第二十七話 〜天狐ソラ〜
「火車ちゃん、よかったね!」
『…ッッ!?ちゃんって!?お嬢!!これでもオイラは何千年も前から存在してるんやで!?』
「いや、なんか可愛くて…!嫌だったらやめるよ?」
無理にこの呼び方をすることもないと思っているので、やめようと思えばいつでもやめられる。そんなことを思って提案したが…。
『……いや!やめんでええ!ここいらで新しいアイデンティティを発掘や!愛くるしい生意気キャラ的なキャラ付けしていこかー!』
うん、根っこの部分は変わっていないっぽいな。これが火車のいいところなんだな。
そんな話をしながら、お酒を飲んでいた。
「あ、お母さん。そう言えば、長老はそのままでいいの?一応、忙しい人なんでしょ?話は明日起きてからでいいのかな?」
ふと、思ったため、聞いてみた。昨日会った時には色々忙しいからと言って帰っていったが、今日はまた泊まるのはいいとして、明日も忙しくなってしまわないだろうか?
「うん、そうね。確かに忙しい立場の人ではあるわね。一回起こしてみようか。」
そういうと、お母さんは長老をゆすって起こそうとした。
「長老。長老!未来に話があるんでしょう!?起きて!!」
長老は「イヤイヤ、今日じゃなくてもいいんじゃねーか?むにゃむにゃ」ってな感じで、夢うつつな感じだった。今日じゃなくてもいいんじゃないかと言っているから大丈夫なのかと思いたいが、この長老の話を信じるわけにはいかないな。
「ふぅ…。まいったわ。起きそうにないわ。」
そういうと、お母さんは諦めた。まあ、起きないんじゃ仕方がないな。とりあえず、長老の話は明日の朝にしようか。っと思っていたところ…
―いつの世も男はだらしないですね。―
「え!?」
急に首元から声がした。ソラが声を発していた。
「あら、新しいお仲間?」
お母さんも気づいたらしく、私に問いかけてきた。
―お初にお目にかかります。わらわはソラと申します。妖怪「天狐」でございます。この度、未来さんと一緒に強くなろうと誓い合いました。―
「あらあら!そうなの!?それはいいわね。天狐って妖狐の中でもすごい格上よね?」
お母さんは自分の考えうる天狐のイメージを問いかけている。
―そうですね。わらわ自身、いわゆる神と呼ばれる存在です。ですが、今日の出来事で、わらわの弱さを垣間見ました。そんな時に未来さんが一緒に強くなろうと言ってくれたのです。わらわはその言葉に感銘を受け、未来さんについていこうと感じたのです。―
私との出会いをすごい美化されてるように感じるが、まあ、あながち間違っていない。少し恥ずかしい気持ちになるがなんとも言えない。
「そうなの、未来が…。母親としてお願いするわ。未来をお願いね。未来も、大きくなったのね。でも、無茶はしないでね。」
「ありがとう、お母さん。」
―お任せください。―
お母さんはソラと私に声をかけ、それぞれに応答した。いつも私を思ってくれてありがとう。
―さて!それでは始めましょうか。―
話題を変えるように、ソラが話し始めると同時に、首にかかっているネックレスが光の玉となり宙に浮いた。その光の玉とは徐々に形を変えて、
ポンッ!
という音と共に、小さい狐の姿となり、私の頭の上に飛び乗った。
綺麗な琥珀色こはくいろの毛並みに長く綺麗な一本の尻尾。額には真珠のような玉が埋まっており、その周りに模様がある。
「「え!?ああ!可愛い!!」」
私とお母さんは2人して驚きと可愛さへの気持ちが抑えられなくなりつい叫んでしまった。
「ソラ!そんな姿になれたの!?もうずっとその姿でいなよ!!」
私はさらに懇願した。
―この姿もいいのですが、ネックレスの方が肌身離さずいられるのでいいと思います。―
「そっか…。そういうことなら仕方がないか…。」
確かに、肌身離さずいられた方が安全ではある気がする。今日みたいなことがあったから尚更だ。
「でもでも!家にいる時とか安全そうな時はその姿でいてもいいんじゃないかな!?」
―まあ、安全な時ならいいですね。その時は空亡さんがしっかり護衛していてくださいね。―
『!無論だ。』
ちょっと空気と化していた空亡に話がふられてちょっと嬉しそうな感じが感じられる。空亡面白い。
―でしたら、部屋にいる時くらいはこの姿でいることを心がけましょう。―
「ありがとう!ちなみにこの姿は触れられるの!?」
基本的に妖怪は触れられないと考えているが、今頭に乗っている感じだと実体がありそうだ。
―ええ。この姿は触れますよ。神クラスとなれば実体化するのに消費する妖力は微々たるものですからね。それでも、多少は節約のために普段は実体化しなかったり、ネックレス形態をとらせてもらいます。―
さすが、神さま!燃費効率も考えられているようだ!すごい!基本的な実体化には妖力を使うけど、ネックレスとか空亡の球体とか形を変えない固定した変化は最初にまとまった妖力で変化しているから、その後の妖力消費がないらしい。色々考えているみたいだ。
―さぁ、とりあえずこの頃、始めましょうか。―
そういうと、ソラは長老とお父さんのところへ駆けて行き、2人の頭に前足を置いた。前足の先が少しポゥっと光ったと思ったら2人がガバッッと起き上がり、
「「うわあぁぁぁぁぁあ!!」」
っと叫んで目を覚ました。
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