第2話 束の間の休息
お月様が3回ほど通り過ぎ、太陽が薄っすらと顔を覗かせた時「よく持たせたわね!交代のお時間ですよ!」
どうやら、チーム交代の時間が来たようだ
もう、三日も経ったのか、前線に居ると時間が経つのが早い、周りを見回してみると私以外に二本足で立っているものは、
誰も居なかった。
私以外は、みんな、四つん這いになっているか、座り込んで意識が途切れているようだ、その意識が飛びかけの状態でも患者にしっかりと回復術式を途絶えないようにしている強者もいるようだ、その光景が私には誇らしく感じ取れた。
素晴らしいチームだと胸を張って言える、皆がみんな為すべき事をやっている立派なことだ。
ここには足手まといなんて居ない。
静かに手早く、交代の手続きを済ませ、意識も絶え絶えなチームメンバー一人一人を眠りの術式で意識を刈り取っていく。
安らかに眠っているチーム達を最前線の街へと繋がっている転移術式を展開している陣に放り込んでいく
何時もの様に帰還ポイントでは熟睡して出てくるメンバーを介護してくれるチームが居てるはずなので、転移先での怪我なんて、気にせず放り込んでいく。
ついでに、荷物もポイポイっと放り込んでいく、どうせ、私物なんて持ってくる馬鹿は居ない
居たとしても自己責任だ、さんざん、前線に上がる際の注意事項として入念に伝えているからな、私物(身体補助道具、及び、ブースター装備など)は身に着けることが必須で、支給される鞄には私物を入れてはいけないってね。無くなったり破損しても知らんぞっと!!
最後の一人を投げ終えた後、私も魔方陣の中に入っていく
転移先では、私がチームメンバーを投げ入れるのを解っているのでしっかりと受け止める為にクッション性の高い布団が引いてあった。
転送ポイントで待機していた隊員たちにより、一人一人、ゆっくりと担がれ、個別の布団へと寝かされていく。
さて、私も汗を流してから眠りにつくとしよう、、、
緊張が途切れた影響か、アドレナリンが途切れた影響か知らないが、膝が笑っている、うむ、先に寝た方が良さそうだな。
自室方面から仮眠室へと足の向きを変え、仮眠室へ向かっていると怒鳴り声が聞こえてくる。
声の近くでまで行くと、怒鳴り声が再度聞こえてくる。
何事かと、こっそりと部屋を覗いてみると2名ほどの若者が正座させられて怒られている、どんな内容で若人が説教をされているのか?場合によっては仲裁もしてやらんとな、いかんせん、最前線騎士団は手荒いのが多いから折角、現場に来ている若人の心が無駄に磨り減るのはよろしくない!
どこの部隊も人手不足なんだぞぉ!
部屋の入口付近で聞き耳と立てていると
「お前たちのせいで、一つのセーフティエリアが攻め込まれたのだぞ!!わかっているのか!!」
その一言で、察することが出来た、この二人のせいで、移動事件が発生したのか、まぁ、やんごとなき事情があるのであれば、助け船を出してやらんでもない、定期的に救護エリアは襲われているので、現場の私たちからしたら、またかぁ、くらいの感覚だしなぁ。
叱っているやつの言葉が途切れるまで待とうと思ったが、怒っている言葉の内容が罵倒ばかりで、経緯がわからぬ
ううむ、眠い、
このまま、永遠と罵声のみだと、睡魔に負けてしまう。
仕方がない介入してやるか「朝早くから怒鳴り声とは感心せんな、宮殿に響き渡っているぞ」コンコンっと壁を軽くノックしながら説教部屋に入っていくと
「団長!?これは失礼しました!」お、よく見たら胸元に教員バッジつけてるな、ってことは、幻術チームではなく、兵科の教員じゃないか。
ってことは、あれは学生がやらかしたのか、もしくは、学生あがりがやらかしたのか、
どちらかになるわけだが、これは学院に悪評が広まってしまうのを恐れている背景もありそうだな。
隠蔽されないように、会話内容を録音しておくかと、思ったけれど、まぁそんな魔道具持ち歩いていないから今回は無しでもいいだろう。
どうせ不慮の事故に決まっているさ、どんな馬鹿でも故意に前線を混乱させたいなんて思わないさ。
学生による不慮の事故くらいなら、助け船が要らないような気がしてきたぞぉ、それに背景によっては、揉消そうとするし、けれども、経緯をしっかりと把握しないといけないねぇ、一つの現場を取り仕切る立場として~。
「二度手間になるかもしれんが、現場の者として、今回の経緯を知りたいのだけれど、再度の報告よろしいか?」
嘘偽りに反応する術式をこっそりと展開し、状況の聞き取りを開始する。
どうやら、まず、この二人は貴族様の学院に現時点で通っている学生諸君だ、、、もう嫌な予感しかしないなぁこれ
最初は、しどろもどろで話がまとまっていないが、こちらの人心把握術により、会話も饒舌になり、少しずつ真実が浮き彫りになっていく
要約すると
① 面倒な課外学習なんて、早く終わってほしかった。
② やる事が無さ過ぎてつまらなかった
③ 何が最前線だ、敵なんて居ないじゃん、俺のソードがもったいねぇわ
④ こんなかっこ笑いの戦場なんて俺らで終わらしてやんよ!!
