迫りくる悪のマッチョ! うなる鋼鉄! 吹き荒れるバイオレンスの嵐!!!

 アクションあり、冒険あり。そして圧倒的な「マッチョ愛」に満たされた物語でした。

 戦争によって荒れ果て、完全なる無法状態と化した世界。そんな荒野の中を一人の少女が闊歩する。
 少女の名はアンジュ。アンジュは右腕が鋼鉄仕様に改造されており、『ロケットパンチ』として発射することが可能となっている。

 無法の地には、他者からの略奪を繰り返すような、悪質なマッチョの男たちが無数に蠢く。アンジュはそんな悪しきマッチョたちに対し、容赦なくロケットパンチを発射する。
 
 この辺りの描写がすごく鮮烈です。マッチョたちの鍛え上げられた筋肉も、先端科学によって作られたロケットパンチの前では完全なる無力。当たったら「ちょっと痛い」などでは済まず、完全に頭部そのものが吹き飛ぶというスプラッターな事態に。

 アンジュは常にマリカという「クマのぬいぐるみ」をパートナーとして連れていて、彼女が科学者としてアンジュのロケットパンチの調節などをしてくれるようになっています。
 マリカは人間の姿に戻るため、アンジュは自分の右腕を切り落とした「王」と呼ばれる存在への復讐のため。無法の地を旅していくことになる。

 天然気味なアンジュと、ツッコミ役のマリカの掛け合いがとても楽しく、テンポよくぐいぐいと読み進められます。そしてこの土地に各地いる様々な「王」や組織。
 更には物語の世界を彩る「多種多様なマッチョ」という存在。

 特にインパクトがあったのが「ニューエイジ」という違法な筋肉増強剤「M2NR(マッチョになーる)」を使用する違法マッチョ集団。そこにはボスオネェマッチョや椅子マッチョなど、いくつもの個性を持ったマッチョたちが所属しているという。

 世の中には、こんなに多様なマッチョが存在していたとは。「マッチョ図鑑」なんかを作れるのではないか、というくらいに個性的なマッチョたちの姿が楽しめます。

 そして、ラストで明かされる真相。熱いバトルやロードノベルな楽しさだけでなく、最後まで読むと「ある意外な事実」が判明します。
 マッチョたちとの戦いの果てに、少女らが見る真実は? 壮大な「一つの旅」を終えた感じのカタルシスが大きく、読み終えた後、大きな満足感がありました。

 とにかく楽しい作品です。アクションや冒険、そしてキャラクターの魅力。色々な点で読者を楽しませてくれる、熱量満点な一作でした。