イベント
第38話イベント詳細①
「すまない」
それが俺が堀川正敏、総理大臣と初めて会って言われた言葉だ。
「我々、日本はリリーさんをリリーナ・シャトレーゼ殿下と同一視しない。これは日本政府の総意。君は空野リリー。我が国に所属する守るべき日本国民となる」
それを聞いたリリーは涙を流す。俺にはリリーの今の心情が推し量ることはできない。
しばらく、この部屋にはリリーの泣き声が響いた。
リリーが落ち着きを取り戻したのを確認し、俺は堀川総理に聞く。
「リリーの身柄は?」
「…我々はリリーナ・シャトレーゼ殿下を守れなかった負い目がある。守る国民と言っておいてすまないが日本がリリーナ・シャトレーゼ殿下の祖国との疑似戦争をし、負けた場合、我々は多額の賠償金と貿易品の関税の引き下げ、犯罪者として空野リリーの身柄の引き渡しをしなければならない」
「すみませんが、先ほどからおしゃっている疑似戦争とはなんですの?」
「君らはダンジョンにいたため、疑似戦争については知らないんだったな。まずはステータス欄を開いて見てくれ」
そう言われたため、俺達はステータスを開く。
「ステータスの一番下に新しくイベント詳細のお知らせがないか?」
「ありますわ」
「これは、ライアンハンターが新しく魔法を生み出したため、システムの機能が増えたと考えられている。プレイヤーなら聞こえたはずだ。システムが第二フェーズに移行したことを」
あれ、空耳じゃななかったんだ。でも、なんで俺が新しく魔法を生み出したことになっているんだ?それを聞いてみると帰ってきた言葉に俺は驚愕を覚えた。
「ほ、放送されてただと…」
じゃあ、俺がリリーを見捨てて、ダンジョン攻略をしようとしている姿を見られたのか。
だ、大丈夫だ。俺はリリーを最終的にた、助けているし感謝もされている。
「あぁ。犯罪組織、フロルサーカス団がいくつものテレビ局を占領し、ダンジョン内の様子を流していたんだ。これは君たちには知る必要のないものだが、近々、ニュースで知ること思うので伝える。テレビ局を奪還した時にはテレビ局にいたとされている人達はもう全員亡くなっていた」
「…いいえ。わたくしは知る義務がありましたわ。教えて下さり感謝します」
リリーが深刻そうな顔をしているので俺はつい、俺らしくないことを言葉にする。
「リリーのせいじゃない」
俺がそう言うとリリーは驚いた顔をするが次の瞬間、泣きそうに言う。
「えぇ。分かっておりますわ。フロルサーカス団が罪なき人々を虐殺した大罪人です」
リリーは一度、目を閉じ、覚悟を決めた顔で宣言する。
「わたくしはわたくしを陥れ、大勢の市民を殺したフロルサーカス団を許すことはしませんわ」
「あぁ。必ず罪を償わせなければならない」
フロルサーカス団への思いを確認してから、俺たちは戦争に話を戻す。
「で、戦争とは何か?に戻るが、イベント詳細に書かれているように、どんな病も完治させるエリクサーを景品とした疑似戦争イベントが、3ヶ月後に行われる。参加者はシステムが国だと認めた国の代表15人が代表となって戦う」
あぁ。話が見えてきた。
「殿下の死の原因は犯罪者どもの証言でリリーナ・シャトレーゼ殿下の祖国と分かっている…」
堀川総理は、リリーを見てそれ以上言葉を繋げないが、リリーナ・シャトレーゼとリリーは同一人物なのに犯罪者として扱うリリーナの祖国を見て、犯罪者の言葉が真実だと理解したんだろう。
「我が国はそれを訴えたが、言い分は通らなかった。逆に要求は大きくなるばかりだ。そんな中…」
「他国が介入した」
「そうだ。あちらの国と我が国が意見が平行線のまま時間が過ぎるばかりだから、他国が仲裁役として、落としどころを決めた」
「戦争で勝った国の意見が受け入れられるのですのね」
「…これを受け入れてしまえば、これから守られるべき国民の権利が脅かされる。最初は断っていたがが、我が国は結局は他国の圧力に負け、受け入れなくてはならなくなった」
ままならないなと思いながら。俺はずっと疑問と思っていたことを聞く。
「黒服…俺の身柄を要求した」
「そうですわ。今の話を聞くとライアンとリリーナ・シャトレーゼは無関係じゃないですの!」
「殿下の祖国はライアンハンターの新魔法や戦力に目をつけて、ライアンハンターを欲したのだろう。だが、それは他国が全力で阻止した。ライアンハンターの身柄は心配しなくていいが、逆に他国が接触を測られると思われる」
め、めんどくさ。
「まぁ、我が国は権力でライアンハンターを縛ることはしないから安心していい。」
日本に生まれてきてよかったことがまた増えたな。
「戦争では、あちらの国から要求があった」
「要求ばかりですわね」
「それに関してはしょうがないとしか言えない。戦争の参加者に空野リリーを入れることだ」
「あちらは、どうしてもわたくしを殺したいのですね」
「あぁ。こちらが勝てば、日本国民をないがしろにしないことや我が国はリリーナ・シャトレーゼ殿下の死とは無関係だと認めることを誓われたからな」
それに対してリリーは自然の摂理を言う。
「強者が自由も略奪も許されるのですのね」
「…。」
堀川総理は何も言わないが悔しそうに頷いている。許せないのだろう。
「我が国は何としても勝たなければいけない。だから戦争に参加する選手には、勝った暁にはエリクサーを自由に扱う権利と、3億を懸賞金として出す」
懸賞金は少ないと思うがエリクサーを売れば、もっと大金が得るだろう。
「そして我々は、2週間後にハンターに所属するプレイヤーに対して実力測定を行うことを決定した」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます