御手洗 渉

準備頑張りなさいよ

 やあ、皆さん、おはこんばんちわ。

 御手洗 渉です。江の島東中が誇る地味ーズの一人です。

 え、皆さんって、誰かって?

 それは、これを読んでるあなたのことですよ。

 ああ、何、メタ的なこと言うなって?

 しょうがないじゃないですか、いきなり俺に語り部が回って来たもんで、何からやったらいいか勝手が分からないんですよ。

 だから、とりあえず読者の皆さんに話しかけてみた訳です。

 中々、派手な演出ではないでしょうか。

 まあ、読者の皆さんとの語りもこのくらいにして、ストーリーを進めるとしますかね。



 体育祭が終わると、江の島東中は文化祭ムード一色になります。

「文化祭準備で忙しいと思うけど、練習はいつも通りやっていくわよ」

放課後のサッカー部の部室では、いつも通りミーティングが行われています。

次は地区大会三戦目、これに勝ったら藤沢地区ベスト4になります。

ホワイトボード上に映された偵察ビデオを見ながら、水瀬が説明していきます。

「次の欅学園戦で、注意すべきはキャプテンでFWの野崎。彼をフリーにしないこと」

 水瀬はマンツーマンディフェンスの練習として、DFとキーパーに反復横跳びやラダーの練習をさせています。ラダーというのは、はしごのようなもので、横に寝かせて使います。ステップの練習に役立ちます。

 まあ俺達MFとFWは、キャプテンの寿主導で、いつも通りのランニングやドリブル練をしていましたが。



話は変わりますが、俺のクラスは文化祭で男女逆転喫茶なるものをやります。

サッカー部で同じクラスなのは水瀬と南雲です。

今は衣装合わせをしています。

「きゃあああ、青葉ちゃん、カッコいい‼」

 執事服を纏い、女子からの歓声を一身に受ける水瀬。

水瀬の男装は本職の執事かのように様になっていました。

対する俺は女装です。メイド服。

「地味に可愛いのが何かムカつくな」

南雲は浴衣を着ていますが、全く似合ってません。ゲテモノ枠です。

メイクしてもコウメ太夫みたいにしかなりません。クラスの女子が落胆しています。


 文化祭準備は5、6時間目と放課後に割り当てられていますが、部活がある俺達は準備を途中で抜けてサッカー部へ向かいます。

 階段を降りると、睦月がいました。

「なあなあ、旭先輩、俺達の展示見に来てくれよな」

「ああ、お前、展示やるのか。暇だったら見に行ってやるよ」

 文化祭は文化部の大事な見せ場なので、睦月も、ここ数日はギリシア神話同好会と並行して忙しそうにしています。俺も時間があったら見に行ってあげようと思います。

「あっ、青葉先輩、俺、今日はギリシア神話同好会の方に先行くから、サッカー部の方行けないかも!」

「分かったわ。寿にも伝えとく。準備頑張りなさいよ」

「うん!」

 睦月が元気いっぱいで走り去って行きます。



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