やっぱり先輩はかっこいい
周りを見れば、一つ上の先輩ばかり。それぞれ、どこかへ向かっていたり、並んで話していたりしている。
昼休みの、三年フロアの廊下。
「それにしても、レンくんすごいね~。まさか一日で解決しちゃうとは~」
その廊下を、数日ぶりに
「
「前にもそんなこと言ってたね~」
生徒会の一件があった次の日の朝、相変わらず見崎はいつも通りの場所にいて、一緒に登校した。
そこで話題になるのは、やはり
「ちなみに~、
「なぜここで蒼が?」
「まあまあ~、いいからさ~」
「……連絡くれなかったせいでご飯が冷めたって、すごい怒られたな」
「そっか~。アオちゃん、怒ったのか~」
「……ご飯が冷めたからだぞ?」
「ふふふ。いい逃げ方だね~」
「逃げ方って……お前なあ」
見崎はやはり、蒼に関しては、俺以上にいろいろと感じることがあるのだろう。
なにせ、見崎とは昔……
って、今思い出しても仕方のないことだ。
「ねえレンく~ん。生徒会室は今、どうなってると思う~?」
「それを今から確認しに行くんだろ?」
あの日から何日か経って、そろそろ生徒会もいい感じになっているだろう。それを確かなものにしたかったというわけだ。
「だから~、レンくんの予想が聞きたいな~ってね~」
「そうだな……佐々木先輩と矢鋭咲先輩のおかげで、みんな仲良く作業中ってとこじゃないか?それか、みんな仲良くお食事中かもな」
だから、おそらく今日は一緒にお昼を食べることはできないだろう。
「へえ~、レンくんはやっぱりレンくんだね~」
「そういう見崎は、どうなってると思うんだ?」
「ん~っと~、半分はレンくんと同じなんだけど~、多分二人だけは~……」
「二人って……矢鋭咲先輩と佐々木先輩のことか?」
「そうそう~」
「その二人がどうしたっていうんだ?」
「ふふふ。後は見てからのお楽しみかな~」
見崎は生徒会室のドアノブに手をかけ、俺に見せびらかすように扉を開ける。
そして、その瞬間に聞こえるのが……
「まったく……佐々木は全然だめだな。一からやり直しだ」
「んだと?これで三回目だぞ?いい加減にしろよ矢鋭咲……」
「ほう?いい度胸だな。佐々木が私を殴れるというのなら、その喧嘩を買ってやらないことも無いぞ?」
「くそニヤニヤしがってこの野郎……絶対いつか殴ってやらぁ……」
そんな悪態をつきつつ、三回目のやり直しをくらった書類をしっかり受け取り、席へ戻ろうとする佐々木先輩。
そうすると、ドアの前にたたずむ俺たちに目が合ってしいまい。
「お、後輩二人じゃねーか」
「なに!
「矢鋭咲ってほんとに二人のこと好きなのな……」
「う、うるさぞ佐々木!」
少し呆れる佐々木先輩に、少し慌てる矢鋭咲先輩。そして、そんな様子を何とも言えない顔で見ている同級生の生徒会役員たち。
「矢鋭咲先輩、生徒会はうまくいっているみたいでよかったです」
「ああ。それもこれも祐川のおかげだ。しかし、佐々木の仕事の雑さにはため息が出る」
昼休みが始まってから約十分で三回のやり直しをくらうのだから、相当早く終わらせているのだろう。
つまり雑ということか。
「ふっざけんな!矢鋭咲が細かすぎるだけだろーが!」
「なにを言う。佐々木の作ったまま提出した日には、この学校は崩壊するだろうな」
「そんなんわかんねーだろーが」
「もう三年目だぞ?分からないわけがないだろう」
「俺だって三年目だがな!」
「本当に三年目なのか疑うレベルだぞ」
「矢鋭咲てめー……」
この二人、会話が終わる気がしない……
「あ、あの、なんか先輩たち忙しそうなんで、今日はこのへんで戻ります」
「じゃあ私も戻るかな~」
俺と見崎の言葉が、先輩たちに聞こえたか聞こえてないのかわからないが、とりあえず生徒会室をあとにする。
「生徒会、うまくいったみたいでよかったよな」
「そうだね~。でも~、レオちゃんと話せる機会は減りそうだね~」
「それは仕方ないだろ」
矢鋭咲先輩が生徒会の仕事をする時間は減るだろう。
しかし、俺たちと一緒にいた時間の多くは、おそらく生徒会の人たちと一緒にいることになると思う。特に佐々木先輩と。
「二人とも!ちょっと待ってくれ!」
「矢鋭咲先輩?」
後ろから、小走りで駆け寄ってくる。
「今日はすまなかった。ちゃんと歓迎してやれなくて……」
「そんな、歓迎なんて大丈夫ですよ」
「レオちゃん、ササキくんといい感じだったね~」
「それはそうなんだが……」
矢鋭咲先輩は次の言葉まで、少しためる。
でも、前のようにもじもじはせず。
それはもう、カッコいい先輩のままで。
「これからも、私や生徒会のもとに、よかったら遊びに来てくれ。その時は必ず歓迎する。
生徒会に、お前たちを悪く思うような人はいないからな」
「……」
ちょっと、驚きだった。
まさか、矢鋭咲先輩の方からそう言ってくれるとは思わなかった。
いや、あの矢鋭咲先輩なのだから、当然と言えば当然だが。
「ふふふ。もちろんだよ~。これからもよろしくね~」
「俺も、迷惑にならないくらいに遊びに行きます」
「二人がそう言ってくれてよかった。では、私はこれで……」
「あ~、レオちゃんちょっと待って~。最後に一つ聞いていい~?」
「ああ。どうした?」
「レオちゃんって~、ぶっちゃけササキくんのこと好きなの~?」
「見崎お前……」
こいついきなりなんてこと聞いてんだよ……ちょっと呆れたぞ。
でも矢鋭咲先輩は、そんな質問に対してもいたって普通に答える。
「友達としては、とてもいい奴だと思っている。生徒会長から言わせてもらえば、もっと丁寧に仕事をして欲しいものだがな」
「一人の女の子としては~?」
「そうだな……三十を超えて二人とも独身だったら、結婚したいとは思う。っといったところだろうか」
「……ふふふ。な~んか、いい関係だね~」
「それは私も思っているぞ」
「……私ができなかったやつだよ~、それ……」
「宮下?」
「あ~、そ~いえば~、レンくんのことはどう~?」
見崎は急にうつむいたかと思えば、急に陽気な感じで俺を前に出す。
「いや、俺については別に……」
どうせさっきみたいに、普通に答えて……
っと思っていたのだが、矢鋭咲先輩の顔が赤くなっていくような……
「……そ、そそそんなことどうでもいいだろ!いいから早く行け!」
そう吐き捨てて、生徒会室へダッシュしてしまう。
「ふふふ。レオちゃんったら、可愛いね~」
「見崎って結構えげつないのな……」
絶対いろいろ知ったうえでこの質問しただろ見崎は……
「え~?レンくんの感想はそれだけ~?」
「……うるせえよ」
「ふふふ。レンくん、ちょっと熱っぽいね~」
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