⑤ はい、認識阻害の術式おーふ!気配遮断の術式おーふ!さらに追加でおびき寄せの囮術式おーん!!
⑥ おらぁ!かかってこいやぁ!!
⑦ ひぃ!?敵の数が多いよぉ!?こわいよぉかてないよぉ
⑧ 現場に何も知らせずに帰還する
はい、ギルティ
「というわけでぇ、俺らは悪くないんでぇ、かえってもい」気が付けば声を出していたゴミは壁に吹っ飛んでいた。「ひぃ」状況を察したもう一つのゴミが立ち上がろうとした瞬間に膝から崩れ落ちその場に倒れこんだ
「ぁぁ、ダメだよねぇ、上に立つものとして弁護してあげようと思っていたけれど、手が先に出てしまった、いかんなぁ、戦場帰りは脳が停止してるなぁ」
「ぃいえ、恐れながら、申し上げます。手ではなく足が出ておりました」
確かに、状況を的確に説明するとすれば、ゴミAには、前蹴りしちゃって、後方にある壁まで吹っ飛んじゃって~、立ち上がろうとしたゴミBを逃がすまいと回し蹴りで顎を的確に蹴りぬいて意識を完全に刈り取ってしまった。
うっかりうっかり、言葉よりも先に暴力はいけないことだぞ☆彡
「君、なかなかに良い目をしているね」私の瞬発的な動きをしっかりと目で捉えることが出来るなんて良い目をした人だ。
「お、お褒めいただき恐悦至極でございますぅ!!」足が震えてなければかっこよかったんだけど、所詮は教員どまりって感じだなぁ。
「おい、これは軍法会議物の内容なんだけどさぁ、こいつらの親はどこぞのもんや?」殺意を込めた視線のままでつい問いただしてしまう。
いかんなぁ、もっと理性的にならないと、わかってはいるけれど、疲れた脳みそだと本能で動いちゃうよね☆彡
怯えた声でこのゴミ共の出自を吐いてもらうと、納得だわ、最前線から見て一番遠方の安全地帯に居るどうしようもない糞みたいな国からの学生だったか。
「今回のはさ~、相手の国には悪いけれど~、軍法会議に上げさせてもらいますね。流石に、内容が、見過ごすわけにはいかない内容なのでね」
軍法会議は学生にしては重過ぎるから、生徒を守るために、食い下がってくるだろうなっと、思っていたら、思いのほか乗り気で、先ほどの証言が保存された録音する道具を渡された。
流石だね~、曲者揃いの学生共を束ねる教員だね~。用意周到じゃないか!君~いいね~!君みたいな人じゃないとやっていけないんだろうね。
あの糞ゴミ学院で教員をして尚且つ、最前線の都市まで学生達の引率するなんて、胃がいくつあっても足りないよな、図太く生きるくらいじゃないと
さくっと、心労で倒れちゃうよね☆彡
っは!何回も、学院で講師してくれって頼まれてるけど断り続けて正解だよ。ゴミ共に時間を割くなんてもったいねぇわ。
気絶しているゴミAとBに軽く回復を施して、仮眠室に向かって歩いていく、私って偉いよね
あんな低能にもちゃんと手加減出来て!うっかり殺さなくてよかったよかった!ちゃんと後遺症が残らないように回復もしたし!
