ツイントーーク!② 夢のお部屋……?
新聞部の部室を訪れた日の夜。宇佐見姉妹は一緒に風呂に入っていた。二人の話題はもちろん新聞部のことだったのだが——
「むむむ……」
「どうしたの、ちーちゃん?」
湯船に浸かっている千影はなぜか眉根を寄せている。
「ちょっと思い出しちゃって……。まさか私たちのスキャンダルが狙われてたなんて!」
「学年トップ三人が仲良しさんだったら仕方ないかも。怪しんでたみたいだけど、付き合ってることはバレてないから大丈夫じゃないかな?」
「それはそうだけど、咲人くんにハニートラップとか卑怯千万、卑猥最低っ!」
「なははは……最後の四字熟語は初めて聞いたかな? あと、そんなのに引っかかるような咲人くんじゃないけどね?」
光莉は背中を流し終わった。湯船に一緒に浸かり双子は浴槽で向き合う。
「それで、監査委員会のほうはどう? あじさい祭りのときみたいになってない?」
「大丈夫。今回は二、三年生の先輩もいるし、人数も多いから」
「無理しちゃダメだよ? 咲人くん、ちーちゃんのことも気にしてるっぽいから」
「わかってるって。今回はきちんとやり遂げます」
やる気を漲らせた千影だが、監査の対象は姉の所属している部活。
咲人には厳しく監査してほしいと言われたが、本当に徹底的にやってしまって大丈夫なのかという不安もあった。……千影はやりすぎてしまうこともあるのだ。
「ひーちゃんのほうは? 新聞部はどうなったの?」
「うち以外の三人で掃除とか部室の整理を頑張ってたかな。うちはバックナンバーを過去五年分読んだよ」
「なんで?」
光莉はフフンと笑ってみせた。
「『学ぶ』の語源は『真似ぶ』だよ? 今までの新聞部がどういう記事を書いていたか参考にしようと思って。咲人くんも三年分くらいは見てたかな? というか、覚えてた」
「すごいよね〜……一回見ただけで全部覚えちゃうとか……」
「さすがにあれはうちにも真似できないなぁ。すごいよね、咲人くん」
「えへへへ、私の彼氏さんですから!」
「うちの彼氏さんでもあるけどね?」
と、宇佐見姉妹は見つめ合ってニコニコと笑う。
「ところで、咲人くんはなんで掃除を始めたの?」
「うーん……たぶん『割れ窓理論』じゃないかな〜? 環境で心がすさむこともあるからね。それに、なにか作業するなら、スペースが広くとれたほうがいいし」
千影は感心しながら聞いていたが、自分の部屋のことを思い出した。
「ちーちゃんは『夢の部屋』をもうちょっと片付けたほうがいいんじゃないかな?」
「ちょっ……⁉ 私はきちんとお掃除してるもん!」
「じゃなくて、あの大量のヌイグルミさん」
「可愛くて捨てられないのっ!」
情の移りやすい千影は、どうしても物が捨てられないタイプだ。子供のときからのものをずっと大事にとっておくせいか、部屋の中がヌイグルミで溢れ返っている。
そんな千影の部屋を、光莉は多少皮肉って『夢の部屋』と呼んでいる。
「咲人くんのお部屋はなんだかすごく綺麗そうだよね?」
「うん……。必要最低限のものしか置いてなさそう……」
「どんなお部屋なのかな?」
「叔母さんと暮らしてるならかなりスッキリしてるかも。あと、オシャレでー、咲人くんの香りで満たされててー、そんな素敵なお部屋でー、おうちデートをしてー……」
妄想に浸る千影を、苦笑いで眺めていた光莉だったが、千影と同じくやはり咲人の匂いが好きだった。
「じゃ、もう上がろっか? ちーちゃん? 妄想しすぎて茹でダコさんみたいになってるよ? ちーちゃん? ちーちゃん……⁉ ……——」
千影がなににのぼせたのかはわからないが、そのあと光莉は千影を介抱した。
「ごめんね、ひーちゃん……ううぅ……不覚ぅ……」
「あははは……とりあえず休んで」
そんなことを言いつつ、光莉の頭の中には新聞部のことがあった。
(咲人くんが一緒じゃなかったら、うちは……)
きっと新聞部の問題には関わらなかった。
咲人と一緒ならまだ安心だが、あの個性派揃いの新聞部の面々とうまくやっていく自信はない。だから新聞部と距離をおくことにしたのだが、決めた以上はやるしかないか。
(とりあえず、新聞さえつくっちゃえば、あとは退部でいいよね……——)
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2巻の先行公開分は、ここまで!
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