数学ができない鵜飼くんとバスケ。前編
––––はぁ、本当に受験の時は大変だった。
今でも聖奈のほっぺの柔らかさは忘れられない。
結局あの後私たちの最寄駅に到着してしまい、聖奈につんつんされることはなかった。
そして私と聖奈は奇跡的に(?)薔薇丘高校に入学できた。
しかし入るのがゴールでは無く、そこからさらに厳しい授業が始まるため、今でもよく聖奈に勉強(主に数学)を教えている。
薔薇丘高校は、「文武両道」をテーマに掲げる高校で、入学してくる生徒は脅威の身体能力を持ち合わせるだけで無く、とんでもない頭の良さも持ち合わせているのだ。
例えるならば、小中で1人はいた、運動もスポーツもできてめっちゃモテるヤツみたいなのが集まったような高校だ。
話を戻すが、ここは特に文武の武に力を入れているため、体育の授業がなぜかとても重視されている。体育の成績だけ大学進学への内申点に物凄く影響したりする。
また、体育の授業は基本的に、ゴリゴリの2mくらいありそうな体育教師(武田)が選んだチームに分かれて、対戦形式で行われる。対戦成績がそのまま成績に影響するのだ。
そんな仕組みのせいで、休み時間まで仲良く話していたはずの生徒の目が、いきなり
説明はさておき、今日はその体育がある。確か競技はバスケットボールだったはずだ。
「おーい! 優奈〜」
遠くから聞き覚えのある可愛い声が聞こえてきた。声変わりしてるはずなのに高い声だ。
「聖奈、次体育だよ。遅れたらどうなるか…」
「ハハハ優奈怖がりすぎだよ〜武田先生怖そうに見えて優しい心の持ち主だよ。
この前も体育館裏のお花に水あげてるの見たし」
「何それ悲しきならぬ優しきモンスターじゃん」
あはは、と2人で歩きながら廊下を歩いていると、噂をすればなんとやら、武田先生がやってきた。
「っていうか聖奈はなんで体育館裏にいたの!?」
驚いたものだから急いで話を変えた。
「あ〜うん。まぁ、ちょっと用事が、あって?」
「何よその煮え切らない感じは?」
「まぁ、一旦体育館行こ?」
「そうね、わかった。あ! もしかして聖奈、運動できるからってうちのクラスの体育LOVERに呼び出されたとか? 新垣とかやりそう…
ガラ悪いし」
「いやそんなんじゃないって! 大丈夫大丈夫!」
「だ〜れ〜がガラ悪いだって??」
「げ」
なんともタイミング悪く新垣がやってきてしまった。こちらがテスト学年1位でスポーツもできる文武両道大好きマンの新垣さんデス。
「あんたの話なんかしてないわ。とっとと去れ」
「おいおい言ってくれんじゃねえかよ〜
学年“2位”さん?」
「あぁん??」
「まぁまぁ2人とも落ち着いて? マジで体育遅れたらやばいよ」
「あぁありがとうな鵜飼。やっぱお前は…」
「ありがと聖奈。やっぱり聖奈は…」
「「心の癒しだな」」
「「あぁん?」」
「鵜飼は俺のもんだろ。男同士親友なんだから」
「聖奈は私のもの、でしょ。ずっと勉強教えてきたんだから…」
ちょっと恥ずかしくて言葉が詰まってしまった。
「俺のものだ」
「私のものよ」
「ダメだこりゃ〜」
言い争う私たちを見て、呆れる聖奈であった。
隣の席の鵜飼くんは数学ができない。 馴鹿谷々 @NajikaYaya
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