私って偉い!できる人!
さぁ寝るか!
目が覚めたら夜だった、少しだけベッドの上で、ぼーっと窓から見える真ん丸お月様を見ていると、思考もクリアになってくる、目が覚めてきた、目が覚めてくると
私の体からとてもじゃないが、人として終わっている匂いが込みあがってくるのが解る。
思考もクリアになってきたし、お風呂に入ろう汗臭い。あと、着替えたい、隊服の替えくらいなら入浴上に常備されてるだろうし、
お風呂入って、隊服を洗濯に出して、適当に城下町でご飯でも食べに行こう。
ベッドから起き上がると机に置手紙が置いてあるのに気が付いたけれど、特に報告することなんてないし、たぶん、自分宛ではないだろう
そうそう、休日に仕事なんてしたくないない!まずは風呂!その後は、飯!それからで良し!
脱衣所で、服を脱ぎ、隊服を洗濯コーナーに放り込んで、予備の隊服や新品の肌着を確保して、自分のロッカーに放り込んで
お風呂を堪能する。
思っていたよりも深夜なのか、珍しく浴場には誰も居なかった、いつもなら、医療チームがみんな死んだ顔して浴槽で溶けているのに
見当たらないってことは、それよりも遅いってことになる。
特に、時刻とか確認していなかったから、もしかしたらスンゴイ深夜の可能性もあるのかぁ
そうなると、ご飯処なんてどこも開いてないかもしれないなぁ、その時は面倒だけど、自宅に帰って、備えてある非常食を食べるとしますか、ね~
・・・・いつ作ったかどうか覚えていない非常食だけどね、、、、
「はぁぁあああぁぁっぁぁあああ」
この大浴場は姫様が我ら下々の事を思い、前線隊の皆が自由に使えるように用意してくださった物で、心の底から感謝しかない。
昼間は、早朝訓練に明け暮れた新兵たちが溶けているし、夕暮れ時は職務を終えた財務官等の官僚達がさっと汗を流してたり、夜になったら
前線から帰還した兵士達でごった返す。
今日みたいに誰も居ないのは本当に稀だ。この広い空間を独り占めできるのは、活気が無くてさみしい部分もあるが
これはこれで、気持ちが良いものだ。
なので、普段なら、先ほどの様な情けない声を出すことが出来ない、いくらプライベートな時間とはいえ、ある程度の威厳は保たないといけないと
団を纏める者として綻びは見せすぎてはいけないと常日頃、思っており、意識もしている。
うん、意識はしているさ、意識はね、、、守れるときは守るさ、、、うん、、、
誰も居ない時くらい良いよね?全力で緩んでも良いよね~?
「ぱっはぁあ!うんんんんんまい!最高!超COOOOOOOOOOOOL!!!!」
浴槽を出て、ろくに体も拭かず、全裸で脱衣所をつっきり、脱衣所の奥に備え付けられている、
冷やされた水が入った瓶を取り、全裸のまま一気に飲み干すのが最高に気持ちが良い!!
たまらん!!ここでしか摂取出来ない特殊な栄養素だ!!明日への活力という栄養素に違いない!美味い最高!最強!まぁべらぁぁす!!
この瞬間を隊員が見たら、どう思うのだろうか?っふ、たぶん、見慣れた光景だから、いつものと思うことだろう。
威厳って大事だね。
濡れた体をタオルでしっかりとふき取り、髪の毛は水が滴らない程度に拭く、後はどうせ、城下町をうろうろしている間に乾くさ
今日ぐらいの気温であれば、体温低下によって発生する、代謝低下による免疫力低下等からくる、病気などすることはない。
さて、っと、私物入れから財布も、持ったし私服にも着替えたし~城下町に行って遅めのでぃな~へと洒落こもうじゃないか!
出来れば、酒場以外が宜しいが、ちらっと時計を見ると、0時を過ぎていた、酒場以外に開いている店は無いだろうな。
ううん、しょうがない飯が美味い酒場があるからあそこに行くのが最善であるのは解っているのだけれど~
気が進まないなぁ~
あそこは我がチーム達もお気に入りのお店だから、べろっべろに酔ったチームメンバーが居る可能性が極めて高いのだよ。
ほら?私って親しみやすい隊長でしょ?絡まれやすいの、くすん。
こんな深夜に一人で出歩くのは危険じゃないかって?
