第38話 勉強会を始めます

 あの一件以来、梓は篠崎高等学校で一番の大人気者として有名になっていった――――。


 わけもなく、いつものように屋上でお昼ご飯を食べていた。



「そういえば、そろそろ期末テストだな」


「篠崎高校のテストって基本、難しいから気抜けないよね」


「…………梓っていつも何位なんだっけ?」



 その質問にピタッと止また。


 篠崎高等学校は超頭のいい生徒たちの集まりで、テストの順位争いは一種のゲームと思えるほどに緊張がある。


 勉強しなければどん底まで順位が下がるし、勉強しても順位が上がらなかったりと、本当にレベルが高い。そんな中でも頭がいいのが、幼馴染の渚だ。


 彼女は中間テストで1位を取っており、科目のほとんどが90点代後半、ほかの順位上位生徒も90点代前半が多い。



「…………それより、今日やるゲームについて」


「話を逸らすな」


「…………ぷいっ!」



 梓は頬を膨らませながら、ぷいっと顔をそらされた。


(ま、まさかな…………)



「梓…………まさか、ゲームにかまけすぎて勉強してないなんてことはないよな?」


「…………千斗」



 ゆっくりとこちらを向く梓はニコッと笑顔で言った。



「ここ最近、いろいろあったから、やってるわけないよね♪」


「…………よし、今日は勉強会をしよう!」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?なんで?ゲームは?」


「期末テストが終わるまで禁止だな」


「期末テストが終わるまで!?つまり、1週間…………」



 手で何回も数えながら、ぶつぶつと呟く梓に、千斗はため息を漏らした。



「別に勉強したくなかったら、俺の家に来なきゃいいだろ」


「いやだ!千斗の家には行く!でも、勉強は…………」


「はぁ…………”信用とは結果を持って初めて本当の信用に足り得る”、勉学もまた信用得るための手段だ。だから、一緒に頑張ろうぜ、梓」



 俺は梓の肩に手をのっけた。



「千斗…………こういう時にお母さんの言葉を使うのはずるいよ!!」


「はいはい。さてと、そろそろ時間だし、教室に戻るぞ」


「あ、ちょっと待ってよ!」



 ペットのように千斗の後ろを追いかける梓なのであった。



□■□



「なぁ、千斗」


「な、なに?」



 5時間目の放課に、珍しく須藤くんに話しかけられた。



「期末テストまで後、1週間だよな」


「そうだけど」


 

 すると、須藤くんは耳元で囁いた。



「…………俺、雫ちゃんと一緒に勉強会がしたいんだ」


「誘えば?」


「それができれば苦労しねぇよ。だから、頼む!」


「えぇ…………普通に――――」



 断ろうとしたとき、ふとある考えがよぎった。


 絶対に梓は俺の家に来る。なぜなら、友達になってからほぼ毎日欠かさず、来ているからだ。


 そして、絶対に勉強を嫌がる。なら、勉強せざる負えない状況にもっていけばいい。


 そう、渚や秋藤さんが一緒に勉強会をやれば…………。



「わかった。聞いてみる」


「おぉ!!まじか!?」


「場所はたぶん、俺の家になると思うから――――」


「わかった。今日は千斗と帰るって友達に伝えてくる!」



 颯爽とよく絡んでいる友達のほうへと足を運ぶ須藤くん。


(最後まで、聞けよ…………)


 あくまで聞いてみるだけで、実際に二人が了承してくれるかはわからない。




「このメンバー、あらためて、千斗ってすげぇんだな」


「あ、集まってしまった」


 

 教室の扉の前で、俺と須藤くん、梓、そして渚や秋藤さんが集まっていた。



「勉強会、誘ってくれてありがとう、千斗くん♪」


「渚ちゃんがいくから仕方なくだから」


「わかってるよ。だから、そう俺をにらむな、秋藤さん」



 まさか、本当に集まるとは思っていなかった。


 帰りのホームルームが終わり、すぐに二人に提案してみると、渚が二つ返事でオーケーしてくれて、それに動揺しつつ、秋藤さんも参加することに。


 

「梓ちゃん、こっちおいで」


「あ、うん」



 秋藤さんに呼ばれて、ペットのように近づく梓、その横で微笑む渚。



「なぁ、千斗。俺、今すげぇ光景を見ているような気がする」


「同感だ」



 篠崎三大美少女が揃って楽しそうに会話をしている。それはもう目の保養になるし、世界がきらびやかに見える。


 見てみろ。周りの男子生徒たちを。


 一度視界に入れば、そのままひょろひょろっと膝を崩し、見惚れてしまっている。



「ありがとう、千斗」


「須藤くん……目的、忘れてないよな」



 珍しいメンバーが集まり、勉強会をすることになった5人は一緒に俺の家に向かった。



「す、すげぇ綺麗だな」


「そうか?普通だろ」



 須藤くんはリビングを見て素で驚きの表情を浮かべた。


 そんな中、梓は俺の隣にしれっと現れ、囁いた。



「千斗、ココアミルク一つ」


「ダメだ」


「なんで!?」


「甘い飲み物を飲むと眠くなるからな。今日はお茶だ」


「そ、そんな…………うぅ」



 悲しそうに背を向ける梓はリビングにある机で囲んでいる渚と秋藤さんのもとへ帰っていった。


 全員分のお茶を用意した俺は、机に並べて、空いているところに座る。


 右隣には梓、左隣には秋藤さん、そして、向かいには須藤くんが座っていた。

 もちろん、秋藤さんの隣には渚がおり、べったりしている。


 そして、それを横目で見ている須藤くんはいつ渚に話しかけようと伺っていた。


(手伝うつもりはないが、応援だけはするぞ、須藤くん)


 こうして、珍しい5人組の勉強会が始まったなのであった。


――――――――


 一区切りがついたので、1週間ほど、投稿を止めさせていただきます。。





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ボッチ高校生ゲーマーがチンピラに絡まている女の子を助けたら、友達宣言されて毎日のように家に来きてはゲームするようになった件 柊オレオン @Megumen

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