第11話 キリ、戦士になる
冒険者ギルドで、現在のダンジョンの様子を聞くと、安定はしているけど、調査が終わっていないから、あまり深層には潜らないようにと注意された。今回は、第12階層ぐらいで、止めておくことにした。それ以上は、調査隊ですらまだ潜っていないようだ。
私達は、いつものように、ダンジョンの入り口で、係員にIDを見せ、通行料を渡した。
「さあ、いくわよ。今日は、あなたは戦士に専念してね」
「はい、キリ姉、私、頑張ります」
私達は、一気に第5層まで到達した。ここでは、キリ姉の範囲攻撃で、ワーウルフを殲滅しながら進んで行った。第6層では、オークが複数いたが、特に問題なし。
2人で、どんどん倒しながら、いよいよ第9層まで、やってきた。
ここからは、少し強い魔物が出るようなので、用心しながら進んで行くことにした。
1日で、ここまで、これたので、予想以上のハイスピードだ。
冒険者ギルドで聞いた所によると、オーガやトロールなどの巨大魔物だけでなく、ナーガや武装したスケルトンも出没するようだ。また、以前苦戦したサーペイントも出没している。
「ここからが、本番よ。いい」
「はい。準備します」
と言いながら、スキル探索を発動した。ここからは、少し面倒だけど、常に探索を発動しておくことにした。まずは、第9層全体を絶対座用として頭の中にイメージした。点在している赤色の明かりが魔物だ。円形の大きさで魔物のレベルがわかる。第9層では、右上隅の(500,800)の位置にいる魔物が一番大きい。これは、ナーガのようだ。レベルは40までだ。これ以外は、レベル25までのオーガや、レベル30のトロールが居るだけだ。サーペイントや武装したスケルトンは見当たらない。
私は、キリ姉に探索結果を報告した。
「わかったわ。ナーガまで、直線的に移動しましょう」
「はい。行きますね」
私は、歩く速度を上げて、小走りで、目標座標の位置へ向かって進んで行った。
途中で、オーガに出くわしたが、剣で両断できたので、そのままの速度で進むことが出来た。
「トロールが3匹います」
「わかったわ。あなたは、盾で、敵の攻撃を受け止めて。その間に、
「はい。行きます」
私は、キリ姉の指示に従って、先頭のトロールに向かっていった。3匹のトロールは、私に同時に攻撃してきた。まるで、キリ姉が居ないかのような反応だ。私は、気にせずに盾で防御しながら、剣で攻撃した。剣で切ることは出来るが、瞬時に回復していく。トロールは回復が早いので厄介だ。
暫くすると、キリ姉が
「いい感じね。本当のタンクみたいよ」
「はい。頑張ってます」
「次、行くわよ」
途中の魔物を倒しながら、いよいよナーガの前までやってきた。ナーガは、半透明になって、見ずらいが、私の探知で、位置は明確だ。キリ姉に、以前作った酸と毒の瓶を用意してもらった。ちょっと、試しに使ってみようと思った。
「どちらがいい? 先に酸をぶつけて」
「いいよ。いつでも開始して」
「はい。行きます」
と、キリ姉に声を掛けて、私は、ナーガに飛び掛かった。ナーガは、私に
「カン、カン」
「ガン、ガン」
剣をぶつけ合いをしている合間に、キリ姉がナーガの頭上に酸の入った瓶を投げた。
ナーガが剣で、その瓶を割ると、中の酸がナーガの頭上から降りかかった。
「ギャー」
と、ナーガが呻いた。一瞬ナーガの両手が頭上に上がった。その隙をついて、ナーガの胴体を剣で両断した。ナーガを倒した。
私達は、戦利品を回収してから、一つ上の階層に戻り、休憩所の小屋で泊ることにした。
小屋には、私達は以外に2つのパーティーがいた。私は、戦士の装備から、黒魔導士の装備に変更していたので、ちょっと変な目を向けられた。
「お前たちは、黒魔導士だけのパーティーか?」
「しかも、女の子だけで、大丈夫か?」
「よく、ここまで潜って来たな」
2つのパーティーから、矢継ぎ早に声を掛けられたが、私達は、気にせず小屋の係に今日1日泊ることを伝え、2人分の料金を支払った。小屋は、複数の部屋に分かれており、5つぐらいのパーティーなら、同時に泊まっても十分だった。
「201号室、2人一部屋だ」
と係員がカギをキリ姉に渡した。
私達は、振り向きもせず2階の部屋の中に入った。
「やれやれ。やっぱり、目立ってしまうね」
「はい。でも、仕方ないね。戦士と思われると、後々不味くなりそうだから」
「そうね。あなたの能力は隠した方がいいわね」
少し早い夕食を取りながら、明日のことを話し合った。今回は、第12階層の休憩所の小屋を確認したら、戻る予定だ。
第9階層は、ナーガ以外に、強い魔物はいないので、明日は第10階層から討伐を始める。
第10階層、第11階層は、これまで現れなかった武装したスケルトンとサーペイントを討伐する。
武装したスケルトンは、どんな装備をしているかによって、レベルが決まる。つまり、装備のレベルがそのまま、スケルトンのレベルになる。装備がなければ、角ウサギレベルだ。
サーペイントは、毒を避けながら、あの鱗に覆われた胴体をうまく切れるかどうかにかかっている。
リチャードの両手斧ですら、一回では切り落とすことが出来なかったので、私の片手剣で、どの程度の傷を与えられるかが問題だ。こればかりは、やってみないと分からない。過剰な心配は無駄だ。
簡単な打ち合わせの後、2人は、明日に備えて、寝ることにした。
「疲れはない?」
と、キリ姉が聞いてきた。今日は、気持ちよく寝ざめることが出来た。
「はい。元気です。いつでもいけるよ」
「じゃぁ、早速、行きますか」
2人は、元気よく小屋を飛び出し、途中で出くわしたオーガを倒しながら、第10階層に到達した。
第10階層をまた、絶対座標で探索した。すると、ここでは、普通のスケルトンがうろうろしているだけだった。予想していた武装したスケルトンは、見当たらない。
「変だな。普通のスケルトンしかいないよ」
「本当? もう一度、探索してみて」
「はい、やってみます」
私は、もう一度、スキル探索を発動した。でも、先ほどと同じで普通のスケルトンしか、感知することが出来なかった。
「やっぱり、いっしょだよ」
「そう、仕方がないね。そのまま、第11階層に潜りましょう」
「はい」
私達は、変だなと思いながらも、予定通り、第11階層に潜ることにした。
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