第2話 ★「ネコ科ヒョウ属トラの巻~政治家になるための本~」
<サイド 城島叶斗(会社員)>
2025年正月元旦
昨年末、年末年始の休みに読もうと話題になっている本を買った。
「ネコ科ヒョウ属トラの巻~政治家になるための本~」
こういうタイトルの本が話題になることも不思議だが、内容もぶっ飛んでいる。
「第1話 ネコの神様と対等に交渉する方法」。
いやいや、どう考えても政治家になるのに必要とは思えないし、普通に生きていて活用する機会などあるはずがない。それでもこの本を支持する人に言わせると、この話で政治家に必要な交渉術の基本が書かれている??らしい。
昨年秋にシリーズで発売され、猫トラ本と呼ばれシリーズ合わせて1000万部売れて、なお、売れ続けているというのだから、世の中はわからない。
まぁ、とりあえず読んでみる。
『ネコの神様と会った際に、最初に確認するべきなのは、代替案が相手にあるかということだ。
相手がどうしても私達と契約するしかないのなら強気な交渉ができるが、そうでないなら私たちが不利になるからだ。ネコの神様が言うには、私達に声掛けし交渉をスタートさせるまでに神力を使ったとのことだが、神力の1%くらいとのことであり、新たに候補者を探すことは、それほど問題はなさそうだった。
一方で、私達が有利なことも判明した。今日がネコの神様にとって特異日(地球の人が最も猫に関心を持つ日であるため、神力が高まる日らしい)であり、今日中に相手を決めなければならないらしい。時間制限があったのはありがたいことだった。
交渉時に重要なのは獲得目標の明確化だ。シンプルであるほど交渉は成立しやすい。
しかし、一方で様々な条件を大量に付随させて複雑化させ、それを一つずつ整理していく中で、ここは譲る、ここは譲ってもらうというようなバーターしていくという形で交渉をしていくことで、最終的に合意をするということも国際政治の中では当然に行わなければならない。
日本はシンプルな交渉は不得手で、複雑な多国間交渉の方が得意と言われてきた。「調整ごと」が得意な我が国らしい特徴で、多国間交渉をしたがるのが日本の外務省の特徴でもある。
交渉事で大事なのが、役割分担だ。
幸い、ネコの神様との交渉は1対2だったため、前向きに交渉を進める人、そして、交渉に対して渋って見せる人の役割を果たすことで交渉をすすめることができた。このやり方が得意なのはアメリカで、政府が前向き、議会が渋るという構図を作ることで相手に譲歩させることがよくある。(無論、逆のパターンもある。)
日本はこれは不得意だ。
自分にすべての交渉権があるように振る舞いたがるし、内部での反対を相手に伝えることは自分のプライドを傷つけると考える。
確かに決定権がない相手と交渉することは相手にとって無駄なことではあるから、扱いが軽くなってしまうというデメリットはあるが、相手が交渉できる相手を自分に限定させることができるなら、それほどデメリットにはならない。
この辺りをコントロールすることが重要だが、それができるなら、役割分担を行った交渉は譲歩を引き出しやすい。
そして、最も重要なのは相手が考えていなかった条件をプラスして提示することだ。
ネコの神様の要望は、彼の国に住むネコが武力侵攻されているため、防衛協力して欲しいというものだったが、それに加えて、彼の国に住むネコのウェルビーイングの向上を提案し、ネコの神様の欲するものを見極めて提案できたことが交渉を成功させたカギだった。
(尤も、ネコの神様から見れば、子どもの戯れにすぎず、交渉内容というより、交渉している私達の頑張りを評価し、ある程度の無理を聞いてくれたのであろうが。)』
・・・・え、なんでこれが人気になるの???
俺の、第一印象はこれだった。
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