スンの視点


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 マナトさんの侍女になった私はどのような扱いを受けるか不安でした




 ご挨拶に伺うため着替えるのをお待ちしていた時、薄い扉一枚から圧倒的な力を感じたので怖かったんです。


これは本能的な恐怖です、捕食者に狙われた小動物の気持ちはこんな感じなんですかね…?




 第8世代の私からすれば皆さん強いのですがゾリデ様達、第2世代以上の貴族の方々は一線を画す力があり、前に立つことすら覚束ないほど。




 ゾリデ様のことはよく知っていますし良くしてくれてます。もう怖いとは思ってません。でも外部から来た方ですし、外部の方々は貴族以外を見下し玩具としか思ってない方も多いですし。私も耐えきれずここに逃げ込んだ一人ですしね。






 扉から出てきたマナト様にご挨拶をしたときは恥ずかしい事ですが、目も合わせられず失礼な事をしてしまったと思いました。


 返事もなく「あ、終わった。」と思った時マナト様の動揺した声が聞こえてきたときはビックリしました。


 失礼どころか敬語も使わなくて良いって言われたときは如何すればいいのか、そんなことを言われるとは思わずどうしていいか私も分からなく慌ててしまいました…




 嬉しかったですが実際にそのような対応をすれば周りから怒られてしまいますし、他の方から折檻が飛んできてしまいます!




 慌てて伝えると察してくれたのか優しく同意してくれたときは安心しました。






 道場までお連れし、タオルなどを用意していると道場から戦闘音がなり始めました。


 やっぱり高位の吸血鬼の戦いは音がおかしいです。重機が戦ってるような低い、鈍い音が何度も響くんです。自慢じゃないですが私なら一発で粉々ですね!!






 きっと喉も乾くでしょうからお水も持っていきましょう、準備を終えて扉を開けるとマナト様が吹き飛んでいく姿が目に映りました。




 つい叫んでしまい、追いかけようとしますが壁を突き破っても全然勢いが落ちず洞窟の壁にめり込むまで一切止まりませんでした。






 唖然としているとゾリデ様とは違う威圧感が洞窟中を覆いました。洞窟と言っても下手な都市よりは広い空間があるシゥハンジン寺院全体を、ですよ!?






 ゆっくり飛びながら、マナト様を抱えた少女が、空いた穴から道場に入ってきました。すぐに膝をつき視線を合わせないよに下を向きました!


私は第8世代の吸血鬼としては長い気なんです、その秘訣が危機察知能力が長けていることなんです。




「ゾリデ、私は修行してとは言ったけどイジメてなんて言ったかしら?」




その私の危機察知能力が過去に遭遇した何よりも警鐘を鳴らしています。一言一言が気を失うほど重いものでした。




「申し開きがあるなら5秒以内にしなさい。なければ消し飛ばすわ。楽に殺してあげるから安心なさい。」




ゾリデ様も冷や汗をかいていました。第1世代のゾリデ様が、です。それほど圧があるのか、よく私は気を失わなかったと思います。




「エアクラ殿、マナト殿はまだ産まれたばかりと聞きました」




続けろ、と言わんばかりに少女が先を催促しています。




「そうとは思えないくらい技量が高く。つい、興が乗ってしまいました。


エアクラ殿とは違う技を使用しておりましたし本人の努力でしょう。」




「自らの非を認める、と?」




 ゾリデ様は頷き、無言の圧力が空間を支配する。


 逃げたい気持ちが頭の中を埋め尽くす直前、ふっ…と今までの圧力が嘘であったかのように消える。






「……まぁ、分かってるならいいか。


ここらだとゾリデ君が1番教育上手いだろうし。マナト君の事気に入ってくれてるみたいだしね」




「そこの君、ごめんね?怖かったよね?もう大丈夫だからね!」






 バッ!とエアクラ様と呼ばれている少女に顔を向けました。若草色のツインテール、幼い顔つき。紛れもない美少女が暗い緑の瞳をこちらに向けて返事を待っています。




「ありがとうございます!大丈夫です!!」




 咄嗟に失礼のない返事をしようとし、混乱してありがとうと口走っていました。


 エアクラ様は慣れているのか気にしてないご様子で安心しました。




「これからもマナト君のお世話よろしくね?」




 全力で首を立てに振りました。エアクラ様が拗ねた少女の様な顔をしながらボソッと「本当は私がお世話したかったんだけどなぁ…」と言ったのは聞かなかった事にしましょう。先程までと同一人物と思うと頭が混乱しますし…






 エアクラ様はマナト様を寝かせると「後は頼んだねー!」と言って飛び去ってしまいました。






 急いでゾリデ様が治癒をしています。私は何かできることはないかとワタワタしていると治療が終わったゾリデ様が座布団の上に座るように言われ理解しないまま座りました。




 ゾリデ様は頷くと突然マナト様の頭を私の膝の上においたのです!動揺しながら


「な、な、なな、え!?どう……えっ!?」


 と言葉にならない声を上げていると




「ははは!男の治療にはやっぱ癒やしが必要であるからな」


 笑いながらどこかに行ってしまいました。




 恥ずかしいですが退かすわけにもいかず、時間が過ぎました


 よく見ると整った顔をされています。耳にギリギリかかる長さの黒髪、整った目鼻立ち、体も筋肉が程よく付いています。


口も男の人にしてはピンク色で柔らかそうです。




変なことを想像してドキドキしてきちゃいました…


 顔が赤くなっていることを自覚し自らに活を入れ直しました。


ちょうどその時マナト様が目を覚ましました。


 




 マナト様も照れていて少し可愛かったです。

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