第29話祝福魔法


「な、なにを言ってらっしゃるの?」

「もし、王位も地位も名誉…捨てて、普通の女の子に近づけるならどうする?」



「!?」

「可能性があるだけだけど…」

「本当ですの?」


俺は頷く。



「その変わり、代償は高い」

俺がそう言うと、縦ロールは俯くが直ぐに顔を上げて、覚悟を決めたように言う。


「覚悟は決めてありますわ」


俺は階段の近くに荷物を置いて、焚火の準備をはじめる。

「休んでからやる」



そう言ってお湯を沸かし緑茶を入れる。俺はそれを飲みながらもう一つの緑茶を入れたマグカップを縦ロールに渡す。縦ロールも地べたに座ってマグカップを受け取って飲むが「し、しぶい」と顔をしかめている。



そのことに俺は気にせず、お茶を飲み続ける。

「これが日本人がたしなむ…緑茶しぶいけど、どこかホッとする味」

縦ロールはやっと顔を緩めた。



「それにしてもなにをやるんですの?」

「呪いをかける」

「の、呪い!?」

「複雑で解けなくなる」



「なんの、呪いですの?人体に影響がでるなんてことは…」

「それはない…ただの模様みたいなものだから」

「模様ですか…」



そんなもので自由になれるのかと俺に疑惑の目を向けてくるので、俺は利点を説明する。



ダンジョンで未知の呪いをかけられた娘に固執する権力者はいなくなると思うこと。呪いを理由に王位継承権の破棄が簡単にできるようになることや政治や社交場に顔を出さなくてよくなることを。



「確かに社交場での腹の探り合いは辟易してましたけど…」

俺はリリーが懸念する点を言う。

「誰も助けてくれなくなる」

「…そうですわ」



「プレイヤーになって強くなればいい」

「!?」

「弱いから奪われる」


リリーはダンジョンで実感したんだろう。強いものが尊厳も自由もあることを。



俺は呪いをかける準備を進めていく。



「脱いで」

「な、急に何を言ってますの!?外で淑女として裸になること非常識です!」


「裸違う。下着残したまま上だけ脱いで…呪いかけられない」

勘違いした縦ロールは顔を真っ赤にしながら上着を脱いでいく。



「これで…いいですの?」

「うん。後ろ向いて目つぶってて」



俺はまずリュックから前髪からもらった魔法補助の杖を取り出す。それを持ち、ありったけの魔力を体内で凝縮させる。


そして凝縮させた魔力を外に出し魔力を操作する。凝縮された魔力はプレイヤーでもない縦ロールが感じられるほどの力だ。



そこから闇魔法や呪魔法、付与魔法などいくつかの魔法を発動していき魔力に色が付き、目に見えて見えるようになる。


そこから魔法を絡ませて縦ロールの体にゆっくり時間をかけて編み込んでいく。




俺はただ、導かれれるまま縦ロールのリリーナ・シャトレーゼの資質が生かされるよう呪いをかける。


「ブレッシング」


ーどうかリリーナ・シャトレーゼの未来が幸福でありますようにー


魔法がかかると同時に辺りは眩しい光に包まれる。


 

〖告、全プレイヤにお知らせします。新しく魔法が創造されました。これより第二フェーズに移行します〗



そんな声が聞こえた気がするけど気のせいだよね。

「これが、わた…し」


手に手鏡をもった縦ロール、いや今は縦ロールではなくなったからこの際、リリーと呼んでおこう。



リリーの風貌はだいぶ変わった。黄金の瞳の色は変わらないが金髪は黒髪に縦ロールは俺が魔法の制御を誤って髪をストレートにする魔法にする呪いをかけてしまったでまっすぐの髪になってしまった。


だが、一番変わった点と言えば肌だろう。頬や腕、肩甲骨、足に黒い百合の紋章が浮かび上がっている。



ダンジョンで未知の呪いをかけられた娘に固執する権力者はいないと思うがこれで王位の破棄は簡単だろう。


ただ、このままでは権力を失っただけとなるのでリリーを鍛える。俺以外に負けないくらいに。



呆然としているところ悪いが次の段階に移行しよう。

「リリー、モンスター来た」


リリーと最初にあった時、リリーを襲っていたミノタウロスが俺たちの前に現れる。ここはセーフティーゾーンでもないからあたりまえだが。


ただ、階層を変える階段に逃げ込めばミノタウロスは襲い掛かってこれない。なぜなら、スタンピードやイレギュラーでは無ければ階層をモンスターは超えられないからだ。


「ひっ」

トラウマなんだろ。リリーは震えだす。だが俺はミノタウロスの腱や腕を切り落として、敵の動きをにぶくさせる。


ミノタウロスは武器を落として倒れこむが、灰にはならなかった。



「リリー。ここにあるもの使って倒す」



そう言って、リュックにあった木材、包丁や中華鍋、スキレット、短剣、調味料、油、布、缶や保存食を並べる。


それから俺はミノタウロスに近づきミノタウロス背に足をのせて力を入れた。そうすることでミノタウロスは動けなくなり、攻撃が出来なくなる。


「えっ」

「やる」


俺が、とどめを刺さない意味を知ったんだろう。リリーは震えながら短剣を持って少しづつ近づき、ミノタウロスの首に短剣を刺すが刃が通らず殺せない。



「不正解」

俺がそう言うとリリーは突き刺そうとしていた行動をやめる。


「もう一回考える」

リリーはこれで終わりではないと知ると絶望しながらリュックの近くで、広げった物品を見る。



ミノタウロスが出血死してしまうので早く、正解を見つけてほしいがダンジョンで生き残るなら知恵も必要だと思うので、俺は答えは言わずにただリリーを見る。



すると、リリーが何かに気づいたように布を手に取りその布を油をたらし、その布を木材の先端につけて、松明を作る。



「ど、どいてください」

俺は言われた通り退く。するとリリーはミノタウロスに油をかけ、松明で燃やす。



「グオォォーー」

数分後には灰と魔石がその場に残こされた。



リリーはミノタウロスが死ぬまで気を張っていたらしくミノタウロスが自分の手で倒されるとリリーは腰が抜けたように座り込む。



そんなリリーは先ほどと何かが違う感じがしたので、プレイヤーになったことが分かる。



「職業何が出た?」

「…サモナーと魔法師だけですわ」

リリーは虚空を見て何かを確認するとがっかりするように言う。



「魔法適正は?」

「回復魔法と闇魔法や呪魔法、付与魔法ですわ」

ん?回復魔法以外は俺が最も込めた魔法だが偶然か?



「なら、サモナー選択」

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