第十五話 再びアンティークショップへ
令嬢ルシアは、令嬢コットンの行動に胸騒ぎを覚えた。
フィアンセのランティス王子も同じだった。
魔法使いのメリウスは、未来予知が出来る。
これから起こることに不安はなかったが予測が裏切られることもあると思っている。
ルシアは、秘書のセーラを待っている。
「ルシアお嬢様、緊急手配が出来ましたのでセーラとご一緒に参りましょう」
「ええ、セーラも来るの?」
「学園以外で城外に外出することは、
ーー城主のルーク・ドメーヌ様より固く禁止されています」
「しょうがないわね。父には逆らえ無いわね」
「お嬢様、
ーー国を相手にするのに等しいですから」
「そうね。軍隊は相手にはしないわ」
「じゃあ、そういうことでセーラがお供します」
「セーラ、邪魔をしないでね」
「分かりました。お嬢様のお邪魔はしません」
「分かったわ。じゃあ、ランティス王子、行きましょう。
ーー零、
ーーそう、クローラ、メリウスたちに外出着を至急用意して、
ーーその格好じゃあ目立ちすぎるので・・・・・・
ーー私も着替えるわ、制服に」
結局、ルシアもメリウスも一旦、自室に戻り着替えることになった。
メイド長のクローラが、メイドを三人呼び、メリウスたちの着替えを済ませた。
制服なら目立たないと令嬢ルシアと秘書のセーラは考えた。
螺旋階段を降りて、昨日通った城の大きな玄関に出る。
メイドが両脇にずらりと並んでいるのは昨日と同じだが壮観な眺めだ。
入り口には、ランティス王子と馬車担当のクローバが待機している。
「ランティス王子、お待たせしました。
ーークローバ、よろしくお願いしますね」
「はい、お嬢様、よろしくお願いします」
「クローバは相変わらず腰が低いわね」
「さあ、お嬢様、こちらへどうぞ」
「セーラも一緒に乗ってください」
「はい、お嬢様ありがとうございます」
メイド長のクローラとは玄関で別れた。
ランティス王子と共にメリウスたちも馬車に乗る。
馬車は、前日と違う道を通り白樺の森の外れに出る。
兵隊長のルイ・ザードの姿と私服姿の兵隊が並んで見える。
秘書のセーラはザードに挨拶して、私服兵に労いの言葉を掛けた。
「急な申し出に対応してくださりありがとうございます」
「セーラ様、気になさらないでください。仕事ですから」
ルシアがセーラを庇う。
「セーラは、私の我儘に付き合っているだけよ」
ザードは分かっているという顔をしていた。
双子の姉妹のコットンもルシアも、大なり小なり我儘娘であったからだ。
「じゃあ、ザード、跳ね橋までよろしくね」
「はい、お嬢様、その先は私服兵がお供しますので、心配はございません」
私服兵は一種の治安部隊だった。
悪漢から令嬢を守る特務部隊だ。
跳ね橋でザードと別れた一行は、私服兵に前後を挟まれ街に出た。
角を曲がった時、先頭の私服兵が突然倒れて血を流している。
メリウスが急いで結界を張り巡らせ私服兵に治癒魔術を掛けた。
私服兵は、首を振り、今起きたことに驚きメリウスに感謝する。
メリウスは、辺りを見回すが犯人の姿はなかった。
「ルシアお嬢様、今日は不穏な気配がありますが」
「セーラ、メリウスがいるから大丈夫よ。
ーーメリウス、あなた只者じゃないわね」
咄嗟のこととは言えルシアに知られることになったメリウスは、
ーー時間魔法でそこだけリセットを施した。
「あれ、なんか、私、変なことを言ったかしら、メリウス」
「いいえ、ルシアさま、何も言われていません」
メリウスの時間魔法のお陰で一同の時間は戻っている。
ルシアたちが、アンティークショップに近づくと、
ーー令嬢コットンとティラミス王子が店から出て来た。
店の前には、コットンたちの私服兵が護衛していた。
ティラミス王子が手に小さな包みを持っている。
「兄さん、それは、なんですか?」
「骨董品の鏡らしいよ」
「そんな物買ってどうするの」
「コットンお嬢様が欲しいというのでね」
メリウスが、その包みの波動を確かめたが問題は見当たらない。
令嬢コットンと入れ替わりにルシアたちが店内に入る。
秘書のセーラはルシアの脇について離れない。
「ルシアお嬢様、いらっしゃいませ」
「ジューク、さっき姉さんがいたけど何を買ったのかしら」
「心配、ございませんよ。魔法使いの鏡ではありませんから」
「そう、それなら良かった」
「お嬢様、今日は、何をご覧になりますか」
「そうね、剣とか興味あるわね」
店主のジュークが奥の部屋から小さな刀を持って来た。
「これが剣なの」
「大昔に聖騎士が持っていたと伝わる小さい方の刀です。
ーー大刀は発見されていないそうです」
ルシアはメリウスにウインクして尋ねた。
「メリウス、これ大丈夫かしら?」
メリウスは困った顔をしながら答える。
「暗澹(あんたん)の波動は感じません」
「セーラ、私、これが欲しいわ」
「ジュークさん、これを包んでくださりますか?」
「はい、毎度ありがとうございます」
セーラは小刀の包みをランティス王子に預けてルシアと一緒にアンティークショップをあとにした。
外では私服兵が目を光らせている。
「ランティス王子、零、
四人は令嬢ルシアを見ながら顔の前に片手を立てて大きく左右に振った。
ルシアの表情がみるみる赤くなり口が尖る。
「あなたたちねーー私の思いやりに応えるべきじゃないかしら」
ランティス王子と秘書のセーラがルシアを
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