第15話 襲撃

 家の近くまで来ていた雪は、先ほどから後ろを付けられてる気配を感じていた。

 初めはたまたま道が同じだったのだろうと気にしてなかったが、この辺りまでくると、近所の人なら大体わかる。

 それに、先ほどから気配を隠そうともしなくなっている。

 であれば、自ずと正体は絞られてくる。

(暗殺者?それにしては気配を晒しすぎだよね、雇われの襲撃者かな。)

 大体の気配で実力者であることはわかる。

(この先で迎え撃とうか。)

 そう決めて歩き始める。

 しばらく歩いて、家から程よい距離にある木陰にお土産等を置いて振り向く。


「さて、どちら様か知らないが家までついてこられると迷惑なんだ。さっさと退いてくれないかな。」


 雪の呼びかける。

 しばらくして、暗闇から一人出てくる。


「ちっ、バレてるのか。」


「それだけ気配を出してたらまるわかりだよ。」


 襲撃者であろう者の顔はフードに隠れて見えない。

(魔力を感じない?)

 ということは魔法使いではなさそうだ。


「それもそうだな。」


 襲撃者の声色から男だろう。

 こちらの出方を窺っているようだ。


 そんな襲撃者について気になったのは、手だ。

 その手には大きな爪のガントレットがはめられている。

(爪は魔装具だな・・・爪の魔装士か?)

 爪の魔装士といえば、魔装国に代表とされる九人の魔装士の一人だったはずだ。

(思ったより大物だ、ってか本物なら公になれば戦争でしょ。)

 心の中で悪態をつきながら考える。

(やるしかないか。)


本制作ブックメイカー!」


 虚空から本が空中に出てくる。

 身構える中、雪は頭の中で魔槍との会話を思い出していた。


 ―――

「雪、今どんな魔法を使える?」


「えっと、基本魔法、焱髄えんずい夜刻やこくと他にいくつか使えるよ。あ、あと今回で槍使いが追加されたかな。」


 夜刻の魔法はかなり難しく、まだあまり扱えない為メインに槍と基本魔法、他はサブといったところだ。


「忘れるな雪、ピンチの時は死ぬギリギリまで諦めんな、チャンスに変わるときもある。それとどんな魔法も使い方次第だ、覚えておけ。よく考えて、足掻け。」


 ―――

 意識が今に戻る。

 魔力を練り上げ、自身は武具作成の魔法で槍を作る。

 ふぅ、と大きく息をつく。

 相手の強さを考えると不安しかないが、やらないとノエルにも危険が及ぶかもしれない。

 今ある幸せを奪わせない。

 そう思うと一歩も退くことはできない。

 覚悟を決めて槍を構える。


 二人の戦闘はゆっくりと、静かに始まった。



 ―――――――――――――――――――――――――――

 補足と歴史:


 爪の魔装士、手に大きなガントレットを嵌めた魔装士。

 特徴的なその爪は所有者によって形が変わると言われ、岩を砕くような破壊力と、剣でも傷一つ付かない硬さを持っている。

 魔装士の大半が、魔法を持っていない。

 それゆえ過去、魔導国との戦争でかなり不利となっていた。

 しかし、戦争中に魔力をカートリッジと呼ばれる入れ物に移す技術を発明した。

 それを武器に入れる事で疑似的に魔法を使用する術を得た。

 これによって戦況は一変し、一時は魔導国を押し返していた。

 これが魔装具の始まりである。

 以後戦闘で扱うものを魔装士、国の名を魔装国へと変えた。

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