第26話 契約の陣
床に叩きつけられた太郎の頭はそのまま潰され、あたりが血の海になる。
「
ヘイルムの顔には怒りの表情が浮かんでいた。
幹部だけ集まりになんの力も持たない雑魚が紛れていたからだ。
「カッカッカッ。そいつはカルロさんの側でずっとうろちょろしてたからねぇ。下の連中が忖度して幹部に入れたんだ。不要ならあんたたちが処分すると思ったから放置してたんだよ。どうせすぐ死ぬと思ったしね」
「あーあー。あんまりここ汚さないでくださいよー。片付け面倒なんだからー」
「あんたが片付けるわけじゃないだろ。わしが片付けるんだぞヘイルムさんや。血を操るをは面倒なんだ。場所を考えておくれよ」
カラ婆はヘイルムの怒りを飄々と受けながらながら、太郎がここにいた理由を話し、錦は面倒くさそうな表情をしながらヘイルムに苦言を呈する。
突然のことに驚きはあったが、目の前で人が一人殺されたことに関して、彼らは一切気にする様子はなかった。
空想侵略以前ならまだしも今の時代、人は簡単に死ぬ。
寓話獣との戦いで命を落とす者もいれば病気で死ぬ者、グループ同士の抗争て死ぬ者も多い。
彼らもまたそう言った人が死んでいく場面を何度も見てきたため、一人が死んだからと取り乱す人など居なかった。
「問題ない。俺が処理をする」
そう言うとヘイルムは太郎だったもの、今の頭があった場所から血がドバドバと溢れ出し床を赤く染めている、その下にサークル状の陣が展開される。
真っ赤な線で描かれており、太郎の体を覆うほどの大きさのサークルの中は幾何学的な紋様が広がっていた。
そして、太郎の体が燃え出した。
体だけではない、そこから溢れ出た血も一緒に燃えた。
だが、近くにいたヘイルムは熱がるそぶりを見せず、カラ婆たちも一切熱気が届かない。
そして炎が消えるとまるでそこには何もなかったと思えるほど太郎の体は残っておらず、不自然なほど床は燃えていなかった。
「ほえー。久しぶりに見たよ陣で
「珍しいな」
「今の知ってるのかカラ婆さん、徹さん」
カラ婆と徹は知っているようで珍しいものを見たと言った様子だったが、三水と錦は初めて見た
「まだ
「ここではそうなのか」
「なんだい、陣がまだ使われているところもあるのかい」
「陣が主流のところもあるな。……本題に戻るぞ。俺たち
ヘイルムの言葉に少し落ち着いていた雰囲気が一気に引き締まった。
「まず先にお前たちには
「
カラ婆たちは
そのため契約という曖昧なものは
「陣を使えば可能だ。契約を受けた者がその内容を破ると陣を作った者の
「ねー。その契約って絶対?」
「ああ」
「ふーん」
次の瞬間、ヘイルムの体が動かなくなっていた。
よく見るとキラキラした細長い物体―糸が体に巻きついているのが分かる。
錦の
さっきまで机に体を投げ出しながら静かに聞いていた錦は上体を少し上げていた。
その目には強い意志が宿っている。
「俺は自分がぐーうたらできる環境なら誰が上でもいいんだよー。だからあんたらの戦いにもいーっさい参加しなかった。でもー、契約で俺の自由を侵害しようとするならなー、お前は俺の敵だぞー」
「俺に勝てるとでも」
「まっさかー。あんたが俺より強いのは理解してるよー。でもねー、これが俺の想いなんだよー」
糸で体が動かない状態。
どう見ても王手な状態であるが、ヘイルムは一切動揺することはか錦に対して勝気な発言をした。
錦もここまでしてもヘイルムに勝てるとは思っていないのか両手を上げながら降参のポーズをとるが、それでも錦は強い意志を宿した目をしていた。
「分かっている。俺も
「……ならいーよー」
「他の者は異議はないか?」
「詳しい契約内容を聞きたい」
徹が軽く手を挙げて質問した。
「
「もうある程度出回っているぞ」
「少しだけわざと情報をばら撒いているんだ。迂闊に手出ししてこないようにな。まあ…」
ヘイルムは憎たらしげに太郎が死んだ場所を眺めていた。
「こいつのせいでここでは盛大に広まりやがったが。そのおかげで
ヘイルムは無能が行った行動のせいでヒートアップしていく感情を一旦落ち着かせるように深呼吸をして切り替える。
「ふぅ。……それで、ほかに問題はないか」
「ないな」
「なーい」
「問題ない」
「ないぞ」
「じゃあ始めるぞ」
他に異議が出なかったためヘイルムは早速契約を行うために陣を4つ出し、それぞれの目の前へと移動させた。
陣には先ほどヘイルムが言っていた契約内容が書かれていた。
「同意するならその陣に自分の
カラ婆たちは言われた通りに陣に
すると赤色だった陣が白く変化していき、完全に白くなるとそれぞれの体の中へと入っていった。
「意外とすぐにに終わったな」
「契約も終わったことだし、俺たちの今後の計画について教える」
陣が入っていった場所を見ていたカラ婆たちはヘイルムへと顔を向けた。
「俺たちは新宿を支配する」
「…まじか」
「なんでそんな事をするんだ?」
三水は驚いていたが徹は新宿を支配する理由を聞いた。
実は伊神がリーダーだった頃の旧イデアの隣人の時も内界を攻め落とし支配すると伊神は宣言していた。
だが、とある理由からすぐにはできなかったため、戦力を蓄えていたのだ。
その蓄えていた戦力も
「ここの近くに
「別に外界を支配するだけでも良くないのかい?」
「……ここは歪だ。選民するなら徹底的にすればよかった。全てが中途半端なんだよ。全くもって何がしたいんだこの都市の
当時の政治家上層部はできる限り元の生活のを維持したい一心でなけなしのお金を費やした。
しかし、国民を見捨てた訳じゃないという世間体を気にして外界にも中途半端に支援した。
その後も一度人を選別したからなのか寓話獣の脅威があるからと超能力者を優遇し、さらに超能力者の中でもアタリとハズレをつくり差別していった。
だと思えば外界での戦力の増大を危惧し、外界で超能力に目覚めたものを内界民として認めるという法律を新たに作り超能力者に内界民になるように強制し、それに反発した外界民が内界と争った過去がある。
「なのになぜお前たちは内界を攻めない。外界最強と言われこの都市を支配すると豪語していた
当時にはもう
しかし、
そして、その隙をつくようにして寓話獣の大群が新宿に攻めてきたことがあり、このままだと都市が壊滅するということでなあなあで争いが終わったのだ。
しかし、この争いで外界と内界の軋轢はさらに広がった。
内界と外界にある緩衝地帯はその名残である。
「外界でも会得している人はまあまあいるが、銃火器が効かないってレベルだと数人だな。俺たちの中でも徹さんくらいだ」
対寓話獣だと銃火器なんて豆鉄砲となんら変わらないが、対人に対しては
剛身化を会得していても致命傷にならないだけで痛いという場合もあり、銃火器が完全に効かないとなるとその人数は外界であってもかなり少ない。
「それでー?俺たちは何をすればいいのー」
「お前たちには新宿の外界にいる、イデアの隣人を除いた大グループの烏の饗祭と招き猫、そして内界で唯一夢創者だけで作られた部隊『夢幻の杜』を部下を率いて襲え」
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