2-1 ジャーナリスト再び


 十月二週目の週末。土曜日。


 日々の学業と文化祭へ向けての準備などに追われている中、やはり休日というのは心身を癒すオアシスになってくれる。


 気温もかなり過ごしやすく変化しており、天気が良ければリフレッシュも兼ねて散歩に出かけてもいいかもなぁ、なんて思ってしまう。


 そんな日に、ふと朝早く目覚めてしまった大福は、二度寝を決める気分にもならず、とりあえず『早起きは三文の徳』という言葉を信用してみよう、と思い、そのまま着替えを済ませてリビングへと向かった。


「げ」

「おいおい、朝一で『げ』とはご挨拶だな」


 そこにいたのは、本当に珍しく早起きしていた青葉であった。


 平日であれば大福よりも遅く起きてきて、余裕でリモート授業を受ける構えを見せるのだが、休日の今日は、どうやらとても行動が早い。


「まだ七時だぞ。何してんだ、こんな早くに」

「それはこっちのセリフよ。大福ならまだ惰眠だみんをむさぼってる時間でしょ」


「俺をグータラみたいに言うんじゃない。俺だってたまには朝の空気を吸って、モーニングコーヒーでもたしなもうかという気分にもなる」

「コーヒー飲まないくせに……」


 大福の発言の痛いところを的確に突いてくる青葉。

 その言葉の刃を浴びながらも、大福は目敏めざとく青葉の恰好を見る。


「制服……って事は、学校に行くのか?」

「アンタには関係ないでしょ」


「おいおい青葉、今日は休日だぞ☆」

「曜日感覚なくなってるわけじゃないっての! 用がないなら向こう行ってよ」


「真澄さんは?」

「知らない。また仕事じゃない?」


 居座り続ける大福を待つのを嫌ったか、青葉はぶっきらぼうに返答しつつ、そのまま廊下を通って外へ出て行ってしまった。


 その様子を見送り、大福はコップに牛乳を注ぎつつ、目を眇めた。


「人目をはばかるように、足早に出ていく年頃の少女……これは、恋の予感!」


 自分もつい最近恋人が出来たばかりの大福は、恋愛脳になっているのであった!

 そして厄介なことに、若干シスコンの気もある。


「これは妹分のお相手を確かめねばなりませんな!」


 下世話なことこの上ない話であるのだが、本人は正義を執行していると思い込んでいる辺り、もう手に負えない。


 そんな勘違いしたままの大福は、手早く着替えを済ませ、戸棚にあった菓子パンをひっつかんでカバンに入れると、すぐに家を飛び出していった。


****

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る