第二章 ラスボス、冒険者を救う(一回目)③
「――本当だ。食べられそうな植物もたくさんあるけど、ことごとく毒があるな」
ダンジョンの外に出たオレは、周囲に広がる森の様子をスキル【探知】と【鑑定】で探ってみることにした。
『はい。ですので一般市民は手を出すことができません。これらを食するには、高度な解毒スキルが必要となります』
「そういやMPがあるってことは、スキルとは別に魔法もあるんだよな?」
『はい。スキル持ちは5%程度しかいませんが、魔力持ちは、使用できる属性や量を問わなければ70%ほどだと言われています』
――なるほど。
つまり魔力持ちは、スキルで賄えない部分を魔力で補うスタイルなのか。
でも、それすらできない残りの30%は……。
『スキルも魔法も使えない30%の人々は、多くは奴隷として売買されたり、大変な肉体労働や貧しい暮らしを強いられたりしています』
「……やっぱりそうなるよな」
さっき助けた冒険者の中に、一言も話さなかった少女がいた。
その銀髪の少女は、一人だけやたらと重そうな荷物を背負わされており、ほかのメンバーから少し離れたところに立っていた。
そして誰も少女と言葉を交わそうとしなかったのだ。
まるでほかの四人に少女のことが見えていないような、そんな違和感があった。
「……なあ、あの女の子ってやっぱり」
『はい。魔力なし、通称ノーアビリティと言われている人間です』
まんまだな!
――っていや、そうじゃなくて。
「70%が魔法を使える世界で魔力なしというのは辛いだろうな……」
オレは食料を探しながら、その銀髪の少女のことがずっと頭から離れなかった。
◇◇◇
「――よし、こんなもんか!」
ダンジョンの周囲を回っただけだが、それでもかなり多くの食料を調達することに成功した。
最初に入手した【スルメ】に加え、【セリ】【たけのこ】【山芋】【林檎】【桃】【ラズベリー】【ブルーベリー】【岩塩】、それからスライムの時と同じく、突然襲い掛かってきて勝手に死んだ鳥の
ようなモンスターから【鶏肉】も手に入れた。
とりあえず、これだけ手に入れば上出来だろう。
「日も傾いてきたし、今日はもうダンジョンに戻ってゆっくりするか」
スキル【料理】も極めたいし。
入手した食材をアイテムボックスにしまい、ダンジョンへ戻ることにした。
「周囲を把握したいし、歩いて帰ろう」
『かしこまりました』
この体、不思議なくらい疲れないし!
「今日の夕飯は何にしようか」
『私は食事を必要としませんので分かりかねます』
「なんかレシピ候補とかないのかよ……」
『申し訳ありませんが、そういった機能は搭載されておりません』
「おまえ結構ぽんこつだよな」
『私がぽんこつなのは、私のせいではありません』
「いやまあそうだろうけどさ……」
メカニーと、そんなどうでもいいやり取りをしながら歩いていたその時。
「グォオオォォオオオオオオ!」
突然、モンスターの唸り声が聞こえてきた。
周囲を見回すと、少し離れた位置にある木に向かって吠えている、巨大猪のようなモンスターがいた。
そして、そこには……。
「あれは――」
そこにいたのは、さっきの銀髪の少女だった。
周囲には、破れた巨大なリュック、それから多数のアイテムが散らばっている。
少女は木の幹に張りつき、ガクガクと震えていた。
モンスターは大きな猪のような見た目をしていて、今にも襲い掛かりそうだ。
その様子を見て、オレは考える前にその場に飛び出していた。
スライムもさっきの鳥も、オレに触れる前に勝手に死んだ。
だったらあの猪だって、もしかしたら。
それは無理だったとしても、少女を助けるくらいはどうにかなるかもしれない。
というか、どちらにせよ見殺しになんかできない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます