次回、兄妹で〇〇〇
俺は、特に変わったことも無く、普通に過ごしていた。
……いや、普通ではないか。現状、かなり異常事態だ。
「
もう見慣れた蒼のエプロン姿。
二つのお皿に盛られた焼きそばを手に、キッチンから出てくる。相も変わらず庶民的で、とりあえず食べたくなる匂いだ。
「蓮、どうかしたの?」
「俺……今日、遊んでただけだよな」
「まあ、休日だしいいんじゃない?」
「それなのに、朝ご飯があって、洗濯された服があって、キレイな部屋があって、昼ご飯まであるなんてさ……」
「えっと、つまり?」
「異常事態だよこれは!人として、生物として、俺が死んでるよ!」
もちろんこれは、今日に限った話ではない。蒼と同棲し始めてから毎日だ。何もせずとも、ただ食っちゃ寝しているだけで快適な生活ができてしまう。
どう考えても、異常事態だろう。
「蓮が人として死んでるのは元からじゃ……」
「いや今はそういう話じゃなくて」
「あー、うん。とりあえず食べない?」
「……おう」
できたての焼きそばを前に、とりあえず手を合わせて。
「「いただきます」」
野菜と肉と麺をつかみ、ズズズっと一口。
「ほんと、蒼の料理は毎回うまいな」
「……ありがと」
ボソっとした返答。いつも思うが、こういう時の蒼は、ちょっとだけ蒼らしくないような気もする……って、我ながら曖昧な言い方だな。
「それで、さっきの続きだが、こんなに美味しい料理がなにもせず与えられるなんて異常事態だろ?」
「ええっとさ……そういうことを平気で言っちゃうほうが、異常事態だと思うけど……」
「美味しいものを美味しいというのは当然だろ?」
「あの……だから……さ…………はぁー。まあいいや。それで?」
と、こんな感じに、ため息一つで真顔に戻るまでがテンプレだったりする。
「つまりな?俺も何か家事をしようかと思ったってことよ」
「でもさ、蓮にできるの?」
「う……」
結局、そこが問題なのだ。
今になって、去年俺がどうやって生活していたか疑問に思えるほど、家事に自信がない。
「別に無理してやらなくても、私は全然大丈夫だよ」
「まあ、それはとてもありがたいのだが……」
「あ、じゃあさ、買い物に付き添ってよ。荷物重くて大変なんだよね」
「……おお!任せとけ!」
その手があったか。荷物持ちなら問題なくできるし、蒼の手助けにもなるだろう。
……いや、待てよ?
「買ってくるものさえ教えてくれれば、俺一人で買い物に行ってもいいけど?」
「え?い、いやだって、蓮が何買ってくるかわかんないし、私もこの後することないし、料理する人にしかわからないこともあるし!」
「お、おう……やけに早口だな……」
「とにかく私も行くから!」
机の空いているところに手をついて、身を乗り出して……ちょ、近い……
「わ、わかったから、落ち着いて……」
「…………ふぅー。ごめん。ちょっと取り乱した」
でもやっぱり、ため息一つで真顔に戻るのが蒼で。
「それで、どうして二人で行くことこだわるんだ?さすがの俺でも、言われたものをそのまま買ってくるぐらいはできるぞ?」
「やっぱり、自分で料理するものは自分で買いたいからさ」
「そういうもんなのか?」
「そういうもんだよ」
「……そうか」
なんとも腑に落ちないが、まあいいか。
「それじゃ、五時に出発ってことでいい?」
「もちろんいいけど……蒼はどこか行くのか?」
「食べ終わって、お皿洗いしてから、ちょっとだけね」
「そっか。わかった。じゃあ、五時に家集合ってことで」
「うん」
よし、ちょっとしたこととはいえ、これで蒼の手伝いができる。
「あれ?いや、待てよ……?」
「蓮?」
「ああ、いや、なんでもないんだけど……」
出会って一週間、尚且つ同棲中の男女が、二人っきりでお買い物に行くって……それってもはや……
デートなのでは?
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