第21話 自宅学習

 目が覚めると、外は真っ暗だった。時計を見ると午後六時近い。二時間以上眠ってしまったことになる。

 ももかは起き上がってカーテンを閉めると、机に向かった。


 勉強するのか。

『うん、パパに認めてもらわないとね』

 無理はするなよ。

『無理はしない』


 まず、数学を勉強する。入院中にも数学はやっていたから、俺がどうこう言わなくても順調だ。


『数学の復習は、ここまでね。次どうしよう』

 ふつうは他の教科の復習だが、数学の予習をするっていう手もあるぞ。

『どうして?』

 まずだな、復習中心だと、復習してわかんなかったらアウトだろう。予習しておけば、授業で疑問点はだいたい解決できる。あと、授業でどの内容に集中したらいいかあらかじめわかる。

『なるほど』

 あと、ももか女子校だろう。どうしても数学や理科の授業が受験には弱いんだよね。医師を目指すんだったら数Ⅲまでやんなきゃいけないけど、多分学校のカリキュラム通りに勉強してると、入試対策間に合わないと思う。

『じゃ、数学予習する』


 ももかの決断は早かった。


「ももかー、起きてる? 夕ごはんにするよ」

 しばらく予習していると、伯母さんがそう言いながら、部屋にやって来た。

「うん、今行く」

 ももかが返事すると、伯母さんが中に入ってきた。

「あらももか、勉強してたの?」

「うん、予習・復習しないとね」

「そうね、がんばろうね。でも、今は下に来なさい」

「はーい」


 ダイニングには食事が用意されていたが、伯父さんはいなかった。

「パパ、まだなんだ」

「さっき電話があってね、遅くなるから先に食べててって」

「パパ、早く帰ってこないかな」


 夕食を食べ、少し休憩してまた勉強だ。英語とか歴史とか復習する。


「ももかー、お風呂入んなさ-い!」

 下から伯母さんの声がする。

「はーい」

と返事しながらも、ももかは英語の辞書をまだ調べている。


 おいももか、もうだめだ。風呂だ

『何、私の裸見たいの』

 バカ、もう遅い時間だ。勉強も大事だが、睡眠も大事だ。八時間は寝ろ。

『しょうがないなぁ』


 ももかは思い切って辞書を閉じ、勉強机の電気を消した。


 風呂に入って髪を乾かしていたら、伯父さんが帰ってきた。

「パパ、お帰り」

「ただいま、まだ起きていたのか」

「ごめんなさい。すぐ寝る」


 実際かなり疲れていたので、すぐ寝付いてしまった。


 次の日も、ほぼ同じ一日だった。帰りのホームルームが終わるとちょっと寝て、起きたところで夕食まで勉強、夕食後もまた勉強だ。


 風呂上がり、ももかは聞いてきた。


『コウイチ、当分こんな感じでいいのかな。勉強足りてる?』

 足りてはいない、でも一番の問題は体力不足だ。

『勉強してると、お散歩に行く時間無いんだよね』

 でも体力つけないと、今のまんまだぞ。

『勉強減らしてでも、お散歩行ったほうがいいかな?』

 そうかもしれない。今度藤沢先生に聞いてみようぜ。

『そうする』

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