経験値 終

そういえば、黒崎の土下座にも従わなかった。お前みたいな雑魚が、一丁前にプライドでも持っていたのか?

 俺と黒崎が果たせなかった目標。俺たちの仲が引き裂かれたそもそもの原因。

 あんなちっぽけで、何もできないような女が、どうして一人だけ勝ち組みたいになっている?

 そんなのは許せない。これは俺たちがやり残した最初にして最後の目標だ。


 愛原を壊す。それを実現してやった。


 簡単だった。放課後、一人で教室に残っていたあの女を襲ってやった。

 抵抗する気力を無くすように、散々暴行した後、好き放題してやった。

 そして最後、黒崎からもらった注射を三本、全て愛原にぶち込んでやった。

 精神が崩壊した愛原は、不気味に笑いながら、教室を出て行った。

 そしてその日から、彼女を見た人物はいない。そう、愛原も『行方不明』となったのだ。


 思い出しても浅はかすぎる行動だ。でも、あの時の俺は自分が『無敵』という謎の自信があった。何をしても成功する確信があったのだ。

 事実、俺は罪に問われなかった。もう一度言うが、その結果が全てだ。

 瀬戸と愛原についてフェイク情報を流して、瀬戸に罪を擦り付けるよう図ったのだが、これは残念ながら失敗した。この国の警察は優秀だったわけだ。

 ちなみに奇しくも愛原と黒崎は『同じ日』に行方不明となった。

 これは偶然? いや、違う。俺は一つの仮説を立てた。


 黒崎を殺害した『本当の犯人』。それはきっと、薬で狂ったあの女が……


 いや、やはりどうでもいい。全ては十年前に終わった事だ。

 確かに謎はまだ残っている。



『十年前のあの日、黒崎に何があったのか?』『死体が見つからないのは何故?』

『愛原はどこへ消えたのか?』

『引っかかるが、思い出せない『アキ』という男は誰なのか?』



 以前、黒崎は一度だけ『死にたくない』と言った。どういう意図でそれを口にしたのだろう。

 結局その望みは叶えられなかったわけだが、そんな黒崎がどんな最後を迎えたのか。

 気にはなるが、今更な話だ。男や愛原に関しては、全く興味も無い。

 ちなみに黒崎の父親も半年ほど前に失踪した。おかげで世界的大企業だった黒崎カンパニーも先月に倒産。


 ライバル会社だったので、消えてくれて助かった。これにて我が社がトップだ。

 あの日から俺は何をやっても上手くいくようになった。あの出来事は俺にとって最高の『経験値』となったのだ。

 今では五人もの美人と体の関係を持っている。

 もちろん、その女たちもまとめて経験値にして捨ててやる。そうして俺は更に成長する。

 謎は残るが、一つだけ確かな事がある。

 このゲームの勝者。それは黒崎でも瀬戸でも愛原でもない。

 口を歪めて宣言する。


「俺だけが、ただ一人の勝利者だ!」





赤川大地編………終わり


次回、最終章→黒崎瑠美編

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