この街は非常に治安が良い、何故なら、目の前に明確な敵がいるし、何よりも全員が使命を持って日々を生活している。職が無くて明日を生きるのも辛いような人間はこの街には誰一人として居ない。
世界中でもっとも死が近い街、争う暇があれば、前に出て戦ってこいがこの街の常套句だ。
お陰で、犯罪者も居ない、見回りの兵士も居ない~わけではない。見回りの兵士は居る。主に、敵の隠者が紛れ込んで居ないのか探す為でもある。
この街の有名な常套句はほかにも有名なのがある。
祈りを捧げる暇があれば、魔力が空っぽになるまで医療班で杖を握れ!
体力が余っているのなら前線で戦う兵士達の為に鍬を振れ!
飯を作るために包丁を握れ!
脳が疲れて居ないのなら本を読め!医学書、魔導書、戦闘指南書、生きる為に必要な書物は全てここにある!誰でも閲覧可能!
学べ!強くなれ!明日を生きる為に!明日を勝ち取る為に!
我々が崩壊した時は世界が崩壊するときだ!守れ世界を!人類を!それが城塞都市である最前線の街だ!
誰が言ったのかは知らないが、古くからある常套句さ。
確か、脅威が出来た時にこの城塞を作り上げた人が鼓舞するために歌ったってのが有力な説かな。
城塞都市?名前ないのかって?無いさ、
元々どこどこの国に所属している土地じゃない、各国が力を合わせて築いた城塞都市だ、故に、名前は最前線としか呼ばれていない。
全て決着し、平和になった時にこの街は何かしらの名前を得ることになるだろう。その時が来るように私達は命を削って戦い続けるのさ
まぁ、一応、街ではあるから、他の街とかと連携したりする責任者はいるけれどね。
世襲制ってわけじゃなくて民主主義で決めるから上のほとんどが、貴族ではない平民なんだよね、
平民だからって他の王国から舐めた態度を取られることは一切ない、何故なら、私達が居なくなれば
滅ぶからね、国が!故に、逆らえないんだけど、ちゃんと要望を叶えてくれるわけじゃないから、みんな上に立ちたく無い。無駄に仕事が増えるだけだから。
え?当然、上の者だろうが、自身の仕事があれば、兵士であれば、前線に立つけど?トップは独りだけじゃないからね、各団長が色々と持ち回ってフォローしてたりするからね。
当然、私も交渉の場に立つことがあるが、私の場合は切り札扱いされてて、滅多に交渉の場に出ることが無いかな。
何度も何度も応援を要請してはいるのだけれど、各国からは渋い反応ばっかり!
お陰様でこの都市は万年人手不足、常に兵士が足りていない、だからこそ、兵士の死亡率を下げる為に医療特化チームを複数用意し前線で常に治療を続けているわけだ。
兵士が足りてないのなら、ここで育てたらいい?この街で子供は生まれないのかって?残念ながら、子供が出来たら、みんな自国に帰る様になっているのさ、理由は単純で、子供を育てれる環境ではない。
食料も兵士優先だから、子供たちに満足な食事は用意できない可能性もあるから、豊かな自国で安全に育てて欲しいのさ。
後、下手に手を出して兵士を妊娠させちまうと周りの視線がきついこときついこと、本当はめでたいのだけれど、何しとんねんお前っていう負の感情の方が強くなっちまうのさ、皆、使命感に燃えて燃えまくっているからね。
己の使命を全うできないようなやつはこの街から自然と消えていく。周りとの熱量の差に負けてしまってね、だから肌に合わない奴は自然と出て行ってしまうのさ。
それでもね、そんな熱量がたまに明後日の方向にいっちゃってできちゃったのはよくある事さ!
なら娼婦とかそういう場所は無いのかって?
