第三十話 〜空亡の思い、未来の想い〜
答えが出ない…。
空亡はそう言った。なにに対する答えだろうか?突飛なことであったため、なにを言いたいのかよくわからなかった。
「答えが出ないって、どうしたの?」
空亡が意味のないことを言うとは思えない。何の答えが出ないのだろう?と純粋に気になった。
『昨日から、いや、未来と出会ってからずっと考えていた。このまま未来と戦場に
対して未来は陰陽師の血は引いているが、ちょっと前まではただの一般人だった。無理に問題に関わる必要はないと思うのだ。
ましてや、今の仕事が好きと言っていただろう。特にその辺りから考え始めたのだが、我に付き合っていると、その好きな仕事から離れることにもなりかねんし、ひょっとしたら、職場に危害が加わる可能性だってゼロではない。
そんな、未来を連れ回して良いものかと考えていたのだが、我も未来には何度も助けられたし、これからも一緒に戦いたいとも思っている。そんなことを考えていたのだが、どうしたら良いのか答えが出ないのだ。』
…空亡……。
そんなに私のことを考えてくれていたんだ。確かに、最初は軽い気持ちで始めた人助けだけど、今はもっと強くなりたいと思ってもいる。本気でやるには今の職場は辞めなくてはいけないかもしれない。でも、私の中では答えが決まっている…。
「空亡…。ありがとう、いっぱい考えてくれてたんだね。
でもね、私はもう決めた。強い陰陽師になって空亡のやっていることを手助けしようと思ってる。確かに今の職場もいいけど、陰陽師だって私のやりたい事だから。それに、お父さんだって整体やりながら陰陽師やってるんだよ?最初は無理だと思うけど、いつかパン屋で働きながら陰陽師だってできると思うんだ!だから、私は長老の申し出を受けようと思う!今からパン屋の両立は難しいから、辞めることにはなると思うけど、きっと大丈夫!」
そう。私はもうやりたいことを決めている。もうグダグダ言わないで、一生懸命やってみる!そう決めたんだ。
『未来…。だが、もういつもの日常には戻ってこられないかもしれないんだぞ?』
「そうだね。というか、すでに日常は崩れ始めてるけどね!」
ははっと笑いながら空亡の言葉に返答する。そこまで、今の日常に未練はない。むしろ、これから始まる非日常にわくわくしている自分もいる。
『そうか。それは済まなかったな。いや、未来をみくびっていたのかもしれないな…。未来がそう決めたのなら我は全力で未来を守るだけだな!全力でサポートしよう!』
空亡も私の覚悟に応えてくれたみたいだ。
「ありがとう!ただ、今後どうやって行動したらいいかとかはやっぱり相談しておかないといけないと思うからそこは帰ったらお父さん達に相談しよう!
空亡も相談してくれてありがとうね!やっぱり言ってもらわないと通じないよね!」
そうなのだ。方針は決まっていても、やっぱり初めての仕事ではどういった立ち回りが必要なのかはわからない。より詳しい先人の知恵を授かろう。
空亡も私を信頼して相談してくれたんだと思う。そんな気持ちに嬉しくなる。生きた年月とか経験が全然違くても、隣に立てる存在になりたい。背中を任せられる存在になりたい。そんな思いが溢れてきた。
―未来さん。随分空亡さんにご執心ですね。―
急にソラからの念話が飛んできた。私はその言葉に、
『大丈夫か?』
「ん?うんうん!大丈夫大丈夫!」
―「ソラー!なんて事言うの!?そんな事ないから!」―
私は空亡にとぼけて、ソラに叱責した。自分でも気づいている。
――私は空亡に惹かれている。――
けど、これには人間と妖怪という大きな溝がある。正直、どうしたらいいかはわからないけど、今のところは私の心のうちに秘めておこう…。
いつか、この想いを打ち明ける日が来るのだろうか。わからないことは多いけど、この想いが私を強くしてくれるって信じている。
まずは、陰陽師として一人前になれるようにしっかり頑張ろう。
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