75.配信休止=礼嬢オリィは恩に報いるため、その一歩を踏み出す。
「――――貴女がイラストレーターで、我が社のタレントを担当したノーみりん先生である事は分かりました。しかし、突然押しかけて騒がれても困ります。事前に連絡して頂かないと」
ひたすらに向かっていこうとするノーみりん先生をどうにか止め、事務員の女性に事情を説明してようやく分かってもらえたものの、返ってきたのは至極当然のもっともな言葉だった。
「……連絡したらきちんと対応してくれましたか?ゆうぐれちゃんの現状、どうしてそうなったのかの経緯を教えてくれたんですか?」
「そ、それは…………」
「教えてくれるわけありませんよね。誰が聞いているとも分からない電話越しで、しかも、ただでさえ、今はその話題で荒れているんですから」
答えに詰まる事務員の女性に向かってさらに言い募るノーみりん先生。
その様は普段のノーみりん先生からは想像できないほど苛烈で、このままでは事務員の女性をどんどん追い詰めてしまいそうな勢いだった。
「っ……落ち着いてくださいノーみりん先生。ここで彼女を詰めても意味はないですよ」
「…………そう、だね。ごめんなさい、少し興奮してたみたいで……言葉が過ぎました」
止める私の言葉を受けて我に返ったのか、ノーみりん先生はハッとして落ち着きを取り戻し、ばつの悪そうな表情を浮かべて事務員の女性に頭を下げる。
「…………いえ、私も少し対応が雑でした。こちらこそ謝罪致します……しかし、その、大変申し訳ないのですが、当社のタレントに関しての質問には答え兼ねます」
「……それはどうしてか、理由を教えてもらっていいですか?」
本当に申し訳なさそうに答える事務員の女性に対してノーみりん先生が今度は落ち着いた様子で尋ねる。
「……先程、先生もおっしゃった通り、現状、漆黒ゆうぐれの休止の件で荒れています。電話だけでなく、ここまで直接くる人も少なくありません。そんな状況で当社のタレントを守るには誰が相手だろうと対応しない……それが会社としての決断です」
確かに今の時代、情報がどこから漏れるかなんて分からない。まして、漆黒ゆうぐれのスキャンダルともなればなおさらだ。
実際、何があったのか分からないけど、会社としてタレントを守る判断は正しいと思う。でも…………
「…………会社の決断というのは分かりました。でも、今のままでゆうぐれさん……いえ、白崎さんは大丈夫なんですか?」
ここまでずっとノーみりん先生に任せてきたけれど、これ以上は黙っていられない。もし、今も白崎さんが苦しんでいるとしたら今度は私が力になってあげたい。
きっと、それが彼女に救われた私の役目なのだから。
☆ ☆ ☆
75.配信休止をご覧くださり、誠にありがとうございます。
勢いのままに凸したものの、事務所としての対応で事情を聞けない中、踏み出した彼女達の今後が気になる、彼女達を推せるという方はチャンネル登録とグッドボタン……もとい、フォローと評価の方をよろしくお願いいたします……それでは彼女達から一言!
「……事務所としての対応は正しい……ですから責める事はできませんが……ままなりませんわね」
「……そうだね。タレントを守るという想いと姿勢は本物だけど、事務所としてできる事とできない事があるから……こればっかりは仕方ないと思うよ」
「……いまさらですが、その辺りの事情はきちんと分かっていましたのね。意外ですわ」
「意外って……オリィちゃんは私の事を何だと思ってるの?」
「…………それは……ノーコメントですわ」
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