12 騙したな(康史&真弘)

 長い間、兄に騙されていたんだなと気付いたのは、高校生の時だった。

 自分で自分の物を触っちゃいけない。俺はそう信じて過ごしてきた。兄にいじくられ、吸われ、飲まれるのも、家族であれば当然の行為だと思い込まされていた。

 修学旅行の夜、男だけでそんな話になり、自分だけが異常だと知った。口に出さずに済んで本当に良かったと思う。慣れない旅館の布団にくるまりながら、俺は泣いた。


「兄ちゃん、もうしないで」


 帰ってから、二人きりになった俺の部屋で、キッパリとそう言った。兄はヘラヘラと笑みを浮かべていた。


「どうしてだよ真弘まひろ。とうとう気付いちまったか?」

「そうだよ。他の家ではこんなことやってない。俺が……兄ちゃんが……おかしいんだ」


 兄は俺をベッドに押し倒してきた。


「ああ、おかしいんだよ。兄ちゃんは真弘じゃないとそそらないんだよ」

「よくも……今まで……」

「ははっ、この時を待ってた」


 足をバタバタとさせて逃れようとしたが、兄は俺の首を絞めてきた。完全に呼吸できなくなる程度ではない。ひゅう、と息が漏れた。


「もう遅いんだよ。真弘は兄ちゃんでないと満足できない身体になった。さあ、もっと気持ちよくさせてやるから」


 首から手を離され、空気を求めて俺が咳き込んでいると、ベルトを外され指が入ってきた。


「やめ……やめて……」

「じきに良くなるよ。同じ男だからちゃんとわかってる。真弘は今まで通り、兄ちゃんに身を任せていればいいんだ」


 抵抗して、また首を絞められてはたまらない。早く兄が満足してくれるのを願い、耐えることにした。


「ほら……力抜け」

「んっ……」


 兄は自分の唾液をつけて、さらに指を滑らせた。下着も完全におろされてしまって、意に反して自分の物が反応してしまっているのが見えた。


「ふぅ、最初はこのくらいだな。ゆっくり進めてやるから。苦しいだろ? いつも通り、してあげる」


 そう、いつも通りのことをされた。自分は兄だから、これは責任のようなものだと言い聞かされてきたことを。

 違ったじゃないか。

 兄は俺をどうしたいんだ。まだこの先があるというのか。素直に従っていた自分が本当に愚かだった。嫌だ。兄の言いなりになんてなりたくない。


「かはっ……」

「たくさん出たな。いい子だ真弘」

「クソッ……なんだよ……なんなんだよ!」

「またしような」


 こんなこと、誰にも言えない。抱え込むしかない。俺は既に兄のオモチャだ。

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