〜47〜二つ目の物語の交差点、全てが始まった。 編集済
初めに書かなければならない特記事項。
あの事件はこの話を話す上で必要不可欠であり、この話の始まりである。
この少年の交差点転換点だ。
そう綴られている本は勇者候補を呼ぶための人物の本を持ってギリシャ神話支部の中に入る。
この中に初めて神界に着いた時のあの神殿の中で召喚を行うようだ。
この神殿に来るのは一年ぶりか……なんか懐かしいな。
「それにしてもこの本の子が光司くんの勇者候補っスか、なんか考え深いっス。あの光司くんが……」
「まぁ、その辺はいいんですよ。これを読み終えれば召喚されるんですね?」
「そうっス、よく呼んであげてくださいっス!」
この本を読み進めると勇者候補が呼び出されるんだとか。
どんな原理なんだろ?
まぁ読み進めるか。
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陽炎という男の子がいた。
その日は日曜日、友達の家に行く途中の出来事。
ただ陽炎は交差点の青信号で渡っていただけだった。
そこまで大きな交差点ではないが、車もそこそこ通る道。
信号が青になったことを確認して、横断歩道を渡った。
神の悪戯のようにたまたまそこに暴走してしまった軽自動車が突っ込んで来てしまう。
当然、陽炎はそれを避ける暇もなかった。
死んでしまうことを悟った、走馬灯も脳裏を流れた。
しかし、陽炎は生き残った。
何故か?
簡単な理由だ、陽炎を庇った人がいたのだ。
名前すら知らない人、見たことも、聞いたこともない普通の人。
その人は神冥 光司。
そう、この事故の後神になる人だ。
それは仕組まれた事なのか、それとも……、それは邪推だろう。
陽炎を歩道へと突き飛ばし、幸い陽炎に怪我は無かった。
しかし、庇った男は体ごと飛ばされてしまい、頭をコンクリートに強打した。
頭から流れる血はダラダラと噴き出て止まることを知らない。
男の意識が朦朧とする中、陽炎は大人を集め救急車をすぐに呼んだ。
頭を止血しようとしても直ぐに血で溢れ、意味をなさない。
それでも男をこの世界に呼び止めるかのようにずっと話しかける。
「お兄さん! 大丈夫?! 死なないで! 助けてくれたヒーローは帰って来るでしょ!! ねぇ……返事してくださいよ!!お兄さん!!」
悲惨な嘆きは聞こえる事は無かった。
少しずつ手は冷えていき、この男は死んでしまう。
「新作のシミュレーションゲームやりたかった……な」
掠れた声で聞こえた最後の言葉。
陽炎を慰めるように軽く微笑んでこの世を去った。
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運転手は轢き逃げ、78歳で認知症だった。
そうニュースで流れる。
もう何も考えられなかった。
あの手がだんだんと冷えていく様は脳裏にこびりつき、忘れようとしても離れなかった。
男の親は『あなたのせいじゃない。気に病まないで、私達の元に帰ってきただけで嬉しいから。でも、勇敢な姿は忘れないであげて欲しい』
そう言い陽炎を責めるどころか優しくしてくれた。
世間では『勇敢な死だ』、『陽炎を助けたのはやむを得ない』そう言われていた。
そう言われているけど、あんな残酷な姿を見せてトラウマにならないほうがおかしいというものだ。
もうお兄さんはこの世界にはいない、そう考えるたびに目の裏にあの出来事がフラッシュバックした。
あの生々しい血、いたるところが折れ曲がってしまった体、冷たい手。
そして陽炎は病んでしまった。自分の家から出れなくなっていく。
だって自分が避けなかったせいで死んだのだ。あのお兄さんが自分のせいで死んでしまったのだ。
そんな時にふと我に変える。
お兄さんはこんな自分を見た時に喜んでくれるのか?
最後お兄さんは最後、自分に笑いかけてくれた。
今度また見た時にこんな姿じゃあ落胆してしまうかもしれない。
なんでまだ凹んでたんだ。
お兄さんは自分のことを助けてくれた。
今度は僕の番だ。
そう思い、陽炎は今できることから始めてみた。
陽炎はいろんな人を助けた。
最初はおばあさんの信号を渡るのを助けたりしたが、簡単そうに見えて簡単ではないことだった。
決断するのにも勇気が必要だった。
それでも考えるよりも先に身体が動いた。
いじめられていた子を助けたり、犬も3匹助けた。
時には大変なことだってあった。
でもコレでいいんだ、お兄さんならこうするはず。
お兄さんが自分の物差しになり、お兄さんが自分の太陽になった。
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そして17歳のある日。
女の子が横断歩道を渡っていた。
そこに軽トラだったのだろうか、あの時のように暴走していた。
必死だったから覚えていないが女の子は轢かれそうになった。
身体が先に動いた。
早くあの子を助けないと……その一心だった。
そして自分は押したんだ、女の子を。
車道から直ぐに突き飛ばして車が当たる範囲から逸らした。
まさにあの時のように。
あの場所、あの風景、あの顔、あの状況。
全てが走馬灯のようにフラッシュバックした。
死ぬんだな、そう自覚したのはもう遅かった。
そう、陽炎はお兄さん《あの人》のように死んだ。
いい死に様だったかな……?
「最後に確認したかった……な……」
その声を最後に倒れた。
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そう倒れたはずだったのに、まだ動く……?
「よく頑張ったな、この子。俺が助けた子がこんなになるなんて……人生何が起こるかわかったもんじゃないね、」
「ほんとっスよ、光司くんの周りってすごい人しかいないっスねww」
どこだ、死んだんじゃないのか?
手が動く、死んでない? 目を開けてみると天井一面に絵画が描かれていた。
ムクリと起き上がると周りには白い神殿の中にいるようで、教科書でみたローマの風景にある神殿のようだった。
そして人が二人。
そこにいたのは……、見覚えのある人、憧れてきた人。
人生の転換点になった人。
そう、
2人の物語が再び交差した瞬間だ……いや。
これからが新しい
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読んでいただきありがとうございます。
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