170日目 異世界-4
「父さん!!」
ショーンがダーハルトさんのところへ駆け寄る。
「ショーンか……」
ダーハルトさんが起き上がる。
部屋には僕とシトン様、ショーン、クラール、カルディさん、イヴォンさんがいる。
「大丈夫なのか?」
シトン様が聞く。
「はい。肉体的に問題がありますが……
今はお話ししたいことがあります」
ダーハルトさんの体は筋肉質で大きく、古傷がいくつもある。
通常の【回復魔法】では古傷を消すことはできない。
【ホーリービジュア】なら可能ではある。
「我々は、第七戦線のヒドラ討伐に成功しました。
かなり準備をしていったので、苦戦はしましたが以前のように逃げる選択肢はありませんでしたよ」
ダーハルトさんはイヴォンさんとカルディさんを見て苦笑いをする。
「討伐を終え、回復と休憩が終わった頃にシャールがやってきたのです」
「シャールは討伐メンバーではなかったのか?」
「はい……シャールは以前から第七戦線攻略に反対をしていました」
「何故?」
「時期尚早だと言っていました……今思えば、おかしな話だ。
これまで、シャールは強敵との戦いには積極的だった。
ところが、第七戦線のみ急に消極的になったのです。
そして、第七戦線攻略時にはどこかへ行っていました」
「しかし、ヒドラ討伐後にシャールはやってきました。
あたり一帯に殺気を撒き散らして」
ダーハルトさんの話にショーンは眉間に皺を寄せ拳を握りしめている。
「あとは、この有様です。
情けない話ですが、シャール一人にダメージを与えることもできませんでした」
「馬鹿な!!」
シトン様が驚く。
強者相手にノーダメージということか?
「はい。シャールはどうやら、ずっと実力を隠していたようです。
この俺でさえ、全く相手になりませんでしたよ」
「嘘だ!! 兄貴がそんなことするわけねぇ!!」
痺れを切らしたショーンが大きな声を出す。
「ショーン……」
「確かだったのか? 何かの間違いじゃないのか!?」
「あれは、確かにシャールだ。
あの【闇魔法】と【剣術】……他の人間の追随を許さない」
「何か、何か事情があったんじゃないのか!?」
「そうだな……」
「………………」
「シトン様。サワナ様はどこに?」
「サワナ(変態ババア)? 今はここにいない。何故だ?」
「シャールはサワナ様を探しているようでした」
「サワナを探す?(不明なことばかりだな)」
「何故かはわかりません……しかし、すぐに護衛すべきでしょう」
「あのサワナ様に護衛ですか?」
カルディさんが言う。
確かに、サワナ様は最強の賢者だ。
「今の話が本当なら、たとえサワナでも危機だろうな」
「はい。シャールは我々との戦いでも本気を出していないように見えました。
それに……」
ダーハルトさんは自分の手を見て握りしめる。
「シャールにステータスの大半を持っていかれたようです……」
「な!!」
全員が驚く。
ステータスを奪う……
それはタイラが使っていた指輪の能力だ……
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