異世界編~前編~

第1話 ネコの国に呼ばれた二人


 2022年2月22日、HTSの澤村秀一さわむらしゅういちと副総理の吉田太郎よしだたろうの2人だけが、この日のことの説明を受けていたが、日本政治の本格的な幕開けへと繋がった不思議な出来事異世界転生はすべてこの日に起きた。


 <サイド 祝田咲>

 私は、祝田咲。総経大の大学2年生で政治経済学部に属していた。珍しがられることが多いけど、私は政治家志望なので、この学部以外に選択肢はなかった。


 2022年2月22日、春休みに空き家の手入れをするために佐賀県の祖母の家に和にぃかずにいと戻っていた時、驚天動地の出来事が起きた。文字通り、天に裂け目ができたと感じ、大地が大きく揺さぶられ、気が付いたら暗い場所で、猫の神様を自称する神様と出会った。


 私は、日本語を話すペルシャネコと感じたが、和にぃかずにいは白いネコで杖を持った2本足のネコと感じていたと、後から聞いた。


 その猫神が、異世界のネコのために力を貸してほしいと頼んできた。渋っていた和にぃかずにいに対して、私は条件によっては異世界に行っても良いと思っていた。


 最初に思ったのは、祖母と妹が一緒に転生できるなら、それも良いかと思ったのだけど、話を聞くと、人間がいない世界と聞いて、妹や祖母を巻き込むのは不本意だったのでやめた。


 現代日本に戻ってきて異世界転生特典チートで活躍できるようにしてほしいとの条件がある程度いけそうだったから、そっちの条件で話をまとめた。最後まで、和にぃかずにいは反対していたけど、私が強く頼んだらOKしてくれた。相変わらず、私と妹にとってはチョロインである。


 <サイド 祝田和馬>

 祝田和馬、26歳。職業は自営業となるだろうか、この失踪事件をマスコミが報じるなら。それとも「若手社長、謎の失踪事件!?総経大エリート女子大生とともに消えた謎を追う」というようなリードで、週刊誌で報じられるのかもしれない。


 伯母達がマスコミに何と言って証言するだろうか?あいつらなら碌なことは悪口と噂しか吹き込まないだろうことも予想がついていたし、なにより義理の父としては娘の咲に危険なことをあまりさせたくはない。


 そう考えるなら、ネコの神様のお願いであっても大人しく受諾するわけにはいけなかった。


 ネコの神様の依頼は、ネコの楽園として作った世界で、陸上に生まれてきそうなネコの脅威になる種族を徹底的に排除し、順調にネコが進化していたが、海と水辺にリザードマンとして進化した種族が出てきて、このままだとネコが絶滅しそうなので、リザードマンを討伐してほしいという危険なものだったのだから、当然だ。


 ただ、咲は20歳になったし、超優秀な咲自身が望むことを自分が止めるというのも気が引ける。


 正直、異世界転生自体には興味はあったし、まして、「ネコやモフモフが満喫できるという世界に興味がないものがいるだろうか、いや、いない!」と反語で強調するほどにモフモフの世界は大好物ではある。


 こんな本心を咲に知られたらドン引きされ、ますます雑魚呼ばわりされるので、欠片も本心は晒さないが。もっとも、大豆の薬を作っていそうなネコの神様にはお見通しのようで、呆れ顔をしていた。


 意趣返しに、ネコの神様をマリン様と名付けることにした。神様なのに、海のことを忘れる抜けた神様であれば、それでも過分な名前だと思うが、呼びかけられる度にご自身の失敗を思い出していただこう。


 咲が圧倒的な交渉術いつものチートを発揮して、猫神様マリン様から面白い条件を引き出しているのを見ながら、まぁ仕方ないかと最長5年の異世界行きのツアーに参加申し込みをすることにした。

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