宝刀(五)

 ウストレリとのいくさを通じて、ゾオジ[・ゴレアーナ]どのは歴戦のいくさびとらしいところを見せ、オドゥアルデ[・バアニ]どのも、父親とはちがって面白みはないが、堅実な用兵家に育った。また、遠西州のレヌ・スロもゆうもうかんな将軍として知られるようになっていた。

 加えて、司令官を務める鉄仮面も、じいさん[オヴァルテン・マウロ]の補佐を受けて、いくさというものが何となくわかってきた。

 また、せきようたい(※1)は、毎回、自分たちがファルエール・ヴェルヴェルヴァを討つのだと、悲壮な覚悟をもっていくさに出向き、鉄仮面の想像以上の軍功を重ね続け、彼女が身の回りを守らせている古参兵たちの次に、頼れる部隊となった。


 上であげた者たちの活躍もあり、七州[デウアルト国]はイルコアの南管区だけでなく、東管区も徐々に勢力下へ置くことに成功しつつあった。

 しかし、それでも、ヴェルヴェルヴァとダウロン三兄弟という、二つの鎌首を持つ蛇を退たいするのは難事であった。

 熟練した軍という、金蛇軍の攻撃に耐える盾は手に入れたが、鉄仮面には、いまだ、蛇の首を刈る刀がなかった。


 そのような状況下の新暦九三一年晩冬[三月]、鉄仮面はふたたび、北の老人[ハエルヌン・スラザーラ]の呼び出しを受けた。

 行きたくはなかったが、鉄仮面が湯水のごとく使っていた、金の出どころが彼だったので、断るわけにはいかなかった。また、鉄仮面にも老人に会わねばならない用件、緊急で追加の金と兵の補充が必要、だったので、老人に会うことにした。

 後のことをじいさんに任せて、鉄仮面は[近北州の]スグレサへ向かった。



※1 赤陽隊

 オウジェーニエ・スラザーラに命を救われ、そのかたきを討ち、自身の名誉を回復するまでは、デウアルト国に戻ることができない者たちを集めた部隊。

 ウザベリ・スラザーラの許可を得て、スラザーラ家の家紋である太陽を隊旗とし、赤色で兵装をそろえていた。

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