第11話 撃破
鯨が魚を纏い突っ込んでくる。
それに対して、魔槍はしっかりと構えて待つ。
「第二開放、
周りの魚がバラバラに刻まれる。
禍々しく変化した槍を振るう。
鯨が見たのはたったの一振りだけだった。
それより先の景色を鯨は見ることはなかった。
「雪、目に焼き付けたか、オレ様の強さを。」
振り向きながら魔槍は言う。
決着は一瞬だった。
「なーにが、オレ様の強さを、よ!ただ雪の美味しいところを取っただけじゃない。」
不貞腐れた疾風が駆け寄ってくる。
「っていうか、直撃したらって言ってたでしょ!?手出してるじゃない!」
「ハァ? オレはちゃんと直撃したらって言ったぞ。現に雪は尾に攻撃をしっかり直撃させたろ。」
「えっ、そっち!?攻撃をあてられたらじゃなくて・・・?」
「当たり前だろ、あんなん雪が当たるかっつーの。」
わいわいと喧嘩を始める二人を見ながら
「お見事でした、雪。」
と王狼が告げる。
「魔槍の言う通り、貴方の勝ちですね。」
言われた側は微妙な心境だ。
「勝ったって言っていいか微妙ですけど」
「いいえ、あのまま戦っていれば、間違いなく勝っていましたよ。」
助けてもらったしという前に王狼に遮られて伝えられた。
「雪。」
魔槍に呼ばれる。
「槍が答えてくれた時の感覚を忘れんな。今後お前が強く戻っていく上できっと大切だからよ。」
「わかったよ、魔槍ありがとう。」
魔槍からは大切なことをいくつも教えてもらっている。
いつも口は悪いが。
「にしても、途中までどんどん強くなっていったな。堕神までは流石に行かなかったが、それでも結構な強さになってたな。あの鯨の魔法か?」
「うーん、鯨自身の魔法は空気系な気がするけど、どうなのかしら。」
「私も初めて見る魔法でしたよ、あれだけの時間をかけるだけの価値ある魔法ですが、なかなか実用的ではないかもしれませんね。」
更なる調査が必要ですね、と王狼が締めくくる。
その後の話し合いで、雪と疾風は報告の為、一足先に戻ることとなった。
「じゃあ、私と雪は戻るわ。何かあったら連絡を送って頂戴。」
「えぇ、わかりました。では私達は調査を続けます。」
そう言って日の沈みきる前に出発する雪と疾風はギルドへ、王狼と魔槍、調査団員は遺跡へと残る事となった。
「さて、じゃあ行くわよ。」
そういって背中を差し出す疾風。
理解ができない雪。
「えっ?」
「えっ。」
「どうして背中を差し出すんですか。」
なんとなく察しながらも聞いてみる雪。
「どうしてって、おんぶして帰るのよ。」
何当たり前の事聞いているのよって顔をする疾風。
もちろん全然当たり前じゃないし、聞いてもいない。
「い、嫌です。恥ずかしいじゃないですか。」
「でもこの方が早いもの。」
そこで一瞬考えて「あっ」と何かを思いつく疾風。
「お姫様抱っこの方が良いってこと・・・?」
「違います!!!」
雪の絶叫が一帯にこだました。
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