これがまた無いんですわ、需要は確実にある!けれど!そんなにしたいのなら、休暇の間に近くの町までいってこいってことよ。
別に、ここが最前線ってだけで移動手段は豊富にある、後方は道もバッチリ綺麗に舗装されているし、野党なんて居ないからな~。安全っていうか、野党達が仮にいたとしてもこの街の連中に勝てる奴は居ないし、金品を持ってるやつも少ない
襲うメリットよりも、デメリットの方が高すぎる。
特に、外にお楽しみに行けるくらい余裕があるやつなんて猛者しかいないわけで、返り討ちにあうのは必定。
過去には、馬鹿が襲い掛かってあっさり捕縛されて、最前線に放り込まれて返ってこなくなったケースもあると、聞いたことがある。
それに、休暇は最低でも三日は絶対に貰えるから、外の街で豪遊して帰ってくる連中もそこら中に居る、そういう人達は同好の士というわけで
纏まって行動することが多いからなぁ、だから、強者達が集まって集団行動をするのだ、勝てるわけがない。
しかも、全員、滾っている状態だ、興奮が爆発しかねん状態だ、貞操の危機もありえるわけで、尊厳全てを失いかねない。
はは、想像するだけでごめん願いたいね。
襲い掛かるメリットは一応、あることは、ある!
それはターゲットが学生に限りだ、身代金をたんまりいただくぜぇっという考えらしいが
学生達をこの街に送る為の護衛の一団は国の騎士団長クラスが行っているので、まぁ、勝てるわけがない。
最前線程ではないにしろしっかりと練武を行っている国のエース達だそこら辺に居る野党に負けるわけはないわな
そして、ほとんどの学生たちがこの街から帰るころにはみんな歴戦の猛者くらいには鍛え上げられているので、野党なんて塵芥というわけさ。
今朝のゴミ二人もきっと、前線で戦わされることが決まっているから、生きていれば猛者となって帰るさ
学生だから安全に返せ?そんなのは知ったことではない、生きるも死ぬも学生の努力次第だ、今いる兵士たちのほとんどがみな、大元は学生だからな、一攫千金、お家の名誉の為!成り上りたい!様々な思惑や思想をもって前線に挑むのだけれど
戦場に長いこと居ると自ずと責任感が芽生えて、最初の思惑なんて忘れるくらい使命感に燃え滾る人物しか。この、最前線の街には残らなくなっちゃうのさ、だから、中途半端覚悟の奴は気が付けば居なくなってるのさ、死んだのか故郷に帰ったのかは知らんけどな。
一歩引いて支える人たちもいれば、一定の武勲を上げたら即座に故郷に帰る人ももちろんいるさ。
全員が全員死んでたら、さすがに、人類は滅んでるさ。
そんなことを考えていたら、いつもの酒場に到着、兵士を支える為にご飯処は必須!美味い飯は明日への活力!
ありがたい話さ、こんな場所で美味いご飯にありつけるなんてさ。
ドアを開けて中に入ると、死屍累々だ、疲れた体に酒なんて放り込めばそうなる
机に突っ伏して寝ている者もいれば、堂々と部屋の片隅で横になって寝ている者もいる。
目が据わって永遠と酒を飲んでいる者もいる。戦場から帰ってきた英雄達の憩いの場所だからな、規律だとかそういうのは無しでいこう。
お気に入りの席に座ると「遅くに珍しいね」この店を切り盛りしている女将が水を出してくれた「今日の日替わりディナーはあるかい?」水を受け取りながら
慣れた態度でたずねると「残念、今日の日替わりディナーはまだ仕込んで無いさ、昨日の日替わりディナーならあるよ」にかっと笑いながら小粋なジョークを言ってくれる。
「ふふ、そうだね、気が付けば日付なんて変わっている物さ、昨日のをいただいてもよろしいかな?マダム」女将のノリに合わせてあげるのも慣れたものさ
「あいよ、まってな急ぎで作ってやるよ」腕をまくりながらキッチンがあるカウンターの中へと戻っていく。あの二の腕は衰えは知らなさそうだ、まだまだ現役で戦えるんじゃないのか?
女将は昔に、ここで戦っていた猛者の一人で、大先輩となる、私の父と背中合わせで前線の日々を戦い抜いた仲らしく、父とはちょっとした間柄らしい
詳しくは、聞いていない、女将も話そうとはしてくれないし、私も正直、父の恋愛話なんて聞きたくもない。
安心して欲しい、私は!女将と!血は繋がっていない、私にはちゃんと故郷に母がいる!安心してほしい。
私の母はムキムキで腹筋が割れてはいない。きれいなとても女性的な女性だ!
