第30話 旅を楽しむクエストだす
次の日、きらめく朝日がこの旅を祝福してくれています。
「新しい町はワクワクしますね」
「でもぉチャーチルさん、また怒っていましたねえ」
カーラは浮かない顔でボソリと呟きます。
今朝の見送りのことを言っているのでしょうか。
「おかしいですねぇ。銘酒・
「そりゃこの格好ですよ。タッパくんもそう思わない?」
「うん、バカンス気分を丸出しだもん。これじゃあチャーチルさんが、
そこでしたか。
久しぶりの遠出がうれしくて、やっと見つけたアロハシャツ。
せっかくなのでと二人にも渡しました。
ですがそれが裏目にでましたか。いやぁ申し訳ないですな。
「まあ、チャーチルさんには、お酒のお土産を買って帰りましょう。それで機嫌はなおりますよ」
「そうですね、チャーチルさんですもの」
「チャーチルさんって、チョロいもんね」
これでこの件は終わりにします。いつまでも引きずってはいられません。
だって旅なんですよ。楽しまなくてはなりません。
まずはレンタル屋さんで、借りる馬車を選びますよ。
「ふわぁ、お兄ちゃん。いっぱいあるねえ」
「予算は気にせず、しっかりと吟味して下さいよ」
「はーーーーい」
はじめは乗り合い馬車も考えました。
でもね、座席が堅すぎて、お尻さんが泣きだしましたよ。耐えられません。
「うわっ、お兄ちゃん、これって凄いよね!」
「おおお、なかなか派手ですな」
「うん、こんなのってまるでお姫さまの乗り物よー。絶対にこれ、師匠これにしましょうよ!」
吟味するどころか、全員一致の即決でした。
最高グレードの二頭だて、白地に青とピンクそれに金のカラーリングが心を軽くしてくれます。
値段は金貨10枚でしたが、
内装は豪華だし、自動運転やらもついていて、めっちゃ楽チンできますもん。逆に安いとさえ思います。
最近はお金に余裕ができて、行動範囲が広がりました。
今までに行かない所へ足を運んだり、必要とする物が増えたりと。
これは必然なのです。決して無駄遣いではありません。
服装だってそうですよ。汚ないより小綺麗な方がいいですもん。
「では、出発しましょうか」
「イエーイ、レッツゴーーー!」
あらあら、カーラさん浮かれていますね。お姫さま気分を味わうために、わざわざ着替えをしましたか。
そんな楽しい旅の始まりです。
ですが。
「えっと、なぜ横並びに座るので? 向かいの席は空いておりますぞ」
両サイドを二人にとられ窮屈です。
「えー、こっちの方がたのしーよ。そうだよねー、カーラちゃん」
「ええ、密着具合が最高ですよ」
「は、はあ」
府に落ちません。
ですがこれを拒否しようにも、二人の可愛らしさがジャマします。
馬車が揺れるたびに、ウサミミやタッパくんの尻尾が当たるのです。
もー、何これ。最高ですよ。
くすぐられる心地よさに、脱力感が襲ってきますな。抵抗力などできませんよ。
「ま、まあ良いですか……ねっ」
そうですよ、旅は楽しくするものです。このまま行くのがベストですな。
町を出て日を
いつもは出会わないモンスターや、見たこともない景色。これぞ、私が求めていた冒険ですよ。
狭い町の中だけでは、味わうことはできない事ばかりです。
遠くのワイバーンですら好ましく思えます。
ふぅ、これこそ異世界、感無量ですな。
「タッパくん、あそこに巨大バッタがいるわ!」
「すごいよ、捕まえようよ」
「倒すにきまっているでしょ。3mもあるモンスターなんて飼えないわよ」
「そっかー、残念だね」
クエストでの旅ですが、2人も楽しんでいますね。
狩り自体が久しぶりですし、いつもと違った解放感を感じます。
それと旅の楽しみといえば食事です。
丸いしっぽ亭でいくつもお弁当を作ってもらいましたから安心です。
シートを広げ、スープと共にいただきます。
「うほっ、マッツァカ牛のカツサンドですかぁ、良いですねえ」
「こっちは山菜どんぶりだよ。美味しそう」
「ああ、いいなあ。後で交換してぇ」
「はいな、ではいただきましょう。ハグッ」
「「「うんま~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!」」」
風の心地よさが食欲掻き立ててくれます。
最高の料理に、気の合う仲間。そして初めての景色。はあ、幸せです。
通りすぎる人も笑顔でこちらを見てきますね。
声をかけてくる人もいて、交流ができて言うことなしですよ。
中には私たちの目的の町から来た商人さんがいて、向こうの話を聞くことができました。
「ははは、豪華な馬車なので
「やはりですか。でもどうして荷止めなんか起きているんですか?」
「何でも領主さまが留守で、その代行の方が気難しい人なのですよ。私なんかは見限って次にいく途中です」
「そうですかぁ。でも人の命がかかっていますし、諦める訳にはいかないんですよねえ」
「なんか訳アリですな。でしたら、直接その代官さまに掛け合ってはいかがです? そこが荷止めをしているはずですから。……それと内緒ですが、その方はワイロに弱いって噂ですよ。ま、私は商人ですから余分な出費はしませんけどね」
とても悪ーーい内容の良いお話でした。
ワイロをするかは別にして、抜け道があるって事ですよ。
商売にするには割があわないだけですね。
それに2人がいますから、悪いことは出来ません。この子達には汚れてほしくありませんからね。
「ワイロっていくら必要なのかな。ねえカーラちゃん、銀貨で足りると思う?」
「バッカねえ。金貨よ、金貨。しかも1000枚はいると見たわ」
「あわわわわ、僕そんなに多く数えれないよーー」
んんん、この子達は清いのですかね?
一抹の不安を感じながらも、馬車は勝手に進みます。
取りあえず不正はダメよと諭す道中ですが、明日で街に入ります。
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