神聖騎士団


首を失った胴体が倒れ込む。首から血液が流れ落ちる。


勿体無いので吸血をし始めたがエアクラさんに早く行かなきゃと言われ一口だけ摂取した。




「初めての狩りだから食べさせてあげたかったんだけどね、一口だけにしときましょ。まだ増援くるでしょうし。」




口元を拭いながら同意する。


切り落とされた生首は間抜けな顔をしていた、死んだことにまるで気づいていないような表情だ。






「この短時間で本当に強くなったね、産まれて1ヶ月もたってないのに。これは血が良かった私のおかげかなぁ?」


冗談めかしながらエアクラさんが褒めてくれた。




初めての殺しで気が落ち込んでないか心配してくれているようだが思ったよりも何も感じていない。


吸血鬼になったからだろうかとも思ったがそれどころではないからだろうか?相手がクズだったからだろうか?








「やぁ、お二人さん。こんな夜遅くにデートかな?


夜道は危険だからおじさんが教会まで送ってあげようか?」






立ちふさがるように煙草を加えた渋い男性が立っていた。


デザインが少し違うが白いローブを身に纏っている。




「強い力を感じた気がしたんだけどなぁ、気のせいかぁ。年取ったなぁ〜


俺じゃなくても良かったんじゃないか?面倒だなぁ、部下に任せりゃよかったわ」




 軽い口調でブツブツと文句を言いながら、腰についている銃を取り出そうとした。同時にエアクラさんが一歩前に出た






「通してくれる、そうよね?」




その瞬間おっさんが後ろに飛び退いた!煙草が元いた場所に落ちる。






「……………洒落になんねぇなぁ、見逃してくれんのか…?」




「じゃなきゃもう終わってるわ」






 だろうなぁと言いながらおっさんは銃から手を話す、手は細かく震えていた




「あんた、名前はなんていうんだ?」




エアクラよ、と返答しながら歩き始めるので後ろをついていく。




「エアクラさんよぉ。アンタほどの力があれば、村─


「無駄な殺生はしたくないの?分かってくれるかしら?」




すまねぇ、わかった、勘弁してくれ。」




「貴方変わってるわね、神聖騎士団の連中が逃がすなんて」




「だから俺が来てよかったよ、あいつらはバカだから敵わなくてもとりあえず突っ込みやがる。


育てるのだってタダじゃねぇんだぞ、ったく」




「育てる大変さね、出来の悪い子を抱えると大変ね?」




「言ってくれるな……。そういうアンタは楽しそうだな。




俺はオーティス。さぁ、もう行ってくれ。見られるとあんま良い光景じゃない」




「利口な子がいたって覚えといてあげる。じゃあね」




少し歩くとエアクラさんが何かを手渡してきた。


人間の肘から先……?




「さっき初めての狩りをしたじゃない?なのに捨てるのはあまりに可哀想だから片腕だけ持ってきちゃった!プレゼントだよ!」




少女が笑顔で腕を差し出して来るのは強烈な絵面だった。しかも善意100%だ。




「あ、ありがとう…?」




受け取った手前食べざるを得ない。先程は味わう時間など無かったが今食べてみると美味しい。




「新鮮な人間は美味しいでしょ?」




頷くと微笑まれた。顔に出るほどだったのだろうか。




「さーてっ!これからどうしようかなぁ!


マナト君は何かしたいことある??」




「強くなりたいです。あいつらの事も詳しく知りたいし」




 力がないと何も選ぶことができない、力があれば全て選べる


助けるも助けないも自由にできる。


オーティスの反応を見る限りやっぱりエアクラさんはとんでもなく強いのだ。一瞥するだけで戦闘を回避することが出来た。




「うん、それは私も賛成!


………でもそうすると結構遠くなっちゃうけど、大丈夫?」






「北海道から遠いだと沖縄、とか…?」




「あ、ごめん。日本じゃない。中国!海越えちゃうけどいいかな…?」




まぁ、日本が地元なんだろうけどね。記憶ないから別にどこ行っても変わらないじゃないか?


言語が不安だがエアクラさんもいるし大丈夫…だろ




「エアクラさんが一緒なら大丈夫。初めての海外は緊張するけどね」






「そんなに可愛いこと言ってると食べちゃうよ?」






洒落にならん

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