学園でも目立ちたくない①
本日快晴。
「じゃあ行ってくるよ父さん母さん。」
「気をつけろよ!年に一回は顔を見せろ、寂しいからな。」
「そうよ、長期休暇には必ず帰ってきなさい。」
「分かってるよ、行ってきます。」
両親に別れを告げ、いつもの待ち合わせ場所へと足を進める。
母さんはやはり寂しかったのか少し涙目だった。
「おはよう、ミア、ジン。」
「おはよー!昨日ぶりー!」
「今日から学園生活だぜ、楽しみだな!!」
先に着いていた彼らと挨拶を交わし3人で学園へと向かう。
「ボク家から出てくる時大変だったよ~、お父さんが泣いて泣いて……。」
「気持ちは分からんでもないけどな、可愛い娘が当分帰って来ないんだから泣くのは普通だろ。」
「まあそうだけどさ、もう凄かったんだよ。涙と鼻水で顔面が強烈だった。」
可愛そうにミアのお父さん。
ただ娘可愛さに泣いていただけなのに当の娘からは顔面が強烈と言われる始末。
3人で他愛もない話をしているともう校門が見えてきた。
あの門をくぐれば5年間の学園生活が始まる。
バレないかの不安と楽しみな気持ちが入り混じってなんともいえない気分だが、今はとりあえず楽しむ事を優先しよう。
目立ちたくなくても普通の学生のように遊んだりしたい。
校門を一歩超えると、学園に入学したと再認識する。
クラス分けは紙が張り出されており、3人でそれを見に行く。
案の定僕は一級クラスだった。
「ジンとミアはどこ?」
「俺は二級だな。」
「ボクも二級クラスだよ。マリスだけ別になっちゃったね。」
「なんだか除け者みたいで寂しいな。どうせなら二色魔導師ってことにしとけばよかった。」
「無理でしょ。ただでさえ何かとポカやらかすのに二色なんて二属性しか使えないんだよ?一瞬で嘘ってバレる気がする。」
散々な言い様だが何も言い返せない。
といより三色魔導師でやっていく今ですら既にポカをやらかしている状態なのだ。
「おお!マリス!!!こないだぶりだな!!!!」
聞き覚えのある声だ。
嫌そうに振り向くと金髪イケメンのフェイルが立っていた。
「フェイルおはよう。君は一級だろどうせ。」
「なんだどうせとは。喜ばしい事だろう。お前と同じクラスで良かったぞ、友達と学園生活……ふふふ楽しみだな。」
不敵に笑うフェイルは気持ち悪かったが、まあ彼も彼で学園生活に期待しているんだろう。
「初めまして、ミア・テンセントです。」
「は、初めまして、ジン・カッツバルクです!」
すると僕の横から2人が挨拶しだした。
そういえばフェイルは公爵家の人間だったなと今更思い出す。
「む、君たちはマリスの友達か?俺はフェイル・ワーグナーだ。知っているだろうが公爵家の者だ。」
「存じております、では私達は二級クラスですのでこの辺りで失礼いたします。」
「何?えらく他人行儀ではないか。俺とマリスは友達。君達とマリスは友達。つまりそういうことだろう?」
何がそういうことかわからずミアとジンは困った顔で僕に視線でどうにかしろと合図してくる。
しかし、僕もよくわからなかった。
「フェイル、意味が分からないけど。」
「む、なんだと。友達の友達は友達と言うではないか。」
「いや、聞いたことはないな。」
「そうなのか!?俺のメイドがそう言っていたのだがな……。」
それは適当に言われただけだよフェイル。とは言えないがまあ言わんことは分かった。
「要はミアとジンも友達だって言いたいんだろ?」
「そうだ!!!!」
「いえ、ボクらは男爵家の者ですし、二色魔導師です。友達など恐れ多い事です。ではこれで失礼します。」
めんどくさくなってサッサと逃げて行ったな。
この後処理は僕がやれってことだろうな。
「マ、マリス……俺は友達がお前しかいないのだ。」
「だろうね。」
「だろうね!?」
そりゃそうだろう、公爵家の者から友達になれと言われて素直に受け取るバカはいない。
フェイルの事をよく知らない僕みたいなやつか同格の相手だけだろう。
「ミアとジンからすれば友達になるメリットがフェイルにはないと思ったんだよ。僕だったらオリジナル魔法がどうのっていう目につきやすいものがあるから納得するけど、普通の人なら公爵家の人間から声を掛けられたら何事かと思うんじゃないの?」
「むむ、友達にメリットなぞ求めんだろう。」
純粋だなこいつは。
「いるんだよ、中にはね。格下の者を奴隷のように扱う貴族ってやつが。」
「なんだと!?誰だそれは!貴族の風上にもおけん!!俺が裁いてくれるわ!!」
良くわかったよ。君がいい人であると。
普通の貴族は男爵のような下の者を同等に扱わない。むしろ使い勝手のいい駒扱いだ。
「君は良い人だからそういう風に考えるけど、割とほとんどの貴族がクズだ。平民からは特にそう思われてるだろうな。」
「民の為に力を使うのが貴族だろう、意味がわからぬな。」
純粋でまとな家庭で育てばフェイルみたいな奴が生まれてくるんだろうな。
全ての貴族がこうであればこの国はもっと良くなるだろうに。
「とにかくジンとミアと友達になるのは諦めた方がいい。」
「しかし、マリスの友達なのだろう?ならば俺とも友達になってもらわねば困る!!」
腰に両手を当て胸を反らせる様は堂々としている。
「何が困るんだよ。」
「お前と遊びに行くと必ず気まずい事になるではないか!!」
なるほど、フェイルの頭の中では既に友達と遊ぶ光景が浮かんでいるらしい。
「大丈夫だって、その時はジンもミアも呼ばないし。」
そもそも公爵家の人間も遊びたくない。
目立つだろ絶対。
「むむ、それはそれで困るな。俺には友達を100人作らねばならないのだ。」
「なんで?」
「父上から言われているのだ、この学園生活で友達100人すら作れぬ者などワーグナー家の一員とは言えん、もし無理だった場合は弟に家を継がせると。」
恐ろしい試練だなぁ。
まあ普通だったら5年も学園に通うんだし、帝国一大きい学園だ。人も多い。100人の友達など作るのは容易だ。
しかし彼は公爵家。
どうしてもその肩書きが邪魔をする。
彼自身は凄い良いやつなのは分かったが、それとこれは別だ。
普通の人が公爵家から友達になろうと言われてまともに対応できるはずがない。
せめて伯爵以上であればなんとか会話はできるだろう。
ただ子爵や男爵、騎士爵となればもはや会話も難しい。
どうしたものかと考えていると、また聞き覚えのある声が僕の思考を遮った。
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