ちょっと魔王退治に

「いやいや、魔王討伐なんて勇者のすることっスよ……」


「それでも、私は魔王を倒します」


 ケイは内心マルクエンさんは記憶喪失のついでに頭もどうかしちまったのかと思っていた。


「まずは魔物を狩って、魔人を倒してからよ」


「えぇ!? ラミッタさんまで!?」


 驚いて裏返った声をケイは上げる。その後はあまり会話もなく、食事が終わった。


「その、マルクエンさんは、これからどうするのでしょうか?」


 シヘンに尋ねられ、うーんとマルクエンは考える。


「そうですね、とりあえず魔人? とやらの情報を集めます」


「あ、あの!! 私もお手伝いしても良いでしょうか!?」


「ちょっ、ばかっ!!」


 思わずケイはシヘンにヘッドロックをキメてマルクエンに背を向けた。


「ま、マルクエンさん。私達ちょっとお花を詰んできますわ、オホホホ」


 そのままギルドの隅っこまで連れて行く。


「馬鹿かシヘン!! マルクエンさんは良い人かも知れないが、魔王や魔人を倒すって言ってんだぞ!? 正気じゃねぇ!!」


「で、でも!!」


「確かにマルクエンさんとラミッタさんはメチャクチャ強い。だが、そんな二人に付いて行ってみろ! 無事じゃ済まないぞ!」


 真っ当な意見を言われ、シヘンは俯いて言葉を失う。


「マルクエンさん、ラミッタさん。魔王と魔人の討伐、応援してるっスよ! 何かあったらいつでも村に戻ってきてください!」


 すぐにでも出発しようというマルクエン達に、村の出入り口でケイは作り笑顔で、シヘンはしょげた顔で別れを告げた。


 シヘンとケイに何があったか察したラミッタは振り返らずに村を出ていく。


「シヘンさん、ケイさん、お元気でー!」


 能天気なマルクエンを見て、ラミッタがはぁっとため息を付いた。

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