第13話 ヒョウタンから駒?

 チャーチルさんが戻る前に、話す設定を私なりに考えてみました。


 まず私は仲買人として、遠くの商人のため仕入れをする立場です。


 それとキーとなるのが打出の小槌。


 もし見られても、小槌は相手先に品物を送るマジックアイテムだとしておきます。

 とうぜん契約上、使用できるのは私だけです。


 つまり私はたんなる小間使い。

 すごいのは商人さんの方なのです。


 何の価値もないモンスターを買い取るだけでなく、それを送る道具まで持っているのですからね。


 かなり大きな力を持っている事が想像できますな。


 もし、その商人と直接取り引きしたくても無理です。存在自体しませんものね。


 そうなれば私の身は安全です。

 取って代わろうにも、私自身が唯一の手がかりです。情報を引き出すまで、うかつに手は出せません。


 完全な言い訳が完成しました。


「いい言い訳ですね。でも本当のところ消えたモンスターはどこに行くのでしょうね?」


「別にどこでも良いじゃないですか。知ったところで得になりませんよ」


 これがもし買い叩かれていようとも構いません。

 他に取り引き先はないですもの。


 もし今よりも高く買い取ると言われても、受けた恩があります。

 多少の額ではくら替えなんてしませんよ。


 はい、ですがね。


 そうこうしている間に夕方になり、チャーチルさんが帰ってきました。


「待たせてスマナイ。ちょっと帰り際に手間取ってな」


「うを、すごい格好ですね、大丈夫ですか?」


 にっこりと笑っていますが、返り血を全身にあび迫力満点。

 元の風貌もあいまって、かなり迫力がありますな。


「ああ、怪我はないぜ。それと25匹ちゃーんとそろっているからな。いま出すぜ」


「あわわわ、少しお待ちを」


 モンスターの死がいを街中で出しでもたら、チビるほど怒られちゃいますよ。あのにがい経験をまたしたくはありません。


 道のはしに寄って、チャーチルさんのインベントリから、直接こちら側に移してもらう事にしました。

 金貨も人目に触れさせたくないので、同じ様に外には出しません。


 こういったとき個人差はありますが、誰もが持っているインベントリは便利ですね。異世界の醍醐味がつまっていますよ。


「たしかに金貨2枚だな。でも、何故そんな物が売れるんだ?」


「さあ、向こうの事情は知りません。でも助かっていますよ」


「ああ、全くだ。これで首がつながったぜ」


 何度も何度も礼を言ってきます。

 最後にまたハグをしてきて、またなと挨拶をされました。


「それとチャーチルさん。これを受け取ってください」


「えっ、銀貨?」


 目をパチクリさせていますね。


「だって無一文でしょ。それだけあれば明日の朝食もたべれます。そうしたら、クエストをちゃんと受けれるでしょ?」


「まろまろ~~~~!」


 またハグをされました。

 止めてとお願いしても容赦がないです、うっぷ。


「チャーチルさん、は、はやく返しに行った方が良くないですか?」


「そうだったな。じゃあ、行ってくるぜ」


 やっと放してくれました。

 疲れはて、手を振るのもやっとです。


「はあ~、あんなに地獄のハグされるなら、あげなきゃよかったですよ」


「ふふっ、師匠ったら照れ隠し」


「なにか?」


「いいえ~、なんにも~」


 含み笑いされるのが気になります。


「でも師匠、これからどうします?」


 今から奥地に向かっても、野営するだけの中途ハンパな時間です。

 今日の狩りはやめにして、買い物をしておきます。


 歩きだしたその時に、何故かチャーチルさんが戻ってきました。

 行き以上のスピードで、苦しそうですが笑っていますね。


「ハァッ、ハァッ。す、すまねえ、言い忘れだ。湿地にいくならレア種が、で、出たから気をつけろよ」


「おおおお、レアですか!」


 必要数だけを狩り、帰る間際に見かけたそうです。


 レア種は本当に不思議です。

 突然変異なのか、はたまたゲームみたいに突如出現ポップするのかは謎なのです。


 ただ共通していえるのは、通常種よりも危険度が増します。

 だからこそ、狩る意欲をかきたててくれるのです。


 チャーチルさんはそれだけを伝えると、急ぎお金を返しに行ってしまいました。

 律儀な人ですね。


「師匠、レア種ってことは?」


「はいな、良いドロップがあるかもですね」


 予想していなかった朗報です。

 レア種など滅多に出あえないのに、2匹目とは期待しちゃいますね。


 武器だけでなく防具やアイテムなどお宝の山は、あればあるほど助かりますからね。

 思わずにんまりとしてしまいました。


 そんな黒い想いを見すかしたのか、カーラはじっと見てきます。


「師匠、もしやこれを予測してたからこそ、あの人に依頼をされたのですか?」


 違いました。何か誤解をしているようですよ。

 さっきまでと違い、カーラは遠慮がちに聞いてきます。


 キラッキラした瞳がまぶしいですぞ。

 普段でもこの目をしてきますが、今日のは一段と光っていますな。


「いいえ、偶然ですよ」


「ウソですね。師匠のすごさを隠そうとしても無駄ですよ。だって今日までに、いくつもの奇跡をみせてくれたじゃないですか。わたしはゴマかされませんよ」


 困ったものです。

 何を言っても納得してくれません。


 ムンフと荒い鼻息とピンと立ったウサミミ。興奮している証拠ですな。

 少ししずめるため頭を撫でるのですが、うんうんうなずくばかりです。


「やっぱりそうなんですね。ええ、分かりましたよ。伊達に近くいませんよ」


 あらら、『よく分かったね』の誉めるために撫でたのではないのですよ。

 なのにカーラは勘違いしていますな。ど、どうしましょう。


 仕方ありません。優しくほほえみ、そうだという事にしておきました。

 まあ悪い気分ではないですから良いですけどね。

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