172日目 異世界-2

しばらくすると、戦闘の激しさが落ち着く。

魔物が徐々に減ってきたようだ。


「休息をとるぞ!! 川へ移動する!!」

トロゲンさんの暑苦しくよく通る声が響き渡る。


外界への移動は、川沿いを進んでいる。

理由は補給だ。

水の質量は大きいし、【水魔法】での補給はMPがもったいない。


だから、基本的には川からそれほど離れずに進んでいる。

そして、古代遺跡も川沿いに多いのだとか。


騎士団が少なくなった魔物を殲滅しつつ川方向へと移動する。


ちなみに僕は、担がれた棺の中だ。










【聖騎士】の方々は、水浴びをしたり、食事の用意をしたりしている。

【浄化魔法】が効いているとはいえ、水浴びは必須だよな。


そして、さすがは外界メンバーだ。

魔物との戦いだけでなく、こういったところでも動きに無駄がない。


なんというか、一緒に訓練したマッソさんたちには申し訳ないが、表情から異なる。

1000人以上いる中で、そのうち基礎ステータスが高く、カウンタースキルが使える人たちだもんな。


水浴びも、一定の人数だけがテキパキと鎧を脱ぎ、他の人たちはいつ魔物が襲ってきても大丈夫なように待機している。

さらに、【聖騎士】の中には、魔法を使える人も少なくない。

一定数は【浄化魔法】や【結界魔法】がメインでサポートに近い人たちもいる。

ただし、MPは節約する必要があるため、使用は最低限に抑えているようだ。


「狭間様!! 食事ができましたぞ!!」

「ありがとうございます!!」

トロゲンさんが食事を運んでくれる。


「どうですか?」

「すごく美味しいです」

相変わらず魔物の肉はうまい。

焼いて塩を振るだけで間違いない。

そして、少しだが野菜もある。


「野菜も持ってきているんですか?」

「いえ。食えそうな植物は、進みながら採取するのです。

 少数ですが、そういったものに詳しい者がいますからな」

なるほど。

そこも役割分担があるんだな。


「食事まで準備していただいて、なんだか申し訳ないですね」

「いえいえ、とんでもございません。

 狭間様のおかげで、【回復魔法】の補充、そして大幅なMP節約になっていますからな!!」


「いや、みなさんが戦っている間に爆睡してしまうのは申し訳ないですよ」

「シトン様がおっしゃっていましたが、理由あったのことでしょう?」


「まぁそうですが……」

そうだ。

魔石もあるし、MPはやや余っている。


「あの、川もいいですが、風呂あったらいいですよね?」

「それはどういう?」

トロゲンさんが疑問を抱くのも最もか。


「MPに少し余裕がありますので、風呂作ってみますね」

「あれだけ使って余裕があるのですか!?」


「えぇ、まぁ……」

僕は【土魔法】を使って、縦横2m深さ50cm程度の穴を掘る。

さらに、穴の表面を【土魔法】で陶器のように固める。

日本で地下室を作ったからな。

この程度の規模ならすぐにできる。


そして、【熱水】を使って熱湯を入れていく。

「おぉ……」

騎士団の方々が集まってくる。

「これ、暑いと思うので、川の水を使うか、しばらく時間を置いて入るのが良いと思います」


「ありがとうございます!!」









騎士団の方々は、お風呂を喜んでくれたようだ。。

「狭間様……」

「はい」

トロゲンさんだ。


「お風呂ですが、狭間様のお心遣い、非常にありがたいです。

 非常にありがたいのですが…………」

トロゲンさんは言葉を選んでいる。


「やはり、いざというときのために、こういったことにMPを使用するのはあまりよくないのです」

「はい……」

しまったな……


「も、もちろんありがたいのです……」

「いえ、以後気をつけます」

もう少し緊張感を持つべきだったかもしれない。

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