第14話 帰宅途中
「はい、着いたわよ。」
疾風が背中の雪を降ろす。
「ありがとうございました・・・。」
嫌そうにしながら降りる雪。
「あら、もっと乗っていたかった?」
冗談めかして言う疾風。
「結構です。」
「あらそう。」
少し残念そうな疾風に頭を悩ませる雪。
そのまま疾風と共に衛兵に近づき中に入れてもらう。
夜でもギルドの街はにぎわっている。
光の魔導具が街灯に使われており、夜でも明るい。
また、様々な国の物が集まるため、昼夜で店も品物も変わることが多い。
その為、夜でもたくさんの人が往来する。
「じゃあ私は拠点によって行くから、雪は先に帰りな。ノエルが心配して待っているだろうからさ。」
「ありがとうございます、お言葉に甘えさせてもらいますね。」
「はいよ!お疲れ様ぁ。」
そのまますぐに疾風は居なくなった。
「めちゃ早い・・・体力凄いな。」
そう呟いて自分も帰路に就く。
途中錬金国から来た行商人からお土産を買った。
どーなっつという真ん中に穴の開いた丸いパンに、ちょこれーとがかかったものだ。
ノエルは甘いものが好きだから、きっと喜ぶはず。
そう思い持って帰る。
―――
ギルドの拠点、その執務室で秩序と疾風、雷帝、そしてもう一人男が居た。
「疾風、戻りました。」
「おう、ご苦労様。どうだった遺跡は?」
秩序が成果を聞いてくる。
疾風は今回同行した遺跡の話、太古から存在していた事や白い鯨の事、雪の戦いの話等を細かく報告した。
「ふーむ、遺跡が見つかったタイミングと言い、やっぱりきな臭いな。」
「きな臭い?」
「いや、こっちの話だ、それはまた別の時に話そう。」
なんだかはぐらかされた気がする、と思いながらも魔槍と王狼が残った事を加えて報告する。
「大体わかった、ありがとう。」
秩序がお礼を言って、横の酒を飲んでいる男に聞く。
「豪傑、どう思う?」
豪傑と呼ばれた男は酒を飲みながら、皆に言い聞かせるように言う。
「んー、強者ではないよなぁ。昼間の件もあるし、裏でコソコソと嗅ぎまわって動いている連中がいるな。何が目的かはわからないが、気を付けることだな。」
「え!?それだけ?何かもっとないの?飲んだくれおじさん。」
雷帝が信じられないって顔で見る。
「えぇ、当たりきつくない、雷帝ちゃん・・・」
「そりゃそうでしょ、この前私のウィスキー一本飲んだじゃない、まだ覚えてんのよ、こちとら。」
「はぁ、勘弁してくれ・・・」
実力者の中でも上澄みと呼ばれる人たちが、お酒で揉めてるのを見てため息をつく秩序。
疾風にもその気持ちは理解できるが
(それでも世界有数の上澄みなのよね・・・)
「あっ、そういえば」
雪を先に帰したことも報告した。
「あぁ、そうだったな、俺たちはそれを見に来たんだ。」
そう言って、水晶玉のようなものを取り出す。
確か遠くの映像を盗み見ることのできる魔導具だったはず。
「私も理由知らなかったけど、それはちょっと・・・。」
「え、夫婦団欒を見るのは流石に趣味悪すぎない?」
ドン引きする雷帝と疾風に、違う違うと反論する秩序。
「多分だけど・・・・」
理由を説明する秩序にまたしてもドン引きする雷帝と疾風だった。
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