第113話 メロンはお好き?

 スイカを食べ終わったあとも陽菜は相変わらず俺の上に陣取っている。

 やんわりとどいてとお願いしても返ってくるのはお察しの通りお構いなくだし、しっかりと体重を押し付けてくるので陽菜とビーチチェアでサンドイッチ継続中だ。


「……何か失礼なことを考えませんでした?」


「いえ、とんでもない」


「なら良いのですが……女の子にデリカシーのないこと言うのは厳禁ですよ」


 ジト目でかわいらしく睨んだ後、膨らませたほっぺを俺の胸に押し付けてぷすっと空気を吐き出した。

 しっかりとリラックスしたご様子で、身体も預けられているので体重を押し付けるという表現をしたが、別に陽菜のことを重いとは微塵も思っていない。

 いや……微塵もは嘘か。どこがとは言わないが、やや重みを感じる部分も少なからずある。

 それはそれとして、むしろ陽菜は軽い方だと思う。


 同居生活のおかげで普段から食卓も共にしているため、ちゃんと食べているのも知っている。健康的な食生活で、無理なダイエットをしているというわけでもない。

 この抜群のプロポーションもそのおかげなんだろうな。腰回りとかはすごく引き締まっているし、出るところは出て、引っ込むところは引っ込む。ビキニ姿が本当によく映えていてとても綺麗だ。


「ひゃうっ」


「あ、悪い」


「あんまりえっちな手つきで撫で回されると連れ込みますよ」


 腰に手を回すとピクっと跳ねた。この肌触り……指が吸い付いて離れない。

 サラサラでもちもち、女の子特有の柔らかい肌だが、キュッと引き締まっていて弾力がある。


 ただ、あんまり触り心地が良すぎるのも考え物だな。これ以上は本当にテントに連れ込まれそうだから、過度なボディタッチは避けたいところだが、結局俺の方から触らなくても陽菜の方からあちこち押し付けてくるもんだからマッチポンプが酷い。


 まあ、とりあえず気が済むまで好き放題やらせてやればそのうちおちつくだろ……なんて甘いことを考えたのも束の間、不意打ちのキスをお見舞いされた。


「んっ……まだ甘いですね」


「そりゃ、散々擦り込まれたからな」


「スイカ、よかったですね。夏といえばな果物……いえ、野菜? まあ、どっちでもいいですか。定番ですが、私達がこの夏で口にするのはこれが初めてでしたね」


「そうだな。親と暮らしてる時は親が買ったりもらったりでおやつとか食後のデザートとして出してくれてたけど、自分達だけだと中々手を出そうとは思わないな」


 一人暮らしの学生……いや、今は二人暮らしか。学生の身としては、スイカは中々手を出しづらい。切って小分けにされて売っているものもあるが、コスパは悪いだろうし、かといって丸々一つ買うのも勇気がいる。そういう意味だと小さめのスイカを用意してくれた陽菜には感謝だし、色々な意味で楽しむことができた。


「スイカってどうしてウォーターメロンっていうんでしょうね?」


「スイカなのにメロンってか。果物野菜論争と言い、どっちつかずだよな」


 さっき陽菜も言い淀んでいたが、スイカは果物か野菜かでも意見が割れるし、英語ではウォーターメロンと言ったり色々とはっきりしない。


「ところで……玲くんはメロンはお好きですか?」


「メロンか……まあ、好きだな」


「そうですか。ちなみにメロンは女性の胸……特に大きなものをさして言われるスラングみたいですね。あんまりお外でそういうこと言うとセクハラになってしまいますよ」


「ぶっ……謀ったな」


「謀るだなんてとんでもない。ただ、知らずにいると誤解が生じてしまうかもしれないので」


 唐突に聞いてくるもんだからつい普通に答えてしまったが……とんだトラップが搭載されていた。

 分かっててそういう聞き方をしてくるとは、本当に悪魔的ですねこの子は……。


 イタズラな笑みを浮かべてにやにやと見つめてくる陽菜。

 スイカ連想でよくもここまで綺麗な攻撃ができるもんだと感心していると、陽菜はギュッと抱き着いて二つのメロンを押し付けてくる。


「私のは本当の意味でメロンというには少し控えめかもしれませんが……玲くんはどう思いますか?」


「それ俺に聞く?」


「今後の参考までにお聞かせください」


「何を参考にするの?」


「メロンというには物足りないと玲くんが言うなら、頑張って育ててもらおうと思います。玲くんに」


「俺かよ……」


 女性の胸の大きさについて言及するのは非常に憚られる。

 とはいえ、押し付けられている感触から言っても立派なものをお持ちだとは思うし、言うほど控えめというわけじゃない。

 実際に見てもいるからなおさらコメントに困るが……強いて言うのなら大きさは関係ないのではないだろうか。


「で、どうなんですか?」


「……別にどうでもいい。陽菜のならどんな大きさでも好きだ」


「特大メロンじゃなくても?」


「……おう」


「今悩みました?」


「悩んでない」


 別に胸の大きさで何か変わるわけじゃない。

 陽菜は今のままでもかわいくて綺麗だし、胸が大きかろうと小さかろうとそれはきっと変わらない。


 だから、大きい方がいいとか思ってないから、そんなに疑うのは止めていただきたい。

 というか、今のサイズでも十分大きいでしょ。平均がどれくらいなのか知らないけど。


「まあ、いいでしょう。とりあえず玲くんはメロンが好きだというのは覚えておきます」


「……それ、どっち?」


「どっちだと思いますか?」


 果物か胸かでかなり意味合いが変わってくるんだが……このにやにやが止まらないお顔をしているということはきっと後者の意味で言っているんだろうな。

 まあ……オトコとして別に嫌いじゃないからいいか。


「話は変わりますが……ケーキはお好きですか?」


「……それも何かのスラングか?」


「お好きですか?」


「おい」


「お・す・き・で・す・か?」


「……好きです」


 この話の流れで聞かれるの怖いし、教えてくれないということはきっとそうなのだろうが……普通にケーキは好きなのでこう答えるしかない。

 無知って罪なんだなと実感させられるとてもいい笑みである。


「ちなみにケーキはお尻のスラングです」


「……そんなこったろうと思ったよ」


「玲くんはメロン好きでケーキ好きですか。いいフェチだと思います」


「まあ、嫌いじゃないけど……誰のでもいいってわけじゃない。陽菜のだから好きなんだぞ」


「それは嬉しいですね。どうぞ、今すぐ食べてください」


「……食べません」


「食べ放題ですよ?」


「…………ここじゃダメ」


 上目遣いのおねだりについ押し込まれそうになるが、白昼堂々それはまずいだろう。

 すでに人目も憚らずにキスとかしてるから今更感はあるが、それはそれ、これはこれである。

 俺は欲張りで食いしん坊だからな。陽菜のメロンもケーキも……独り占めしないと気が済まないんだよ。おすそ分けなんて絶対にお断りだ。


 ◆


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