第4話

「ネオは冒険の途中で教会を訪ねてきたんだ。大ケガしてたから回復したら、懐かれちゃって……」

「フフ、そうなの。でもそれがきっかけでお互いに惹かれ合ったという訳ね?」

「……まあ……」

「あなたは今、幸せ?」

 私の問い掛けに、ララは少しばかり目を見開いた。

 その後、少し戸惑ったように、けれどなにかを覚悟したように唇をキュッと噛み締めた。

「ネオを取り戻す、絶対に。それが叶うなら……幸せだよ」

「──じゃあ、幸せね!」

 私の言葉にララは控えめだけれど、とても愛らしい笑みを浮かべた。

「なんだか……ソラってホント、不思議なヤツだな」

「そう? それは誉め言葉ということでいいのよね?」

「アハハ、いいよ」

 ララは少しの間、笑った後続けてこう呟く。

「……それにしても、魔王ってどんなヤツなんだろうな?」

 私が口を開きかけた時、同じく口を開いたのは、レインだ。

「このような残虐な魔法を掛けることができる相手だ。極悪非道、という言葉がピッタリなヤツだろう」

「ねえ、レイン。予想や思い込みで判断することは止めたほうがいいわ」

 思わず言うと──あら、口を尖らせて不服そうね。私からしたら、孫が癇癪かんしゃくをおこしているのをなだめるようなもの。構わず続けさせてもらうわ。

「──人を殺めることが正義だった世界を私は知っている。“人を殺すな”という至極、当然なことも言わせてもらえなかった。年の離れた兄も死んだわ。“悲しい”と言うことすら躊躇ためらわれた。……そんな世界、ろくなものじゃないわよ」

 僅かにレインの眉が上がるのが分かった。

 そのまま、彼は考えこんだようになにも言わなくなってしまった。


「ソラ、アンタ一体どういう人生を……」

「ふふ、でもね。人って暗闇を打開できる方法を不思議と知っているものなの。だから、発展できるのよ。……本当に不思議に思うわ。焼け野原だった荒野に木々や草花が咲き、道が整備され、家や店が建ち……便利で素晴らしい世の中になったわ──それでも人の悪意は消えることはなかった」

「え?」

「私が生きる世界で争いが終わったとしても、隣の世界では争い続けていたわ」

「そんな……」

 ──あら、嫌だわ。

 ずいぶんしんみりさせてしまったみたい。

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