父が理性的で良かったと女将を見て思う、女将が母上だったら、私はきっと、ムキムキのマッチョボディだったのは間違いないだろう。
水を片手に、ぐるっと見回すと、うん、医療チームも数人いるな、幸いにしてみんな、こちらに気が付いたみたいでそそくさと寝ている者を抱えながら帰路に向かっていった。
遠慮しなくてもいいのにって思ったけれど、時間が時間だし、店のことを考えたらここで一晩を過ごすよりかは、ちゃんと自室に連れて帰ってあげるのが仲間意識というやつだな。
私が来たから気を使って帰ったってわけではなさそうだ。
無いと思いたいなぁ・・・・
「はいよお待たせ」どんっとテーブルに豪快に焼かれた骨付き肉が置かれる「今日はブーメランさ」誰が命名したのか知らないが、肋骨の骨に肉がついた状態がブーメランに見えるからってことで、ブーメラン焼きって名前が付いた女将の得意料理の一つさ「いつも、ブーメランの間違いじゃない?」なんて言うと軽く頭を小突かれてしまった。口は災いの元さ、ちゃんと閉めないと漏れてしまうものだね。
お上品に、ナイフを使い、骨から肉を外して食べていく「美味い!!」香辛料がたっぷりと使われていて女将特性のソースが絶妙な味わいを演出してくれる
最高だ!これは酒が欲しくなる!基本的にこの日替わりを頼んだら自動でお酒もついてくるのだが、
だが!私は残念ながらお酒が得意ではない、飲めないことはないのだが、明日のことを考えると飲めない。
明日に響いてしまうのでね、今日は飲まない、女将もそれを察してくれている、私が飲むときはオーダーするからだ。
ちなみにお酒の弱さは父親譲りなので、それも相まって女将は私に酒を進めてこない。気遣いの出来る素晴らしき女性だ
筋肉ムッキムキじゃなかったら惚れていただろう、私の父が!!
さて、お腹も膨れたし、心も満たされた、帰ろうかと立ち上がると「悪いけれど、その辺に転がってるの何人か連れて帰ってもらっても、いいかい?」女将は箒を片手に掃除がしたいとジェスチャーで伝えてくる。
確かに、上に立つものとして、下の者の不始末くらいは助けてやらんとな如何にプライベートとはいえ、助けてやるのが義理人情、まぁ、帰るついでだし毛ほども辛くはない
「任されよ」といっても、運べるのは二人が限界だな、どれとどれを運んでやろうか、選別をしていると「ほい」女将が両脇に抱えてきた、成程、これを運べと
運ぶやつのご尊顔はっと、ああ、成程、新顔か。ということは学生諸君だな、確かに、学生を放置するのは店的に面倒臭い、最初に甘やかすとついつい次もそうなってしまいかねないからな、っというか、学生諸君をここに連れてきた馬鹿者がしっかりと最後まで介抱して面倒を見てやるのが年長者としての矜持ではないのか?
私が訝しんでいると「こいつらは、新顔だろ?誰かに連れられてきたって感じじゃなくてな、ふらっと入ってきたんだよ」ほう、初手でこの店に辿り着けるとは運が良いな。
この店で潰れても医療チームが良く来る店だから、介抱してくれたりと助けに船になることが多いからな。
当然、助けてもらったやつはしっかりと、謝礼を医療チームに持ってこないといけない暗黙のルールがあるが、新顔は知らないだろうから、後で、人伝で教えてやるか
両脇にわっぱを抱えながら店を出ていく。出る際に「またおいでー」と女将の声が聞こえてきた、もちろんさ、何度でも、死ぬまでは通ってやるさ。
長生きしろよ筋肉レディ
・・・ちなみに独身かどうかは知らない、風の噂だと、子供がいるらしい、アレを抱ける猛者が居ることに私の脳みそはそこから先の思考を拒否している。
わっぱを適当な仮眠室のベッドに放り込んでっと、気になる事があるから、それを取りに行くか。
仮眠室に置かれていた手紙を確認する、なんだ、姫様からのお便りだったか、それはそれは、
新しい発明でも出来たのかな?手伝いだったらいくらでもしますよ姫。
未開封の手紙を片手に、月明かりがきれいな兵舎のベランダにあるベンチでゆったりと夜を堪能しますか
明日もまた、色々と激務がまっているしな、、、心の平穏は明日への活力さ。
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