第45話
「それは……」
丹波くんから発生した炎は彼自身を包み込んだ、これでは彼自身が火達磨なったみたいだ。
「くく……やっぱり最高だぜ、この力は」
丹波くんは満足そうに呟く。
「君は一体なにをしたの?」
「俺の力をある人に引き出してもらったのさ。お前を殺すためにな」
炎の化身と化した丹波くんが腕を振るう。炎弾が僕目がけて放たれた。この前獲得した未来予測の力を使って僕はそれを見切って軽くかわす。たいしたことのない一撃だ。
「まだまだだ!」
丹波くんはさらに炎を発生させる。僕と彼を他から隔離するようにその炎は周囲を覆った。
「これで俺とお前が二人きりで戦える舞台が整ったな」
丹波くんは恍惚とした笑みを浮かべこちらを見ている。視線は僕を捉えて放さない。
(気持ち悪い……)
僕は彼の執念深さに不快感を覚えた。やっぱり彼との因縁はここで終わらせないと。でないとこいつはいつまでも僕に亡霊のように付き纏ってくる。
でもちょうどいい、向こうも一対一で戦うことを望んでいるならやりやすい。徹底的に叩き潰してやる。
「もう遠慮はしないよ」
僕は魔剣を構えて彼へと突撃する。放たれた炎が僕へと向かってくるがスキルキャンセラーの効果でその炎はすべて消していく。
彼へと肉薄し、剣を大きく頭上に構え振り下ろす。しかしその一撃は彼には当たらなかった。
「!?」
「こっちだ」
別のところから丹波くんの声が聞こえたかと思うと炎が僕に襲いかかってきた。スキルキャンセラーの効果でその炎を打ち消し、丹波くんの居場所を確認する。
「ほらほら、こっちだぜ。ついてこれてないじゃねえか」
また別のところから彼の声がして炎が僕に襲いかかる。スキルキャンセラーの効果でダメージはないけどこれじゃこっちも彼を捉えられない。
(彼はどこに……?)
「こっちだ、間抜け!」
後ろから彼の声が聞こえたと思った時には頬を殴られて僕は吹き飛ばされていた。
「はは! いいねえ! この力、気に入ったぜ! お前にはなぜか俺の炎は効かないらしいからな。じわじわとなぶり殺しにしてやる」
僕に一撃入れたことに機嫌をよくしたのか丹波くんが喜悦に満ちた声をあげる。
(今の攻撃は一体……未来予測でも見切れなかった……)
未来予測は少し先の未来を予測する力だ、それで彼の動きを捉えられなかったのはどうしてだろう。
「未来予測はあくまで今捉えている情報から少し先の未来を予測する力です。なのでもし相手が空間を移動するなどのスキル保持者の場合、捉えられないことがあります」
「それってつまり、相手がいきなり自分の前に出てきたとかだったら対処できないってこと? 今自分が捉えている情報から外れているものの行動は予測できないのか?」
「はい、なので未来予測の追加効果は空間移動系とは相性が悪いのです」
成程、つまり彼はなんらかの方法で未来予測をかいくぐったというわけか。
「アナウンスさん、彼がどうやって未来予測をかいくぐったのか分かる?」
「少々お待ちを。解析を試みます、その間は彼の攻撃をかわすことに専念してください」
「分かった」
アナウンスさんの言葉に従い、僕は少しの間、丹波くんの攻撃を回避することに専念した。やはり丹波くんはその間も突然現れては消えることを繰り返しながら僕へ攻撃を加えてきた。
「ちょこまかうっとうしいな! 逃げないで大人しく負けろよ!」
「嫌に決まってるだろ」
丹波くんの罵声を無視しながら僕は彼の攻撃の回避に専念する。彼の一番恐ろしい攻撃がスキルによる炎であってそれが僕に効かない以上未来予測がなくとも回避に意識を集中していれば致命傷を負うことはない。
「お待たせしました、彼の攻撃の解析が終わりましたよ」
「ありがとう、アナウンスさん。それで彼の攻撃はどんな仕掛けだった?」
「結論から言えば、炎の中を移動して別の場所に現れています。あの炎の壁や戦いの最中に発生させた炎を利用したものですね」
「ああ、成程。自分が攻撃として発生させた炎を利用して別の場所に移動しているのか」
「はい、その通りです」
「……ちょっと面倒だな。そうなるとあの炎を消した上で彼に直接攻撃しないとさっきみたいにかわされるんだけど……。僕の手持ちの追加効果でこれを封じて彼をやぶれそうなものってないかな」
「検討します。……残念ですが一気にあの炎を止められそうなスキルはありません」
「スキルキャンセラーじゃ駄目?」
「スキルキャンセラーはあくまでマスターへの効果なのであの炎全体に効果はありません」
参った、これだと持久戦で僕の負けに持ち込まれてしまいそうだ。
「私から提案なのですが」
アナウンスさんの言葉とともに、僕の目の前にウインドウが表示さされる。そこには新たな追加効果の候補が示されていた。
「今貯めているポイントでこの追加効果が習得できます。これで彼の炎を封じることが出来ると思いますがどうでしょう?」
アナウンスさんの示した追加効果を見て、僕は微笑んだ。
「流石だね、これなら彼の炎を打ち破れそうだ」
彼に勝つ算段を頭の中で組み立て--僕は再び、剣を構え直した。
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