171日目 異世界-1

「情報を整理する必要があるな」

シトン様が言う。

「まずはタイラの指輪の能力だ。

 これは、命と引き換えにそのステータスとスキルを指輪に移す。

 そして、血縁者だけがその指輪の能力を使用することができる、そうだな?」

「はい。間違いありません」

クラールが答える。

こういうのはクラールに任せるほうがいい。


「そして、ダーハルト、シャールとの違いはなんだ?」

「魔道具を使っている様子はありませんでした。

 シャール自身のスキルの可能性があります」


「だとすれば、恐るべきスキルだな……」

「そうなると、そもそもそのスキルを魔道具として作ったものがあの『血鎖けっさの指輪』ということになりそうですね」

カルディさんが言う。


「現地の他の冒険者から、ステータスが奪われたという話はない。

 おそらく血縁者からのみステータスを奪えるのだろう。

 これも指輪と一緒だな」

「はい。しかし、俺が生きてますからね。

 下手したら死んでいたかもしれませんが、まぁ命までは奪うつもりはなかったと思います」


「凄まじい殺気だったのだろう?」

「はい……ですが……」

ダーハルトさんは言葉に詰まる。


「それは、お前がシャールを信じたいという願望か?」

「おい!!」

ショーンがシトン様に声をあげる。


「ショーンよせ……確かに、俺の願望かもしれませんね。

 あいつは……シャールはあまり感情を表に出す方ではないのですが、悲しそうな目をしていました……」

「そうか……」

「「「………………」」」



「(仕方ないが)サワナに魔石で連絡をしておいた。

 緊急の魔石だ。

 時期に戻ってくるだろう。

 (最悪だな。1秒でも会いたくない)」

「だとしたら、サワナ様を待っていれば、いずれショーンのお兄さんと接触できますよね?」

僕は言う。

シャールさんがサワナ様を探しているのなら、護衛もかねてサワナ様の近くにいればいいのではないかと思う。


「中央東に単身で乗り込んでくるのでしょうか?」

クラールがダーハルトさんに聞く。

「可能性は低いだろうな」


「サワナ様が帰還した場合、サワナ様とシトン様、そして騎士団全員を相手にすることになる」

「それだけじゃない。

 ロゲステロンが狭間のおかげで復活している」


「おぉ……ロゲステロンか」

「狭間さん、やりますね」

久しぶりにカルディさんに褒めてもらった。


「では、狭間くんは従来の予定通り騎士団とともに外界へ向かってもらう。

 他のものはここで待機だ。

 サワナが帰還した後情報をすり合わせよう。

 彼女が何故狙われているのか、彼女自身に聞いてみる必要がある」

「ショーンもそれでいいね?」

「あぁ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る