第二章
憎しみ、深く(一)
チノー・アエルツによるオルコルカン
馬ぞろえのために、七州[デウアルト国]側の主だった者と精鋭がエルバセータに出払ったところを、時間をかけて急峻な山岳地帯を越えたノルセン・ダウロン率いる兵に襲わせた。
ダウロンの兵たちは、レヌ・スロの部隊に偽装していたので、途中の関所や、要塞近辺に駐屯していた兵たちをうまく
要塞内の混乱は
東南州、近西州、東部州。それぞれの指揮者から、兵の管理を
彼らはやってくる断片的な情報、それには事実ではないものも多く含まれていた、によく耐え、包囲を継続した。
北の老人[ハエルヌン・ブランクーレ]が暗殺されたという虚報のほうは、大きな動揺を生まなかったと思われる。あまりにも雲の上の人間すぎたし、他州の人間だったから、彼らにはぴんと来なかったのかもしれない。
問題は、ズヤイリ[・ゴレアーナ]どのの暗殺未遂のほうであった。
ズヤイリどのがレヌ・スロの指示をうけた東州兵に殺された。そのような
オルコルカンを包囲する七州の兵たちに、疑いと不安の心が生じ、それが形となって現れそうになった時、それを救ったのは鉄仮面であった。
じいさん[オヴァルテン・マウロ]と相談した結果、鉄仮面は難局を打開するため、思い切った策を取った。
迫り来るチノーへの対応を、オドゥアルデ[・バアニ]どのに任せて、鉄仮面自身はズヤイリ[・ゴレアーナ]どのとふたりで、オルコルカンへ急行することにした。オルコルカンに駐屯する兵を落ち着かせるには、それがいちばんの手のように思えたからだ。それは、チノーとの戦いに鉄仮面が不在になることを意味したが、どうせ、いくさの指揮はいつもじいさんに任せていたので、たいした問題ではないように彼女には思えた。
馬を飛ばしに飛ばして、どうにか、晩夏[九月]四日の未明に、鉄仮面とズヤイリどのは、警固の兵に守られつつ、オルコルカンに到着した。鉄仮面は馬を操るのがうまいほうであったが、所詮は女の身であったので、彼女がいなければ、もっと早く着いたであろう。しかし、それはもちろん、仕方のない話であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます