第42話 無理難題

「うぇぇぇぇぇええん!」


なんだこれ、頼りないも何もどうしてその言葉が出てきたん?


「なんでぇもぉ、いっでいいんだよぉぉ!」


どうしようかな、思いっきり抱きしめて頭撫でたりすれば泣き止むかな?

……これあれだ、子供向けのやつだ。まぁ見た目だけ幼いとしても母親にやることじゃないな。1番簡単なのはやっぱりあれだね、要望を叶えることだね。


「えっと、じゃあ……」


何も思いつかん、取り敢えず適当に頼みごとを……まぁ無理難題でもいいか!


「一人暮らし、したいかな……

みんなと暫く距離を置きたい、かな」

「わ、わがった!」


ん?


「いい感じのマンション買ってくる」


んん????


「ちょっと待って」

「ん?どうしたの?」


何普通に泣き止んで普通に上着とか用意し始めているんですかねぇ、不思議ですねぇ。

マンションを買ってくるとか言ってましたけど、冗談ですよね?女とはいえ流石に高校生にマンションは与えないよね?


「やっぱり、高校を休学したい」

「任せて、連絡してくる」


ガシッ


ちょい待て待て、なんで娘に対してここまでイエスマンなんだ。

小さい頃の記憶だと、もっとしっかり者だったじゃん、あのフワフワお菓子買ってくれなかったの覚えてるからね?根に持ってるよ?※持ちすぎです


「どうしたの?」

「やっぱり、辞める……

こんなところで勿体無いから、もう少し考える時間が欲しい」

「わかった!

取り敢えず学校に連絡してから不動産屋行ってくるね!」


何もわかってないなぁ、クソがぁ。

※予想外の展開でちょっと荒れております


パタパタ バタン!


お母さんが家を出てしまったことを確認、私は机の上で肘をつき指を交差させる司令官ポーズになる。


「さて、私の半分冗談からマンションの購入と一人暮らしと学校の休学が決まりましたがどんなお気持ちでしょうか?

なんでぇ??」


自問自答、お母さんとの話しが始まってから、あまりの急展開と迷惑かけまくりの罪悪感によって私の思考は停止しようとしている。

もうどうにでもなれー、と内なる私(本能的なやつ)が匙を投げた。


残っているのは私(理性的なやつ)


だがそんな私も、もうどうしようないのでは?と諦めムードである。

取り敢えず冗談だったとしても言ってしまった事は仕方ない、マンションで一人暮らしになり高校は休学するとなると……


「バイト探しとくか……」


何がいいかな。

定番のコンビニとかファミレス?でも人と関わるのあまり得意じゃないし、まだ静かそうな本屋とか良さそうだよね。

※現実逃避中


「ん?」


カフェかぁ。

給料は周辺の求人に比べてかなり少ないけど個人経営で賄いあり、サイトに載ってる店内の写真は静かそうでなんかいい感じ。


応募だけしてみようかな。


ガチャッ


誰か帰ってきた。

流石に早すぎるからお母さんじゃないな、あの2人かぁ……


「結構うまく行ったね」

「ほんと、正直言って怪しいレベルだった」

「浅知恵の高校生と中学生がお話ししただけで500落とすとは思わなかったし、姉さんの言う通り怪しい」


いや怖っ、詳細わからんけど節々のワードが不穏すぎるでしょ、マジでなんの話?


「「えっ?」」

「おかえり」


ヤバいことをやったんじゃないかと戦々恐々としながらもリビングに入ってきた2人におかえりと伝える。

眼を丸くしてホケっとしてる2人が少し可愛く見えた。


「帰ってきてたの?」

「うん、お母さんと少し話したんだ」

「ねぇ畔華、あれ持ってきて」

「了解」


あれとはなんだろう。


「ねぇ栞華、今までごめんなさい」

「?」

「貴方の気持ちを私達は理解していなかった。私達のことを優しい貴方は許してくれるだろうけど私達はもう戻れない」


んん?

言葉全体が不穏だぁぁぁぁあ!


「持ってきたよー!」

「ありがとう畔華」


不穏な言葉は取り敢えず横に置いて、畔華が持ってきたのは両手サイズのラッピングされた箱。


「私達2人からのプレゼント、今すぐに着けて欲しい」

「似合うと思って選んだんだよ!」


渡されたプレゼントを丁寧に開けていく、綺麗に包装された箱を開けるのはいつぶりだろうか。

リボンや包装紙をまとめてついに箱を開ける、中にはチョーカーが入っていた。一瞬だけ首輪かと勘違い。


「ゴツい……」


うむ、どう見ても首輪!

チョーカーって紐見たいなタイプもあった筈だけど、2人がプレゼントしてくれたのはシンプルだけど装飾がそれなりにある首輪っぽいゴツいやつ。

しかも中々付けにくいタイプと見た。


「付けてあげるね」

「うん……」


付けたまま外に出るのは抵抗感じる、でもまぁせっかくのプレゼントだし家の中でぐらいなら付けようかなと。


カチャカチャ


髪を上げて付けやすいようにすると直ぐに付けられる。


カチッ


ハマる音が聞こえて、畔華が持ってる手鏡を見る。


「……!」


あれ?意外と似合ってる?

自画自賛みたくなってるけど、本当に似合ってるんだって。なんか凄くね?


「ずーっと付けてて、私達の栞華……」



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母・詩織のためにマンション買ってもいい?

父・いいぞ



次回『許せない』

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