第16話 そのルートは知らなかった

 放課後の出来事である。

 今、親友と中庭に2人きりでいる。


宙弥ひろや、これなんだけど」

「えっ…何で?」


 竜二りゅうじがスマホを通して見せてきたのはとある写真。

 ファミレスで女子に囲まれた件である。


「お前、ハーレムだな」

「誤解だ、訳を話したい」


 斯々然々という言葉で省略したが、とりあえず竜二には伝わった。

 因みにあの時に居た葛原くずわらさんに帰り際、何故居たのか聞いてみると、坂上さかのうえ先輩に用事があり、教室に居なくて他の先輩に聞いたらファミレスに行ったということで行くと、先約である俺を見て慌てたらしいが、近くに居て俺をじっと見ていた雨宮あまみやさんがいて、目が合うと彼女が「どうしたの?」と近寄って来て訳を話すと「一緒に行こう!」と腕を掴まれあれよあれよと…。

 頭を抱えた。可哀想に。

 最後に金澤かなさわさんが来たのには驚いたことは言うまでもない。


「ところで、その写真は誰から?」


 肝心な所を竜二に問う。

 すると竜二はニヤリと口角を上げた。

 不敵な笑みがなんだか憎たらしい。


「彼女が見たから撮ったってさ」

「はぁ!?」


 竜二の彼女に目撃されたんかいいいいい!!


「友達と歩いていた時に、たまたまファミレスの横を通って、その時に見たんだとさ」

「奥のテーブル席だったのに」

「悪いな、中に友達居たから即連絡して撮って貰って送ってくれたそうだ、許してくれ」


 リア充彼女なんかヤバいじゃないか。

 絶対馬鹿にしてるはず。

 もうダメだ…あんな写真バラまかれたら馬鹿にされる。


「誰にも言うなよ」

「誰にも言わんし見せないし」

「彼女にも釘を刺してくれ」

「分かってるって」


 ヘラヘラ顔に信用の欠片さえないと思ったが、今まで内緒にしてくれと言った件は全て言いふらしていないから大丈夫であろう。


「なんか奢れよ」

「近々な」

「サンキュ」


 弱みを握られると嫌になるな。


「竜二ー!」


 遠くから高らかな華やかな女子の声が聞こえた。

 声のした方向を竜二と同じタイミングで向くと、親友の表情はみるみる緩みデレ顔に。


灯夏ともか!」


 出た、竜二のリア充彼女である本田ほんだマリアーノ灯夏。

 金髪に染めている、のではなく、父親がアメリカ人で母親が日本人のハーフということで、髪色は父親からの遺伝。

 あとは洋の中に和が混在しているが、やはり可愛さはあるようだ。

 身長は平均よりも少し高めではあるが、竜二は185センチの長身であるから並んでもバランスは取れる。


「やほー!ちゅう君」

「こんちは」


 宙弥の“宙”をちゅうと呼ぶのは本田しかいない。


「本田、写真消して」


 単刀直入に言った。早めが肝心。


「もう消したよ、はい見てみな」

「はい?」


 遠慮がちに画面をスクロールしてみると、どこにもなかった。


「撮ってくれた友達にも消してって言って確認もしたから大丈夫」

「そう、なのか…」


 こういう所は良いやつなんだよな。


「まさかバラまかれるとか思ったのー?」


 クスクス笑いながら面白がる本田にイラッとしたが我慢する。


「安心しなって!」

「うっ!!」


 思い切り背中を叩かれた。めちゃ痛い。


「てか竜二、早く帰ろうよー!」

「そうだな!帰るか!」


 このバカップルめ。

 でも、常識ある2人だからいいか。


「んじゃ俺も帰るよ」

「おう、また明日な」

「ばいばーい」


“『今日は竜二とカラオケー!何歌おっかな♪』”

“『灯夏と2人でカラオケかー、どうにかなるのかなー』”


 彼女は彼氏とのデートが楽しみで、彼氏は彼女と何か起こるのではないかと期待している。

 安心安全に、健全でお付き合いして下さい。

 さて、俺も帰ろうとしたその時、スマホが震えた。

 誰だよ。見てみると…ああ…はい。


『至急図書室へ!中庭にいるのは分かっているからな!』


 風紀委員長様から直々のメッセージだった。

 てか、何で図書室なんだよ。

 分けのわからない頭で急いで向かった。

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