですよね?基地が一つ無くなっているんですもんね…?




「本当にエアクラ殿は…神聖礼装を使っているんじゃ他の吸血鬼には扱えんか。盗難されるわけもなし。安心であるな」




うんうんと頷いていますけど……危険極まりもないものですよね…?




本題、包む布の色ですか…


やっぱり本体が目立つし、マナトさんは黒髪黒目だし黒…ですよね


でも血力を使うときの赤い目も素敵ですし…


ワインレッドでしょうか…?




そのまま伝えるとエアクラさんは少しむくれながら「よくわかってるじゃない」と褒めて?くれた。


いくら化物のように強い人でも女同士だからわかる。これは嫉妬です。まさかエアクラ様…?










 自室でため息をついてしまいました。いや、仕事も終わっているしあとは寝るだけなんですけどね?


 道場からはまだバタバタ聞こえます。側でお世話させていただこうかと思ったんですけどそろそろ寝たほうがいいよ?と何回も毎日返されてしまいます。なので交代でお世話させて頂いてます。






 マナト様の凄いところは強さではなく精神力の強さにあるんじゃないかと思います。


 私達吸血鬼は確かに寝なくても動き続けられます。でも心は人間と変わらないので寝ないと心が疲れてしまうため適度に睡眠を取るんです。




 ゾリデ様も流石に良くないと思ったのか当て身で気絶までさせて寝かしてるみたいです。なんでそこまでするんだろう…






「もうすぐマナト様行っちゃうのかぁ…」


ため息は眠りにつくまで止まりませんでした

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