第15話 初詣

 商店街を抜けたら、このまま真っ直ぐ進むと神社の看板のある交差点まで道はわかりやすい。しかし実際はここで右に折れ、住宅街を通ったほうが近い。わかりにくいけど。

 もちろん伯父さんはわかりやすいルートを選ぼうとした。


「パパ、多分、こっち行ったほうが近いよ」

「ももか、よく知ってるな」

「う、うん」

 俺の思考を呼んだももかは、近道したいらしい。体力ないし。

 

「ももかがいいなら、いいんじゃない?」

 伯母さんは優しい。

 

『怖いときは怖いんだよ』

 そうなのか。おとなしくしてよう。

『ま、私次第だけどね』

 かんべんしてくれよ。つぎ左だぞ。

 

「あ、ここ左」

「ほいほい」

 伯父さんは軽くついてくる。

 

 次は右だ。すこしで着く。


「ここ右」

 神社が見えた。

 

 地元密着型神社なので、人影は少ない。テントが出ていて、甘酒をふるまっている。

 

「まずはお参りしないとね」

 甘酒に目を奪われるももかと伯父さんを引っ張るように、伯母さんが注意してくる。ま、俺も体を温めたくはある。

 

 お賽銭箱の前はだれも並んでいないので、すぐにお参りできる。ももかは財布を取り出し、もらったばかりのお年玉の一万円を、いきなり賽銭箱に入れた。伯父さん、伯母さんは目を見張って桃家を見ていたが、二人も一万円ずつ入れた。

 

 礼をして、お祈りする。

 神様ありがとうございました。ももかは元気になりました。

『神様ありがとうございます。私、元気になりました。コウイチとも一緒にいます!』


 ももか、あんなにお賽銭、いいのか。

『だって、コウイチも持ってたお金全部入れたんでしょ。気持ちだけはまねした」

 そうか。ま、俺もお礼できてよかった。

『お賽銭出してないけどね』

 それは仕方ないだろう。

 

「甘酒、いかがですかぁ~」

 地元の人だろう、甘酒を配布している。三人でもらって、早速いただく。

 

『火傷しそうだね』

 ああ、あついな。でもあたたまるな。

 

 ももかの視線は、自然と神社の建物にむかう。屋根のなだらかな曲線、突き出た部材に目が行く。

 

 ももか、神社の建物に興味があるのか?

『興味があるっていうか、神様、あそこに住んでるんだよね』

 多分。

『どんな住心地なのかな?』

 中はシンプルだぞ。

『だろうね』

 俺、神社の建築がでてる本持ってるぞ。

『見たい』

 正月明けにでも、オレの部屋行かせてもらおう。

『うん』

 あ、俺、行きたくないかも。

『なんで』

 フィギュア見たら、未練が出そう。

『そっちか』


「ももか、楽しそうだな」

 伯父さんが聞いてきた。

「うん、気になってたんだ。この神社に早く来たいなって」

「パパは、ももかが嫌がるかと思ってたよ」

「コウイチが頼った神社だよ。嫌なわけ無いじゃん」

「そうか」


 ベンチがあいたので、座らせてもらう。疲れてきてはいるので助かる。

 

「ももか、ちょっとパパと待ってて。私、あれ、買ってくるわ」

 伯母さんが指差す先に、御札が売られていた。たしかに買わねばなるまい。

「おい、それは家長である俺が行こう」

「それもそうね、お願い」

 

 ちょっとだけ、伯父さんがかっこよく見えた。

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