虹色魔導師は目立ちたくない⑩
「転移魔法って……マリネさん、使えるの?」
「いや、私は使えないよ。でも私には魔道具創造の力がある。だから1週間分の魔力を注ぎ込んで作ったのよ。魔道具を作る際はどんな魔法だって組み込めるからね。あ、もちろん藍色の魔力を持ってる者にしか出来ない事だけど。」
簡単に言ってるが、これは凄い事だ。
自分の使えない魔法すらも魔道具に付与する形であれば、どんなものでも付与できるという事。
藍色の魔力を持つ者が少なく重宝されるって聞いたことがあったけど、こういう事かと今更ながら納得した。
「そんな魔道具誰もが欲しがるでしょう。」
「そうなんだけどねぇ、かなり作るの苦労したからさ金額も高く設定してるのよ。」
「いくらなの?」
「虹金貨1枚。」
「は?」
レイさんの間の抜けた返事になったのも良く分かる。
虹金貨1枚は白金貨1000枚と同等の価値があるからだ。
もはや見ることすら叶わない硬貨といえる。
硬貨が虹色に輝いて見える特殊な金属を使っている事から虹金貨と名付けられたそうだが見たことはない。
もしそれを手にできるとすれば、公爵家レベル。
いや、公爵家ですら気軽に出せる額ではないはずだ。
それがこの指輪1つの値段だと言われれば僕も開いた口が塞がらない。
「転移魔法が使えるのよ?そりゃこれだけ高くてもいいでしょうよ。ま、今の所買った人は居ないけどね。」
「高すぎよ……公爵家ですらその虹金貨は簡単に出せるものではないわ。国が動くレベルの金額よ?」
「転移魔法だからね。誰も使えない究極の魔法。かの伝説と呼ばれた初代皇帝だけが使えたと言われる魔法だよ。虹金貨出しても欲しいって人は必ずいると思うけどなぁ。」
確か初代皇帝は虹色魔導師だったという伝説が残っている。
だとすれば、僕も訓練すれば使えるようになるのではないか?
なんとなくそう思ったが、それは僕だけではなかったようだ。
全員の目線が僕に向いているからだ。
「マリス……貴方ももしかしたら使えるかもしれないって事よね……。」
「あーそうですね、僕もそんな気がします。今はまだ無理ですけど。」
「マリス君は虹色ってことは藍色も持ってるのよね?じゃあ私と同じ様に魔導具造れるわけじゃない!転移魔法の魔導具作って大安売りとかやめてよ!?商売上がったりだわ!!」
「し、しませんよそんな事。大体そんな事したら誰が作ったんだって制作者探しが始まっちゃいますよ。」
目の色変えて肩を揺さぶられるが、そんな事するわけがない。
それこそ目立ついい的じゃないか。
「ま、それもそうか。いやぁ虹色の魔力を持つ者がマリス君で良かったぁ、これがもし権力や富に固執するやつならその力を思う存分振るっていたでしょうしね。」
「マリスのいい所ね。凄い力を持っているのにそれでいて横暴に振舞う事のない人格者。そういう所は私好きよ。たまにイライラさせられるけれど。」
いい感じに締めるのかと思ったら最後の一言は余計だった。
ジンとミアも最後の部分を聞いた途端激しく頷いているし。
あらかた見終わり全員の買い物が済んだところで店を出ることにした。
「また来てよ3人共。私はいつもここにいるから何かあったらこのお姉さんを頼りなさい。四色魔導師で創造の魔女の名は伊達ではないわ。」
「ありがとうございました。レイさんもこんな凄い方を紹介してくれてありがとうございます。」
「ま!どっちかといえば私が感謝したいくらいだけどね。虹色魔導師と生きてるうちに出会えて良かった~ってね!」
魔道具の種類も豊富で、説明も分かりやすかった。
それに僕の秘密を共有する仲間が増えた事は嬉しい事だ。
何かあればすぐに頼ろう。
「さあ帰りましょうか。」
店を出て帰路を4人で歩く。
ジンとミアもそれぞれ自分に合った魔道具を買ったみたいだ。
お金は全部なくなってしまったけど、いい買い物ができたと思う。
「そういえば言い忘れていたわ。ジンとミアだったわね、貴方たちも私に様付けしなくていいわ。」
「え!?いやそういうわけには……。」
「マリスとは友達よ。その友達が信頼する2人なら私とも友達になりましょう。それに秘密を共有する仲間でしょ?」
「そういうことなら!よろしくお願いしますね、レイさん!」
「よろしくっすレイさん!」
「敬語もほんとはなくてもいいんだけど、マリスも何回言っても辞めてくれないしね。ま、それは追々でいいかしら。」
入学前に同性の友達ができて嬉しかったのかミアはずっとレイさんの隣で話に花を咲かせている。
ジンはというと、美少女に対して照れているのかもじもじ君になってしまった。
どうせならこの4人で同じクラスになれればいいけど、多分無理だろうな。
僕とレイさんは恐らく一級に割り振られるだろうがジンとミアは二色魔導師だ。
必ず別クラスに振り分けられてしまうだろう。
同クラスになる可能性があるのはあと2人いる。
フェイルとロゼッタだ。
あの2人も確実に一級クラスに入ることになりそうだ。
明日からの学園生活に心なしか楽しみになったマリスは珍しくにこやかな笑顔を浮かべていた。
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