第44話

 丹波くんから連絡を受けた僕達は彼から指定のあった池袋のダンジョンにやってきていた。僕らは途中で遭遇したモンスターを倒しながらこのダンジョンの中層を目指し、辿りついた。

 そこにいたのは一人の男性と二人の女性ーー丹波くんと捕らわれた和泉さんと出雲さんだ。二人は怪我をしているようでぐったりしていた。

「待っていたぜ、隠岐。俺はお前に会えて嬉しいよ」


 彼は残忍な笑みを浮かべ、僕に微笑む。しかし彼の言葉なんて今の僕にはどうでもよかった。


「ねえ、和泉さんと出雲さんになにをしたの?」


「なにって……ちょっとした教育だよ。こいつらが生意気なことばっかり言うものでな。ちょっと体に分からせてやったのさ。こういうのが一番効くだろう」


「……」


 ああ、この男は本当にどうしようもないな。


 傷だらけの二人とそれに対する丹波くんの物言いのせいで僕の中でプツンとなにかが切れることがした。


「なっ!!」


 気がつけば僕は身体強化の効果を利用して一瞬で移動し、彼の頬を思い切り殴っていた。僕に殴り飛ばされた彼は地面を無様に転がる。


「……君はどうしていつもこうなんだ。人を平気で踏みにじって自分が支配的に振る舞うことを当たり前、どうしてそんな醜い真似が出来るんだ?」


「んなもん決まってんだろ」


 僕に殴られても丹波くんは立ち上がってきた。前はこのくらいで殴ったら意識を失ったはずだけど。


「俺に力があるからだ。力があるものがないものを支配するのは当然だろ? 俺は強い、だからその権利がある。だがお前がそれを台無しにしてくれた。今日俺はここでその間違いを正すんだよ」


「……! お前……!」


 頭が沸騰しそうだった、魔剣を顕現させ、その柄を強く握りしめる。この前こっちが強いと示せばこいつは僕に構わなくなるだろうと思ったけど甘かった。


「ああ? 怒るなよ。そんなに和泉を守りたいんなら俺をぶちのめして止めてみろや」


「君は一回僕に負けてるだろ」


 僕の言葉に丹波くんは顔をしかめる。


「あれはなにかの間違いさ。それをお前にも分からせてやる。ただ、邪魔が入ると嫌なんでな」

 

 丹波くんの言葉と共にあの謎のモンスターが複数対現れる。なんで、彼がこいつらに指示を出してるんだ。


「くく……まあある人間の助力があってな。あのモンスター達にはお前のお仲間の相手をしててもらうとするよ。そら、いけ!」


 彼の言葉と同時にモンスター達が不知火さんと岩代さんに襲いかかった。


「不知火さん、岩代さん!」


 襲いかかったモンスター達はすべて地面に叩きつけられた。


「こっちは大丈夫だからさ、君はその男を倒しなよ。あたしも本当はその男をぶちのめしたいけど今回は君に譲る、頼んだよ」


 僕に対し、不知火さんは手をひらひらと振って丹波くんに集中するように促す。岩代さんも不知火さんの言葉に頷いていた。


(今は不知火さん達を信じよう。僕が今やるべきことは……)


 モンスター達の相手を彼女達に任せ、僕は丹波くんへと向き直る。


「丹波くん、和泉さんは返してもらうよ」


「はは、なんだよ、いっちょ前にかっこつけか? ちょっと強くなったくらいで調子に乗りやがって。お前は俺に支配される立場だってことを分からせてやるぜ」


 言葉と共に彼の体から炎が発生しーー彼は火に包まれた。


 

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