第12話

教えてもらった通りの場所まで来たけど・・・・


「本当にここか?」


目の前の大きな建物を前に思わずそう呟いてしまった。


「いっぱしの市場の店主がこんな凄そうな店との繋がりを持ったているなんて・・・・。」


『のう主人よ。ここはどんな店なのじゃ?色々な香辛料の匂いがするようじゃが・・・・。』


匂いが気になったのかエルバサが念話で話しかけて来た。


『此処はあの店主に教えてもらった事だと、色々な調味料・・・・つまりは料理に必要不可欠な物が売っているんだよ。』


『なぬ?そうだったのか・・・・よしそれだったら主人よ、全部買い占めるのじゃ!』


『流石にそれは出来ないよ・・・・』


エルバサに呆れつつ早速店の中に入ってみた。






中の作りは冒険者ギルドと少し似ているように感じた。


「いらっしゃいませ!何をお探しですか?」


「ええと、砂糖を探しておりまして、市場の店主に此処にならあるだろうと教えてもらいまして・・・・。」


そう言いつつ、紹介状を受付の人に手渡した。


「これは・・・・成程。あの人の紹介でしたか。少し待ってて下さい。今、店主を呼んできます。」


そう言われて数分待っていると奥から受付の人と一緒に店主らしき人が出て来た。


「ようこそおいでくださいました!貴方が紹介状にあった人ですね?」


「はい、そうです。」


「私はベルンと申します。貴方は?」


「私はプレイヤーのレンです。」


「ほう!最近話題のプレイヤーさんでしたか!」


「話題?」


気になったのでベルンさんに質問してみた。


「そうなんですよ!先月あたりになりますでしょうか・・・・王都と呼ばれる場所から通達がありまして。それが異界からプレイヤーなるものが現れると。」


ふむ・・・・そんな事より此処が王都じゃないのか?


「え?ここが王都じゃないんですか?」


「違いますよ。確かに初見の方には王都に見えてしまうかも知れませんが、王城がありませんしその実ただの一つの街なんですよ。」


まぁ、一つの街といってもここは特に大きいですがね。と付け加えて話したのを聞いて、ここが特別なんだなと思うことにした。


「世間話はここまでにして、紹介状を拝見いたしました所砂糖が欲しいそうではないですか。」


「そうですね。料理に使いたいと思って・・・・。」


「料理・・・・ですか。」


ベルンさんは驚いたような顔をしてこちらを見た。


え?そんな驚くのか?


「みな砂糖は薬として使っております。それに砂糖は高級品でして、それを料理に使うとは・・・・。」


薬?何で砂糖が薬になるんだ?・・・・うーむ?分からん。


「まぁ、プレイヤーさんの事ですので何かあるのでしょうね。・・・・で、砂糖でしたね。丁度今日入荷したんですよ。汚れもなく、最高級と言っても差し支えないでしょう。いかがですか?1kg20万カルになりますが?」


1kg20万カルか・・・・高価だが買えないこともないし、それに最高級という言葉が本当なら結構安いんじゃないのか?少ないとエルバサになんか言われそうだし、3kgぐらい買ってみるか。


「それじゃあ、3kg買います!」


「ありがとうございます!それでは、今から持って参りますので少々お待ちください。」


そう言ってベルンさんは奥に砂糖を取りに行った。


奥に行ったのを見計らって受付の人が話しかけて来た。


「いやー、それにしてもよくあの人に紹介状を書いてもらえましたね。」


「あの人?何か偉い人なんですか?」


「ん?あぁプレイヤーさんなら知らないのも無理ないですよね。あの人は王都の貴族ですよ。」


「貴族!?」


「やっぱり驚かれますか・・・・。」


「な、何で商人の真似事を?」


「うーん・・・それが良く分からないんですよね。」


えぇ・・・・じゃあ一体何であんなことしてるんだ?







「お待たせいたしました!これが砂糖3kgになります。」


受付の台の上にドンッと壺に入った砂糖が出て来た。


「おぉー!綺麗な砂糖ですね!」


「そうでしょう!・・・・それでは早速お支払いに移りますか。」


「砂糖が3kgなので60万カルになります。」


払おうと思った時、エルバサから念話で話しかけて来た。


『主人よ、他の調味料は買わなくて良いのか?』


・・・・あぁ!確かに。いつまたここに来れるか分からないから、今のうちに買っといた方がいいかもな。


「あの、すみません!売ってる調味料とかって見せていただけますか?」


「えぇ大丈夫ですよ。そうですねでは・・・・こちらの棚の物から見せていきますね。」


「お願いします。」


棚を開けてもらうと中には色々な調味料がぎっしり詰められていた。


「ここにある物は色々な場所に旅をして手に入れた物なんですが・・・・どうにもこの地域の人には受けが悪いんですよ。」


そう言われて気になったのでこっそり鑑定してみることにした。


【ビネガー】⭐︎⭐︎

酒を発酵させた物。独特の味であまり好かれていない。


【料理酒】⭐︎⭐︎

料理に使えるように特化された酒。


【みりん】⭐︎⭐︎

料理に使えるように特化された酒。甘みが必要な時には料理酒よりみりんが良い。


全部欲しい調味料じゃないか。


「あの、すみません。この三つ幾らですか?」


「そうですなぁ。一つ500カルと言った所でしょうか。」


500カルか・・・・どれも10個ずつあるから15000カルかな。安いし、全部買いだな。


「それでしたら、全部買いたいのですが・・・・。」


「ぜ、全部ですか?それですと・・・・15000カルになりますが・・・・よろしいですか?」


「はい、大丈夫です。」


「それでは砂糖3kgと合わせまして、合計61万5000カルになります。」


代金を支払い、諸々の調味料を受け取りアイテムボックスの中に入れた。


「それではまたのお越しをお待ちしております。」


「ええ、こちらこそ調味料が無くなったら買いにきます。」


そう言ってお店を出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る